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降って湧いたお見合い相手は初恋を拗らせた幼なじみの御曹司!

  • 作家朝陽ゆりね
  • イラスト無味子
  • 販売日2019/7/5
  • 販売価格400円

結婚願望がない紗花に突然に湧いた見合い話。祖父の代に受けた恩も絡みこちらから断れないと家族から懇願される。相手は憎たらしいことばかり言うので冷たくあしらっていた、北条グループの御曹司で幼なじみの憲太朗。断れないなら結託して破談にすればいいと憲太朗に提案。しかし十年ぶりの再会で昔と違う堂々とした対応をされて紗花は調子が狂わされる。一方、無自覚な初恋に気づき、美しくなった紗花と再会して更に惹かれる憲太朗。会社社長として周囲からの評価も注目も高い今なら落とせるだろうと目論むのだが、紗花に相手にされず……ついに憲太朗の本気に火が付いてしまい──

1 紗花
「冗談じゃない。お断りです!」
 と、昂った感情そのままに言ったものの、目の前でしゅんと肩を落としている両親&祖父母を見ると、ちょっとばかり罪悪感が湧いてくる。
 ダメダメダメーー! ここで弱気になるわけにはいかない!
「結婚する気はないって、ずーーーっと言ってるでしょ」
「紗花(すずか)ちゃん、それはよくないわよ。女はね、結婚して子どもを産んでこそなんだから」
 口を開いたのはおばあちゃんだ。おばあちゃんのことは超大好きだけど、この思想はいただけない。結婚も出産も個人の自由だし、しないからとて不幸なわけじゃない。自分の価値観で他人のそれを否定するのはよくない。だけどまぁ、おばあちゃんの世代はそう思って生きてきたわけだから、それを否定するのもちょっと、と思う。自分の価値観で人を~と言っているそばから、その“人”を否定することになるから。
「私の人生なんだから、どう生きるかは自分で決めます。それに仮に一億万歩譲って結婚する気になったとしても、相手は自分で決めるのでお見合いなんて絶対イヤだから!」
 そう! 両親&祖父母が雁首並べて私に言い出したのは、なんと、「お見合い」の話だったのだ。
 私の頑固たる拒否の言葉に、目の前の両親&祖父母はまたまたしゅーんと一回り小さくなった。
「それがね、紗花ちゃん、こっちからは断れないのよ」
 は?
「断れない? どういうこと?」
「私たち、店をやってたじゃない?」
「うん、ケーキ屋さんね」
 おばあちゃんが、うんうん、とうなずく。
 そう、おじいちゃんは腕のいいケーキ職人だった。けど、五年前に転倒がきっかけで腰を痛め、残念だけど店を閉めたのだ。
 私はおじいちゃんの作るイチゴショートとイチジクのパウンドケーキが大好きだ。
「おじいちゃんが中学を出たらケーキ屋に修業に行ったことは紗花ちゃんも知ってると思うけど、それから十年後に自分の店を持ってね、最初は繁盛したのよ。でもそれを見て、周囲にいくつか同じようなケーキ屋、洋菓子屋ができて、途端に売り上げが落ちて経営危機に陥ってね。そんな時、お隣さんから失火して、店が半焼して。保険は下りたけど、なんだかすっかり落ち込んじゃって、もうやめようかって思った矢先、声をかけてくださったのが北條(ほうじょう)さんでね」
 北條? 北條って、まさか……
「北條さんとおじいちゃんは小学校と中学校が同じで、その時はそんなに仲がよかったわけじゃないんだけど、あれだけ立派な人がおじいちゃんに一目置いていたっていうから驚きで」
 おばあちゃんの説明は回りくどい上に、よく横道に逸れるからわかりにくいのだけど、要約するとこうだ。
 北條さんは大会社の跡取りで、いろいろプレッシャーがあって自分の将来やらなんやらで自暴自棄になっていた。ただだからってそれを表に出すことはできず、勉強だけはちゃんとやっていた。そんな北條さんは、中学三年の時に同じクラスになったおじいちゃんと出会って、そこで中学を出たらケーキ職人になると決めているのを聞いて、とても驚いたそうで、ものすごく葛藤したらしい。

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