夢中文庫

いたずらな秘密の電話

  • 作家粟生慧
  • イラストえだじまさくら
  • 販売日2015/12/01
  • 販売価格300円

田所毬亜は、イケメンチーフの有藤聖司に恋をしているが、仕事ではぶつかってばかり。自分でおやじっぽいってわかってはいるけれど、毎日ビールを飲みながらアクション映画を見てイライラを発散させている。それでも全然イライラは収まらない。そんな毬亜の携帯電話に、ある日、いたずら電話がかかってくる。毬亜は酔いに任せて、いたずら電話の彼とエッチな事をしちゃう。だんだんと毬亜はいたずら電話が待ち遠しくなってきて、どんどんエスカレートしちゃうことに……!?


「このA案が駄目なら、B案をって言ってるんです!」
 わたしは田所毬亜(たどころまりあ)。
 デザイン事務所のデザイナー。
 21歳で勤めだして、もう2年たつ。
 まだまだ下っ端だけど、毎日バリバリ頑張ってるつもり。
「A案もB案もメリハリに欠ける。もっと違う案は出せないのか!?」
 で、わたしと言い合ってるのは、わたしの上司・チーフの有藤聖司(ありとうせいじ)。
 わたしと意見が食い違っては、最近になって何かと意見が合わず喧嘩になってしまう。
「わかりましたよ! いくらでもやり直しますから!」
 それまではチーフは別部署のチーフアシスタントをしてた。
 わたしの上司になってから、こんなふうに嫌味かってくらいにやり直しを要求してくるのは、単純にアイデアが気に喰わないのか。
 こんなに何度もデザイン修正してるとわけがわからなくなってくる。
 チーフの言うこともわかるんだ。
 たしかに、このフォントよりこっちのフォントのほうがメリハリがつくし、この背景色に重ねるなら微妙だけど、こっちのカラーの方がいい。
 そういうふうに的確に訂正を要求されるのはいいんだけど、なんだか、突っかかる感じでやり直しを言ってくるから、感じ悪いったらない。
 有藤チーフは顔がいい。
 あくまで顔ね。
 それにまだ30歳になってないとこも……。
 ドンピシャでわたしの好み。
 彫りの深い顔で、目鼻立ちのメリハリがある。
 とにかく外国人みたいな顔がわたしは好きなのだ。
 わたし自身が帰国子女だったせいかもしれない。
 それと、勝ち気なせいかも……。
 なんとなくしょうゆ顔とか塩顔って気が弱そうに感じてしまうんだよね。
 とにかく負けるな、めげるな! わたし!
 とはいっても連日の残業で、わたしのイライラもマックスになってる。
 まわりの同僚も、
「根詰めすぎないでね。チーフがなんであんなに田所さんのデザインに対してこだわるのか、わたしにもわかんないんだよねー」
 なんて、人ごとのように言って、先に帰っていく。
 もうA案とかB案とか言ってる場合じゃないくらいに、わたしはチーフにデザイン案を出してきた。
 あともう少しだから頑張って、とかって言ってくれれば、わたしも頑張り甲斐があるんだけど……。
 とにかくダメダメの一点張り!
 イヤンなっちゃうよ!
 なんであんなに突っかかってくるのか、さっぱりわかんない…………。
 ようやく一段落ついて、8時に会社を出たわたしは、ラッシュが過ぎてひと気のないスカスカの電車に揺られて、家路についた。

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