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略奪された後宮の花嫁~護衛騎士の奉仕愛~

  • 作家水戸けい
  • イラスト兎原シイタ
  • 販売日2018/03/23
  • 販売価格500円

どうして、私はリックの妻になれないの?――嘆きつつ、後宮に入るための聖なる儀式に臨むファミィ。後宮に上がる娘は神殿の奥にある清めの場にて『神の槍』と呼ばれる道具で乙女を散らされ、体の奥まで神の加護で清められるためだ。物心ついた頃から王に嫁ぐことを教え込まれて納得していたものの、恋を知った今は嫌で仕方がない。目隠しをされ、そして体が貫かた――ところが目隠しを取られるとそこには愛しいリックがいて、たった今ファミィを貫いたのは自分だと宣言する。そして逃げようと言い、ファミィを連れて神殿を飛び出し駆け落ちを計る。ファミィはリックが咎められるのではないかと恐れ、己の行為におののくのだが――

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1 まさかの逃避行
 神殿の奥にある清めの間には、不思議な静寂が漂っていた。月のない夜にこの部屋に連れてこられたファミィ・バロゥは、不安にちいさく震えながらも気丈に顎を持ち上げていた。
 肌が透けて見えるほど薄い、純白のドレスをまとったファミィを導いているのは、ふたりの修道女。彼女たちは左右それぞれにファミィの手を取り、しずしずと清めの間に足を踏み入れると、部屋の真ん中に設えられている寝台に向かった。
 更紗のとばりのついた寝台は古く、ヘッドボードには銀の燭台が置かれている。窓にはぶ厚いカーテンが引かれ、ろうそくの明かりだけが室内を淡いオレンジで染めていた。
 しかし光は弱すぎて、部屋の隅にまでは届かない。部屋のそこここに闇だまりができていた。
 ベッドに導かれたファミィの亜麻色の髪が、ろうそくの明かりを受けて艶やかに浮かび上がる。オレンジの灯りに照らされた肌は、緊張のためかほんのりと赤味が差していた。こげ茶色の瞳が純白のシーツに向けられる。ゴクリと喉を鳴らして、ファミィはベッドに上がった。
(ああ……いよいよ、なのね)
 胸が苦しい。
 ファミィは両手を胸の前で組んだ。祈りの形になったそれを、ふたりの修道女はしばらくながめたあと、手首を取って指を外した。横になったファミィの細い手首に絹のリボンが巻かれ、ベッドの柱に縛られる。目を閉じたファミィは目隠しをされた。修道女の足音が遠ざかり、室内はファミィだけになった。
 自分の鼓動が、いやにおおきく聞こえる。ファミィは指を握って、これから身に受ける儀式を思い、不安にさいなまれていた。
(ああ、神様……リック)
 心のなかで叫びを上げても、どうしようもないとわかっている。父親の決定には逆らえない。どれほど恋い慕う相手がいても、後宮に上がると決まった時点で、想いは断ち切らなければならなかった。
 頭ではわかっていても、心はすこしもついてきてくれない。
 ファミィの閉じられたまぶたの奥から、涙がじわりとにじみ出た。目隠しの布が、それをやさしく吸い取ってくれる。
 深呼吸をして、気持ちをなだめようとしても無駄だった。ファミィの胸は不安と恐怖、悲しみでズキズキと痛んでいる。このまま心臓が破れてしまえばいいのにと、ファミィは身をこわばらせて自分の運命を待っていた。
 扉が開き、足音が近づいてきた。
 いよいよ儀式のときなのだと、ファミィは固唾を飲んだ。
 処女には悪魔が憑くと言われている。王のそばにそのような危険なものを置くわけにはいかない。だから後宮に上がる娘は、神殿の奥にある清めの場で、神の槍と呼ばれる道具で処女膜を破られ、体の奥まで神の加護で清められる。
 神の槍がどのような道具なのかは、だれも知らない。聖水で磨かれた、すばらしく荘厳な槍だと聞いている。それを受けられるのは後宮に上がる前の処女のみ。これ以上ない栄誉であり、体の奥底にまで神の愛を受けられる儀式なのだと、ファミィは言い聞かされていた。
(それを受ければ、私の心はリックを忘れられるのかしら)
 運命の女神に導かれて、王を愛する心を手に入れられるのか。
 ファミィは心に住んでいる騎士リック・ソレルの笑顔が、神の槍に貫かれて消える瞬間を想像した。
(リック……どうして、私はリックの妻になれないの?)
 名門貴族バロゥ家の娘として生まれたから? しかし、だからこそ話し相手としてリックは屋敷に招かれた。バロゥ家の娘でなければ、リックと出会えもしなかったはず。
 みごとな金色の髪とやわらかな笑顔、空よりも広く深い青色の瞳を思い出して、ファミィは下唇を噛んだ。
(愛しているわ、リック)
 この儀式で、どうか彼への想いも浄化されますようにと、ファミィは狂おしく祈った。
 足音が止まる。目隠しをされているせいなのか、静寂が理由なのか、ファミィの耳はいつもよりも澄んでいた。
「ヒッ」
 足首を握られて、ファミィは短い悲鳴を上げた。あたたかな指が触れた箇所から、悪寒がゾワゾワと這い上がってくる。膝を曲げられ、脚を広げられたファミィは、ドレスの裾がまくられたのを感じた。視線が脚の間に注がれている。
(私の大切なところが、見られている)
 ゾクゾクと背骨が震えて、ファミィは膝を閉じようとした。おおきな手にそれを阻まれ、ファミィは歯を食いしばった。

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