夢中文庫

恋はブリュレ、君はドルチェ

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  • 作家橘柚葉
  • イラストまろ
  • 販売日2016/01/12
  • 販売価格300円

アニメ声で童顔、色々と勘違いされやすいことが悩みの谷崎風花、25歳。そんな彼女に運命的な出会いが待っていた! メロンパンが縁で付き合うことになったのは、女子なら思わず見惚れてしまうほど容姿が整った男性、五十嵐翔平。お互い一目ぼれで付き合うことになったけれど、三か月付き合っても翔平はなぜか風花を抱きしめてはくれない。不安に揺れる風花の前に、二人の仲を引き裂こうとするロマンスグレーなおじ様が現れた! その上、翔平は風花に言えない、ある秘密を抱えているようで……。恋愛初心者たちが送る、ドルチェのように甘く初々しい恋が始まります!

(メロンパン! メロンパン! 今日こそ絶対メロンパン!)
即興の歌を小さく口ずさみながら、足取りも軽やかにある場所へと向かう。
本当は鼻歌なんて歌っている暇はない。早くお店に行かなければ、お目当ての品が売り切れてしまう可能性があるからだ。
早く行かなくちゃ、と私は歩調を速めた。
谷崎(たにざき)風花(ふうか)、二十五歳。短大を卒業後、県内にいくつも教室がある学習塾で事務員をしている。
ふた月ほど前、以前勤めていた教室から移動となり、この街にある教室へと移ってきたばかりだ。
小柄で童顔、一度もカラーリングをしたことがない黒髪をショートボブにしているので、学生と間違われることも多々ある。
なおかつ声が甘ったるいため、いろいろと勘違いされやすく悩みの種だ。
女性からは「男に媚びている」と言われるし、男性からは「期待させておいて」なんて身勝手なことを言われる。
だが、しかし。私は声を大にして言いたい。どうか言わせてください。
どちらかというと私は気が強い方だと思う。さっぱりした性格だと昔からの友人知人は声をそろえて言うぐらいだ。
外見や第一印象だけで私の人格まで決めつけるな! と私は訴えてやりたい所存でございます。
(そんなことより、今はメロンパン!!)
サイフだけを握りしめ、私は脇目も振らず目的の場所へと急ぐ。
職場から徒歩五分。そこにはノスタルジックなパン屋さんがある。
ノスタルジックといえば聞こえはいいが、かなり昔からやっている街のパン屋さんといった外観だ。
そのパン屋さんの目玉商品といえば『メロンパン』だという。同じ教室で働いている先生方に教えてもらったのだが、数量限定で販売しているメロンパンがとても美味しいらしい。
ただ、焼き上がりは朝十一時、それも三十個限定。店頭に出した途端、飛ぶように売り切れてしまうという幻のメロンパンだ。
昼休憩のときにパン屋さんに行くことはあるが、もちろんその時間に行っても売り切れていてお目にかかったことがない。
是非食べてみたい、と言う私に教室長は「じゃあ、郵便局に行くついでに買ってきてもいいよ」と言ってくれたのだ。
と、いうわけで職場の長から許可が出た私は、意気揚々とパン屋さんへと向かっているのである。
「ああ! もう十一時過ぎている!」
私は慌てて自動ドアの前に立つ。ゆっくりと開くドアに多少の苛立ちを覚えながら、私は店内へと飛び込んだ。
が、店内は混雑していたのだろう。入り口付近で立っていた男性の背中に顔をぶつけてしまった。
「キャッ!」
「失礼。大丈夫でしたか?」
「こちらこそ、ごめんなさい。大丈夫でしたか?」
ペコリと頭を下げたあと、私は恐る恐る顔を上げる。そこには長身でスラリとした体型の男性がいた。
その男性は、「絶対に女の一人や二人侍(はべ)らせている!」と断言できるほど格好良く、私を見下ろす瞳はとても心配そうだ。
大丈夫だと繰り返す私を見て、彼はほんわかと優しげに笑う。
その笑みを見た私は一瞬言葉を失ってしまった。
(……ステキな男の人だなぁ)
私より年上だろうか。百八十センチはある身体はスラリとしているし、顔は映画俳優かと思うほど整っていてカッコいい。
声も雰囲気も優しげだなんて。完璧な人もいるものだ。
思わず感心して立ち尽くす私に、彼は「では」と軽く会釈をして店の奥へと入っていってしまった。
その後ろ姿を眺めたあと、私はハッと弾かれたように気がつく。
今日、私がこのパン屋さんにきた理由はただひとつ。幻のメロンパンをゲットするためだ。
