夢中文庫

あなたに繋がれて

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  • 作家猫屋ちゃき
  • イラスト期田
  • 販売日2017/09/05
  • 販売価格400円

「もう二度とあなたの命を奪わせないよう、私が繋いであげよう」ある大雨の日、アメーリエは湖に落ちて死んだ……はずだった。目が覚めると、密かに想っていたフランツと婚約し、貧乏で逼迫していた実家はフランツの援助で立て直されていた。周囲にいるのは馴染みのある人達なのに、そこはアメーリエのまるで知らない世界で……? その世界で、アメーリエは夢を見る。何度も何度も、自分が死ぬ夢を。その夢の真相に辿り着くことで、アメーリエはフランツに深く愛されていることを知るのだった。フランツと思いを通わせるようになり、今度こそ幸せになろうと思うアメーリエだったが、少しずつ彼の歪みを知ってしまい……。

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第一話 アメーリエの目覚め
 ドレスが水を吸って、どんどん重たくなっていくのをアメーリエは感じていた。
 こらえていたのに、肺に残っていた最後の空気が、ゴボッと音を立てて口から出ていってしまった。
 身体がさらに重くなって、沈んで行くのがわかる。
 結い上げてまとめていた黒髪が、はらりとほどけ水の中に広がっていく。
 その髪にも身体にも、水中の藻が絡んでくる。その藻がさらにアメーリエを重くして、沈んでいくのをさらに早めているようだ。
(……わたくし、このまま死んでしまうのね。でも彼は……フランツ様は無事よね。それなら、いいの……)
 そんなことを考えながら、アメーリエは湖の底に沈んでいった。
……はずだったのだが、唐突に、ぽっかりと浮かびあがるようにアメーリエは目覚めた。
 妙に息苦しい。唇に、何かやわらかいものが触れている。
 やわやわと感触を楽しむように触れられていたかと思うと、湿ったものが押しつけられ、唇の輪郭をなぞられる。
 口づけられているのだとわかったのと、視界に色が戻ってきたのは、ほぼ同時だった。
「……っ!」
 唇が解放されると触れていた人物を視認できて、アメーリエは息を呑んだ。
「やあ、アメーリエ。お目覚めですか」
「……フランツ様」
 アメーリエに覆いかぶさるようにして執拗に口づけていたのは、沈んでいく意識の中で無事を祈ったフランツその人だった。
 彼はまるで、恋人を見つめるかのような甘さを感じさせる眼差しをアメーリエに向けてくる。そして、愛しむような手つきでそっと頬を撫でてきた。
 それに反応して喜ぶみたいに鼓動が高鳴るのと同時に、「いけない」と心のどこかが強く拒絶した。
 そのことで、ぼんやりとしていたアメーリエの頭は覚醒し、様々なことを思い出す。
(だめよ! フランツは、ロッテの想い人じゃない!)
 フランツは、可愛い可愛い妹のロッテが想いを寄せていた人だ。
 そのフランツが湖に落ち、死んでしまうと思ってアメーリエは必死で彼を助けた。この人が死ねばロッテが悲しむから、何としてでも助けねばと思ったのだ。そして溺れた。
 ある大雨の日、外出したまま戻らないロッテを一緒に探してくれたフランツは、誤って湖に落ちたのだった。
 ドレスを着ていたとはいえ、アメーリエは泳ぎに自信があった。少なくとも、都会育ちだというフランツよりは。だから迷いなく飛び込み、彼の身体を押して岸へと上がらせた。
 そこまでは良かったのだが、体勢を立て直したフランツが引き上げるよりも、ドレスが水を吸って重くなるほうが早かった。
 そのせいでなす術なくアメーリエの身体は沈んでいき、苦しみながら息絶えたのだ。
 そう思っていたのだが、アメーリエは今こうして目覚めている。
「……ここは、どこですか?」
 寝台の上に寝かされている。そこから上体を起こして見回してみると、視界に入るのは知らない部屋だ。
 間違いなく自宅ではない。ここはアメーリエの家にはないような、上等な調度品が置かれた綺麗な部屋だ。
 アメーリエの家は、調度品のほとんどはもう何年も前に売ってしまったし、ここ最近はなかなか掃除が行き届かずうっすら汚れている。
 そんなことに気がついて、アメーリエの背筋は寒くなった。
 見知らぬ部屋の寝台の上で、恋人でもない男性に口づけられているというのは、かなり恐ろしい。
 しかも、フランツがひどく親しげな雰囲気をただよわせているのも、意味がわからなくて怖い。
「ここは、あなたの部屋ですよ。私たちの邸の。寝ぼけているんですか?」
 フランツは不思議そうに首をかしげ、それからいたずらっぽく微笑んだ。
「まだ目覚めの口づけが必要ですか、私の眠り姫は」
 再びフランツの顔が近づいてきて、アメーリエは恐怖した。
「いや!」
 怖くてたまらなくて、思わず力いっぱい彼の胸を押し返した。
 そんなことをされるなどと思っていなかったらしいフランツは、驚いた顔をする。
 ほんの一瞬、彼がよろけた隙に、アメーリエは寝台から飛び出してドアへと向かって走った。

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