夢中文庫

俺様御曹司に身も心も養ってもらってます!

  • 作家如月一花
  • イラストnira.
  • 販売日2017/09/26
  • 販売価格400円

野々花は派遣社員をしつつ、キャバ嬢をして生活費を稼いでいた。家は幼い頃から貧しく、仕事を掛け持ちする日々。愛はあるがひもじい生活から抜け出すために日夜頑張っていたが、野々花は器用に仕事をこなせず……。そんな時、キャバクラで田野原と出会い一億円で買われてしまう!? さらに両親の職業斡旋から野々花の面倒まで見るからと彼の屋敷に住むように言われる! どうして自分にそこまで……と戸惑う野々花。しかし、屋敷には野々花と同じように連れてこられた女性が他にも九人おり!? 「愛だの恋だのは、ガキが言う言葉だ」そう言い切る彼に野々花は……。そして子供のようにひたすらに愛を求める彼女に田野原はやがて……。

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鳴り止まないコール音の中、木村(きむら)野々花(ののか)はクレーム対応に追われていた。
 野々花は通販会社のテレオペをしており、面倒な苦情の対応もしている。
 三年以上働いているが派遣社員のままだ。
 社員になれるという甘い言葉に引き寄せられてこの派遣会社に登録したものの、紹介されるところは人間関係も希薄で、上司も派遣社員をまるで人間とも思わない人だった。
 この会社も三社目だが、御多分に漏れずに上司は社員と派遣社員を区別し、派遣社員から社員になったという者はひとりもいない。
 完全に良いように使われているのは分かっている。
 でも、野々花には仕事を断れない理由があった。
 今は、口座から二重に引き落とされたという延々同じ内容の苦情を聞き流しながら、必死に謝罪する事に徹していた。
 どうやら経理部のミスらしいのだが、野々花に手を差し伸べる社員はおらず、自分でなんとかしろとほったらかしの状態だった。
「申し訳ございません。すぐに返金致しますのでっ!」
「返金ったって、お金降ろすのには手数料かかるだろ? それはどうするんだ!」
「そう、ですが」
「そういうのも考えてくれないか。君じゃ話が通じない、責任者だせ! 責任者!」
「少々、お待ちください」
 野々花は胸をきゅっと絞めつけられるような動悸に襲われる。
 社員と話すのは苦痛で、しかもクレーム対応をお願いするなど、どんな罵声を浴びせられるかは想像できたからだ。
「すみません、清水(しみず)さん。お客様が、口座から二重に引き落とされたとクレームが」
 野々花がおずおずと清水に声を掛けると、ヒールをこんこんと鳴らしながら近づいてくる。
 それだけでも野々花は心臓が痛み、苦しくなる。
「またあなた? そのくらい誰だって対応してるわよ。仕方ないわね、バカの尻拭いも大変だわ。休憩も出来ないじゃない」
 そう言って、清水は嫌味ったらしく言うと野々花の横に立った。
 デスクには雑誌が広げてあり、デスクワークらしい仕事はしていない。
 清水は見回りで歩き回るか、デスクで女性誌を読むかのどちらかしかしないのだ。
(忙しいのは派遣社員で、社員はいつでも休憩状態じゃない)
「インカムかして」
 野々花が渡すと、奪うように清水が取り上げる。
 清水が咳払いすると、通話ボタンが押された。
「お客様ぁ。こちらの不手際で申し訳ありません。返金のことでしたら、こちらからご郵送も可能ですから。ええ。ええ。まあ、申し訳ありません。何分、派遣社員なもので。ご理解頂ければと思いますぅ」
(派遣社員のことを社外の人に言っていいの?)
 野々花は呆れてしまうが、清水は終始高い声と笑顔で先ほどの相手に対応している。
 そもそも、返金対応は社員がすべきことだ。
 経理の事情までは野々花たちには把握しきれないし、それぞれ事情も違うせいもある。
 野々花の話を聞いていただろう清水はそれを分かって放置したのに、最後は野々花に全責任をとばかりに派遣社員であることを暴露した。
(こんな会社に居ても良いことがある筈がない)
 野々花は清水の対応が終わりインカムを渡されると、辞めたいという思いで満ちた。
 でも、それが出来ないから辛い。
(今晩はお客様にしっかりサービスしなきゃ)
 野々花は気持ちを切り替えて、夜の仕事も考える。
 この仕事をしながら、キャバ嬢もしているのだ。
 まだ入って三ヶ月だが、早速自分には向いていないと痛感している。
 でも、野々花にはお金が必要だった。

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