慌ててトレイとトングを手に取り、私は人だかりへと果敢に突き進む。
前にいたお客さんが横へと移動し、やっとメロンパンが見えた。
残りひとつ。ああ、ギリギリ間に合った。
喜びいさんで手を伸ばそうとした瞬間だった。
隣から手が伸びてきて、最後のひとつであったメロンパンが取られてしまった。
「ああ!!」
ショックのあまり思わず大きな声で叫んだ。そのあと慌てて口を押さえる。
こういうものは早い者勝ち。メロンパン一つで目くじらを立てるなど、大人のすることではない。
恥ずかしくなって顔が熱くなるのを感じながら、小さくため息をつく。仕方がない、諦めよう。
すると頭上から優しげな声が聞こえてきた。
「メロンパン、いりますか?」
「え!?」
驚いて振り向くと、そこには先ほど私がぶつかって迷惑をかけてしまった男性が朗らかに笑っていた。
口元にできるえくぼが魅力的だなぁ、と思わず魅入ってしまったが、今はそれどころではない。
私は首を大きく横に振る。
「いえいえ、お気になさらず」
「でも、残念そうでしたから。どうぞ?」
彼のトレイにはメロンパンが乗っている。しかし一つだけだ。申し訳なくてもらうことなどできない。
何よりメロンパン一つで落胆する私は、きっと彼から見て滑稽(こっけい)だったことだろう。
それが恥ずかしくて居たたまれない。
何度か押し問答を繰り返していると、彼は苦笑した。
「そうですか。では」
去り際まで格好良いなんてズルイなぁ、と再び惚(ほう)けていたが我に返り、他のパンを買うことにした。
いくら嘆いてもないものはない。残念だが次回のお楽しみにとっておこう。
混雑する店内を見て回り、卵サンドイッチと小さなクロワッサンをトレイに乗せ、レジに並んだ。
するとレジを済ませた先ほどの男性が私に近づいてきた。
あんなやりとりをしたばかりだ。さすがに恥ずかしい。
俯(うつむ)きかげんでいると、トレイの上に紙袋が置かれた。
驚いて顔を上げると、先ほどの男性がニッコリと笑って私を見つめている。
目を白黒させている私が面白かったのか、彼はフフッと楽しげに笑った。
「僕はここのメロンパンよく食べているから、貴女にあげますよ」
「え、でも……」
紙袋と彼を交互に見て慌てる私に、彼は小さく手を挙げた。
「いいから。じゃあ」
「待ってください。お金!!」
彼を引き止め、せめてお金だけでも支払いたかった。
しかし、私の手にはまだ会計を済ませていないパンがある。それを投げ出すこともできない。
なんとか会計を済ませて店を飛び出したが、そこに彼の姿はなかった。
「……どうしよう」
どこの誰だか全くわからない。名前や住んでいる場所、携帯の電話番号も知らず、彼の素性を知る術はなし。
でも、何も言わず終わりにしたくはない。お金だって支払いたいし、お礼だってしっかり言いたい。それに――――
(もう一度、会って話してみたいな)
そう感じるほど、ステキな男性だった。見目が麗しいことだけでなく、彼が持つほんわかとした優しい雰囲気がとってもステキだったのだ。
「会いたい……な」
私はメロンパンが入った紙袋を大事に抱えて郵便局へと行き、そのあと職場へ戻ると先ほど頂いたメロンパンを食べた。
カリカリのクッキー生地に、ふわっふわのパン。バターの風味がたまらなく美味しい。
すぐに売り切れてしまうことに納得がいく味だった。
その上、ドキドキしてしまうほどの出会いもエッセンスに加わっているから、より美味しく感じる。
メロンパンを食べながらあれこれ考えたが、やっぱりお礼はしっかり言いたい。
それとステキな彼にもう一度会いたいという下心もちょっぴりあることは内緒だ。
とにかく行動せねばと『メロンパンをくれたステキな彼に会いたい作戦』を開始し始めた。
まずはパン屋さんへ行き、店主であるおじさんに頼み込むところからスタートした。
私と彼のやりとりを見ていたというおじさんは、事情を話すと二つ返事で承諾してくれた。
「ああ、あの人なら常連さんだよ。きっとそのうち来るから、お嬢ちゃんのこと話しておいてあげるよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
強力な助っ人を得たから、すぐにこの作戦は成功すると思っていた。
しかし――――

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