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完璧女子!?をつかまえて~過保護にいっぱい愛されたい~

  • 作家三木若菜
  • イラスト桐矢
  • 販売日2016/04/12
  • 販売価格300円

女子大生の小田原麻帆は、文武両道、容姿端麗、華道の天才──と、揃った「完璧女子」である。が、とんでもなく恋愛が下手で、泣いた恋愛数知れず──!そんな麻帆を支えているのは、隣家に住む年上の幼馴染「あっちゃん」こと琴平彰大。二人は傍から見たら「仲の良いカップル」なのだが互いにその自覚がない模様。なにせ、麻帆は彰大がイケメンであることに気が付いていないし、彰大は麻帆を妹のようだと思っている。ある日、性懲りもなく麻帆が新しい彼氏を作ったと言う。しかも、ネットで知り合ったらしい。その恋、大丈夫なわけがない! 彰大はお持ち帰りを阻止すべく立ちあがった! 麻帆は彰大の想いに気付くことができるのか!?

◇プロローグ・完璧女子の失恋◇
 その時、江戸時代から続く由緒正しい華道・文久小田原(ぶんきゆうおだわら)流の本部ビル七階にある大広間は、沈黙で満たされていた。
 重苦しいほどの沈黙とはこのことか、と、末席に端座した琴平彰大(ことひらあきひろ)は思ったが、それを顔にはださずじっと正座を続ける。
 ここに集まった人々──文久小田原流のとても偉い幹部たちは、固唾を飲んで『彼女』を見ている。
 一同の注目をものともせず、花ばさみがリズムよく茎を切り、蕾や葉が遠慮容赦なく落とされていく。
 畳三〇枚はあろうかという広間が、なんともいえぬ花の香りで満たされる。
 立派な大黒柱を備えた床の間の前にはバケツがいくつも並んでいて、そこに入っていた花材はすべて、一本残らず、彼女の手によって活けられた。
「できました。完成です」
 凛とした声と共にすっ、と姿を現した作品は、花器から花や枝が四方八方に飛び出している、立体的で斬新なものだった。
 剣山に適当にぐさぐさと突き刺した──としか、彰大には思われなかった。
 だがしかし『華道の天才』との呼び声高い、由緒正しい『華道文久小田原流次期家元』である彼女が、適当に花を活けるはずがない。
 活けた本人の表情をそっと伺えば、やはり、とてもとても満足そうである。ここ最近、活けても活けても満足がいかないと溢(こぼ)していたのが信じられない。
「あー……麻帆(まほ)さんや……」
「パパ……じゃないや、家元、見てください。上手に活けられました」
 当代家元・麻太郎(あさたろう)氏は、眉間を揉み解しつつ我が娘と作品を見比べている。
 彰大も、膝で作品ににじり寄って眺めてみた。
 やはり適当に活けたとしか思えない。だが、凡人には理解しかねる天才的な感性の末生み出された作品なのかもしれない。
 だから、華道家ではない彰大は意見をさしはさむことを控え、ううむ、と唸る程度にとどめておいた。
「ね、家元。どう? すごいでしょう?」
「来週からの展示会に、これを並べていいんだな?」
「もちろんよ! わたし、お花を活け始めて今年で一七年くらいたつけど、これが一番の出来だわ」
「本当に、本当に、これでいいんだな?」
 ええ、と麻帆は胸を張ったが、座敷に、何とも形容しがたいため息がいくつも落ちた。
 眉間の皺を揉み解しながら、家元が、彰大のほうへ膝を向けた。
「……彰大くん、これで『鑑賞ノート』を頼む。いや、無理なら断ってくれても構わない。今回ばかりは……」
 彰大は、隣家の息子である。本業、作家。副業、大学講師。何かと忙しい小田原家を支えている執事……いや、長女・麻帆の子守係というか兄的立場というか。
 近所で──いや、この市で一番の豪邸である小田原家に、突如として赤子の声が鳴り響いたのは彰大が一〇歳の時だった。
 物干しざおに干されていたベビー服が風に飛ばされて彰大の部屋のベランダに到着したのをお届けに行ったとき、麻帆がぴたりと泣き止んだ。
 黒目がちの瞳に吸い寄せられて麻帆の頭を撫(な)でて以来、かれこれ一九年の付き合いになる。
「ぼくは曲がりなりにも物書きですし、鑑賞ノートを書くとお引き受けした以上、書けませんとは言いません。……しかし、家元」
「ん?」
 彰大は、細身の銀縁メガネを押し上げて花をじっと見つめた。

ご意見・ご感想

編集部

年の差幼馴染ラブにキュンキュンです★
文武両道、容姿端麗、華道の天才なのに恋愛は幼稚園児並?な麻帆ちゃんの鈍感っぷりが可愛らしいっ!
麻帆ちゃんのお守り役な彰大さんはいつもハラハラ!!
「お持ち帰り阻止作戦」で兄妹のような二人の関係に変化が……?
無自覚さん同士の恋の行方はいかに???

2016年4月12日 3:38 PM

三木若菜

はじめまして!作者の三木若菜です。

唐突ですが、ワタクシは長女です。お兄ちゃんが欲しいと、幼いころから思っていました。いや、今でも思っています。お兄ちゃんが欲しい!
……このお話は、定期的に発症する「お兄ちゃんが欲しい病」から生まれました。
過保護に愛情をたっぷり注いでくれる幼馴染のお兄ちゃんと、びっくりするほど鈍感な「妹」ヒロインの、らぶきゅんコメディ、楽しんで頂ければ幸いです。

2016年4月13日 10:03 PM

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