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ひねくれ領主は無欲な乙女にくびったけ!

  • 作家水戸けい
  • イラストにそぶた
  • 販売日2017/04/04
  • 販売価格500円

孤児院で生活をしているシーラは、クッキーを売り歩いた帰りにみすぼらしい男を見つける。「元気を出して」と売れ残りのクッキーを与え励ますシーラだったが、その男は変装をした領主の息子テルシオだった。そうとは知らないシーラは、領主様のご子息の話し相手として屋敷へ呼ばれるが──そこで求められたのは、キス以上の行為だった!話し相手ではなく慰め役として雇われたのだと考えたシーラは、困惑しながらも孤児院のためだと思い、テルシオを受け入れる。しかし、なぜか彼はすがるような瞳で、愛おしげにシーラの名を呼び、一途に求めてくる……。愛を知らない子どものようなテルシオに、シーラは次第に心惹かれていくが──。

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古いレンガ造りの路地を抜けて、商店街から裏道に戻ったシーラ・エニは、道端にうずくまっている男を見つけて立ち止まった。
 古い外套(がいとう)を身に着けている男は、ずいぶんとくたびれているように見える。このあたり──下町と呼ばれる界隈では珍しくもない光景だが、なんとなく男が助けを求めている気がしたので近づいた。
「どうしたの? 具合でも悪いのなら、お医者様を呼んでくるけど」
 声をかければ、男はパッと顔を上げた。ひどく驚いたらしく、まんまるに開いた目が長すぎる前髪からのぞいている。
(見かけない顔ね)
 シーラは男をまじまじとながめた。
 こげ茶色の長すぎるクセ毛に茶色の瞳。肌の血色はよく、鼻筋が通っている。ほお骨から顎にかけてのラインはヒゲで隠れて見えなかった。年齢は二十歳半ばから後半だろうか。体の端々から、このあたりにはそぐわない高尚な雰囲気をかもしていた。だから目についたのかもしれないと、シーラは男の前にしゃがみこむ。
「ねえ」
 男は驚いた顔のまま言葉を発しない。声が出ない人なのかもしれないと考えながら、シーラはかまわずしゃべりかけた。
「私はシーラ。あそこの孤児院にいるの」
 そう言って、奥に見える教会めいた建物を示して身元を明かす。
「親は生きているけれど、兄弟がたくさんいて食べていけないから、孤児ってことで子どものときにあそこに預けられて、そのまま居ついちゃったの。あ、これは内緒ね。いまならバレても働き手になっているから、追い出されはしないでしょうけど」
 ちょっとおどけて見せると、男の気配がわずかにゆるんだ。警戒が解けたところで、シーラは手提げ籠からクッキーを取り出して男の手に握らせた。
「これ、売れ残りのクッキー。孤児院ではクッキーを作って売り歩いているのよ。あ、心配しないで。怒られたりはしないから。ちょっとくらい残るのはいつものことだし、次の日は新しく焼いたものを売りに出るから食べても平気よ。むしろ、困っている人に施したって言ったら褒められるわ」
 言いながら立ち上がったシーラは、孤児院の子どもたちを安心させるときに見せる、とびっきりの笑顔を浮かべた。
「なにがあって、こんなところでうずくまっているのかは知らないけれど、きっといつかいいことあるわよ! しっかり生きてね」
 手を振ってスカートの裾をひるがえし、シーラは孤児院に戻った。
 ドアをくぐったシーラの姿を男は見送り、手の中のクッキーに目を落としてから、また孤児院へと視線を戻した。
「……シーラ」
 つぶやいた男はよろめきながら立ち上がった。その目は感激に輝いており、形のいい唇が持ち上がる。
「シーラ」
 ふたたび呼んだ男は満面に笑みを浮かべて踵(きびす)を返し、せかせかと路地を抜けて商店街を抜けると街道をまっすぐに、街から離れた領主の屋敷を目指した。

ご意見・ご感想

編集部

人はすべて、地位や財産ばかりを見て俺の本当の姿など見もしない!
そう考えた領主のご子息のテルシオさんは、試しに
つけヒゲをつけて、ボロボロの服を着て、街へ出ることに!

悲しいかな、想像通り街の人々には見向きもされず、
皆がテルシオさんをススッ──三三三( ゚д゚)っと素通り

しかし、絶望していたテルシオさんの前に現れた女性・シーラちゃん
孤児院で生活しているという彼女から
クッキーをもらい、優しい励ましの言葉をかけられて……

なんと、テルシオさんはシーラちゃんに一目惚れ!

そこから始まるテルシオさんの熱烈な求愛の日々
彼女はどんな生活をしているのだろう──?
彼女はどんなものに興味があるのだろう──?
彼女はどうしたら自分に振り向いてくれるのだろう──?

シーラちゃんに好かれるためはどんな努力だって惜しまない!
どんな手段だって厭わない!……はずなのに、なぜかすれ違うふたりの気持ち

果たして、シーラちゃんにテルシオさんの熱い想いは伝わるのか?
切ないすれ違いを越えて、ふたりがむかえる恋の結末は……? 
ぜひお楽しみください☆

2017年4月4日 10:10 AM

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