夢中文庫

その執事、過保護につき。~貧乏お嬢様は今日も憂鬱~

  • 作家桜庭えみり
  • イラスト雪乃つきみ
  • 販売日2017/02/17
  • 販売価格400円

とある事情により社長令嬢から一気に貧乏へ転落した如月姫香。幼い頃から一緒の佐野誠一が執事として押し掛けて身の回りの世話をしてくれているが、彼はとっても過保護。いつまでも子どものように大事にしてくれるけれど、それは「姫香が恩人の娘だから」という理由だけだと知っている。
ある日佐野の隠し事を知った姫香は彼に自立した姿を見せるため、街で誘われた高額な時給の怪しいアルバイトを始めようとするが、佐野が「自分が初めての客になる」と言い出して!?
「あなたに触れていいのも傍にいていいのも、俺だけだ」
初めて見る佐野の表情。いつもとはまるで違う彼から与えられる快感に、姫香は戸惑いつつも溺れていく――。

YAHOO!JAPANブックストアで購入
BookLiveで購入


「姫香(ひめか)さま」
──遠くで名前を呼ぶ声がする。柔らかく穏やかな、耳に心地良い低さの声だ。
「おはようございます、朝ですよ。朝食の支度が整いましたので、お起きください。姫香さま、姫香お嬢さま」
 ああ、これは夢だ。だって、自分はもうお嬢さまなどと呼ばれる立場ではない。そうだったのは半年前までで、今はもうごく普通の中流家庭──いや、それ以下の苦しい生活をしている。かつてのように都心の一等地に広大な敷地の家も持っていなければ、ふわふわの高級布団が心地よかった大きなベッドもない。住み込みのお手伝いさんがいたのだってもう過去のことで、こんな風に朝起こしに来てくれる人が今いるはずが──。
「姫香さま」
「ん、ぅ……?」
……そのはずなのだけれど。ゆさゆさと優しく自分を揺り起こす手の感触は、妙に現実的だ。閉じたまぶた越しに感じる朝の眩(まぶ)しい光にようやく覚醒した姫香は、寝ぼけ眼を瞬かせながら声の方向へ顔を向けた。
「ああよかった、お目覚めになられましたね。おはようございます、姫香さま。朝食の準備ができましたので、ご支度を整えられましたらどうぞ温かい内にお召し上がりください」
「……、……んっ!?」
 昭和の雰囲気漂う、築五十年以上の木造建築。真上に見える天井は以前住んでいた家とは違い、低く板張りでできている。姫香が現在自室として使っているこの六畳の和室と廊下を隔てているのは、なんともレトロ感溢れる襖(ふすま)。そしてそれらを背景にして布団の横に正座しこちらに向かって微笑んでいるのは、このごくごく普通な家の風景には到底相応しくない整った顔立ちのスーツの男。糊の効いたワイシャツにネクタイまできちんと締めた銀縁眼鏡の男がエプロンをしている様は、なんだかシュールだ。……だが、今の問題はそこではなく。
「ゆっ、夢じゃなかった! 佐野(さの)、起こしてくれるのはありがたいですけど部屋までは入って来ないでくださいって前にも言ったでしょう!」
 状況を理解し、慌てて飛び起き掛け布団を掻(か)き抱く。顔を赤く染めて叫んだ姫香に、佐野と呼ばれた男は不思議そうな表情で首を傾げた。
「申し訳ございません。ですが、廊下から声を掛けさせていただいたのですがお返事がありませんでしたので……。今日は朝からアルバイトに行かれるとのことでしたので、遅刻されては大変かと」
「う……っ。そ、それは……謝ります、けど。でも、私だってもう二十歳なんですよ! 子どもじゃないんですから、寝起き姿を他人に見られるのは恥ずかしいんです!」
「失礼いたしました。ですが、そのようなことお気になさらずとも。姫香さまはたとえ寝起き姿でも整っていらっしゃいますし、私のことは犬とでも思っていただければ。犬に見られてもお恥ずかしいことはないでしょう?」
「そういう問題じゃないんですっ! もう、着替えますから出て行ってください!」
「かしこまりました。お手伝いは──」
「結構です!」
 力一杯叫んで佐野を押し出すと、襖を閉める。ようやくひとりになった室内で、姫香はぜいぜいと乱れた息を整えると深くため息をついた。

ご意見・ご感想

編集部

昭和の雰囲気漂う、古い木造建築の家、
けして広いとは言えない、ちゃぶ台のおかれた畳敷きの部屋
そこに住む姫香ちゃんは、なんと元・お嬢様!

わけあって今は贅沢な暮らしは出来ないけれど、
日々慣れないアルバイトをこなしながら、慎ましく暮らしていました
しかし、そこに似つかわしくない人物がひとり…それは、押しかけ執事の佐野さん

もうそんな身分じゃないし、お金もないのに……
なぜ彼はこんなにも尽くしてくれるの?

募っていくのは申し訳ないという気持ちばかり……
ある日、自立して佐野さんを安心させてあげよう!と決心した姫香ちゃんですが
あやし~い男にあやし~いアルバイトに誘われます
元・お嬢様の姫香ちゃんは、それがどんなアルバイトかは想像もできずに、
なんの疑いもなく始めようとしてしまうのです!(ノ゚д゚;)ノ

しかし、そこは間一髪!現れた佐野さんによって阻止されますが……
さらに思いもよらぬ事態に!

押しかけ執事は、お嬢様をほっておけない!!
ふたりの距離感にぜひドキドキしてください♪

2017年2月17日 12:34 PM

オススメ書籍

恋する狼の甘い誘惑~幼馴染と秘密の関係~

著者マイマイ
イラスト中田恵

ベッドよりも立たされたままの方が好きなんだろう、変わってないな、おまえは――男性との付き合いに消極的な藤咲裕果。それでも同僚であり良き友人でもある正樹となら、恋人になってもうまくやっていけそうだと感じていた。ふたりの関係が進展し始めた矢先、偶然訪れた店で裕果は幼馴染の楠木明に再会する。その瞬間、狂ったように互いの体を求め合った五年前の夏が思い出され、気持ちに反して再び明を渇望するようになる裕果。「明なんか大嫌い……」そんな言葉をも愛しそうに受け入れ、裕果のすべてを包み込んでいく明。全てを見透かしたような明に心も体も翻弄されながら裕果が見つけた危うくも揺るぎない本心は……

この作品の詳細はこちら