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嘘つきエリートの可愛い罠~恋わずらいに甘く溺れて~

  • 作家マイマイ
  • イラスト中田恵
  • 販売日2017/02/14
  • 販売価格500円

ねえ、好きにしていいよ。弱いところ知ってるでしょ――
高坂裕理は、週に一度出会い系で一夜限りの関係を求める。
ある日待ち合わせた男性――東藤柊真は物腰柔らかなイケメン。なぜこんな素敵な人が出会い系を?
不思議に思う裕理だったが柊真の事情を聞き、遊ぶにはうってつけだと喜ぶ。
一週間の恋人ごっこ、本物のカップルのように優しい柊真。経験したことのない温もりを感じ、裕理は柊真に惹かれてゆくが素直になれない。
虐められたい、許してほしい――交錯する矛盾した感情の中、抑えられなくなった裕理は泣き出してしまう。
わたしの前からいなくならないで!
――欲しかったのは快楽の相手ではないと気付いた裕理に柊真が示す答えは……?

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 帰宅ラッシュで混雑した電車の中。
 スカートの裾から潜り込んできた大きな手が、そろりと尻の丸みを撫でていく。
 下着の上から、いかにも遠慮がちに。
 触って欲しいところにはいっこうに近づこうとせず、いつまでも太ももの付け根と尻肌の表面だけを摩っている。
 焦らされるのも嫌いではないが、いつまでもこんな調子ではくすぐったくてかなわない。
 彼の手つきは不慣れでぎこちなく、おまけに少し震えている。
 触られているこちらの方が心配になってくるほどだった。
 大丈夫かな、この人。
 高坂(こうさか)裕理(ゆうり)は笑いをこらえながら、正面に立っている東藤(とうどう)柊真(しゆうま)の端正な顔を見上げた。
 涼やかな目元、すっと通った鼻筋。
 細身のスーツがよく似合う、いかにも真面目なサラリーマンといった風貌。
 清潔感もあって、それなりに気遣いもできる。
 いままでに出会ってきた男の中では、なかなか上等な部類だ。
 八十点以上はあげてもいい、と裕理は思う。
 これでもうちょっと遊び慣れていれば、文句なしに百点をつけられるのに。
 頬が赤くなっている柊真のネクタイを引っ張り、裕理は彼にだけ聞こえる声で囁いた。
「ねえ、やる気あるの? 嫌だったらもう帰ってもいいけど」
「い、嫌じゃないよ。ただ、こういうことは、その……慣れてないっていうか、痴漢なんてやったことなくて」
 当たり前だ。
 そんなもの、慣れていると言われても困る。
「だからさ、深く考えないでよ。人混みの中でちょっとエ×チなことしたいなあ、って思っただけだから」
「だけどこんなことしてたら、裕理ちゃんの下着とか……誰かに見られちゃうかも」
「大丈夫、こんなに混んでるんだから。肩から下はどうやっても見えないって」
「だけど……」
「じゃあ、もっとその気にさせてあげよっか」
 裕理は柊真のうろたえた目を見つめたまま、自分の胸元に手をやった。
 シャツのボタンを上から三つ分外す。
 彼の位置からは、深い胸の谷間とブラジャーの白いレースが見えるはずだ。
「だ、だめだって、裕理ちゃん!」
 柊真が慌てた様子で周りを気にしながら、裕理を両手で抱き寄せた。
 腕の力が強すぎて息苦しい。
 でも、悪い気はしない。
 ぎゅうぎゅう詰めの車内でふたりが急に大きく動いたものだから、傍にいる乗客たちが迷惑そうな目を向けてくる。
『カップルだからって、いい加減にしろよ』
『迷惑なんだよ』
 そんな視線。
「まずいよ。こんなところで」
「柊真がその気になってくれないから、つまんないんだもん。昨日も一昨日も、あんなにヤリまくったくせにさあ」
 わたしの上で腰振りまくってたじゃない。
 ねえ、好きにしていいよ。
 弱いところ、もう知ってるじゃん。
 いっぱい触って感じさせて。
 耳朶に息を吹きかけながら、こっそりと囁いてやる。
 柊真はもう耳から首まで真っ赤になって、まるでゆでだこのようだった。
 単純な男。
 おそらく頭の中では、はやくも裸の裕理を想像していることだろう。

ご意見・ご感想

編集部

誰にも言えない、言う必要もない過去の経験。
裕理にとっては取るに足らない子供の頃の苦い記憶。
平然と過ごしているようで、実は彼女の心を蝕んできたその想い出は、
大事なことを、大事な人を心奥に押しやってしまっていて……。

裕理が刹那の快楽を求める心境は、読んでいるととても痛いです。
突き刺さるような諦めと捻くれた絶望は、きっと日常の中、私たちの間にも潜んでいます……

嫌いな自分を痛めつけるように――
楽しくない世の中に八つ当たりするように――

裕理が柊真にキツく当たるのは寂しさから?
それでも彼女を包み込もうとする彼に母性本能がくすぐられてしまいますが(∩´∀`)∩
   ――でも、たった一週間の期間限定、酷い優しさ。

彼を失うと自覚した彼女の、快感よりも必要だったものに気付いた彼女の、
素直な声をあなたの心で聴いて下さい!!

2017年2月14日 9:49 AM

マイマイ

編集部様、いつも素敵なご感想&アピールありがとうございます!

今回のお話は、あらすじを考えた時点で「これはたぶん書かせてもらえないだろうな」と思っていました。
主人公は出会い系で男をひっかけまくるようなヤリ●ン、妙なオカンが随所に登場、ヒーローはDT、スタートは痴漢描写から・・・。
とても女性向けとしてふさわしい内容ではないものの、それでもどうしても書いてみたくて編集様にご相談させていただいたところ、まさかのOKが!
嬉しくて嬉しくて、それはもうのびのびと好き放題書かせていただきました。

男性に対して心の繋がりを求めず、一夜限りの体の繋がりだけを求めてきた裕理。
そこには彼女なりの思いがあり、彼女にしかわからない理屈がある。
そんなある日、短絡的な性体験を繰り返すだけだった裕理が出会ったのは『とても誠実そうに見える嘘つき男』柊真。
彼の抱える事情と欲望、そして彼自身に興味をひかれた裕理は一瞬の遊び相手として柊真を受け入れようとするが・・・。

この話には思い入れが強すぎて、これ以上書いちゃうとネタバレになっちゃうのでこのへんでやめておきます。
なんだかんだ言っても、今回の登場人物はみんなすごく良い子なのーー!!

エロ場面はいつもどおりバッチリ書いていますのでご安心を。
お話が進むにつれて変わっていくふたりの関係、特にどうしようもないビッチだった裕理の心の変化や成長ぶりなども見守っていただければ嬉しく思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

2017年2月14日 11:42 AM

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