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うねる愛、濡れ輝く 闇の花1 ~祠☆闘士シリーズ~

  • 作家朝陽ゆりね
  • イラストもなか知弘
  • 販売日2015/12/08
  • 販売価格700円

今はとにかくお前が愛しい──中学時代の同級生、相田透子と偶然再会した田神涼。警視庁捜査一課の刑事で現実主義者の涼がある夜目撃したのは、化物と対峙する透子の姿だった! 失恋でイライラしているところにいきなりの化物出現、それを華麗に倒す透子…激務と重なり倒れてしまった涼は、内科医である透子の家で謎めいた生活と秘密、そして傷に触れ透子の唇を強引に奪う。家族を悪霊に殺された過去を持つ透子は涼に冷たい態度をとるが…熱く体を重ね、涼を失いたくないと自覚していく。結婚しないことで“護”ろうとする透子と、結婚して“守”りたいと願う涼。クールな除霊師&情に厚い刑事の、悪霊に取り憑かれた人間を救う物語が今始まる──

1、混沌の刻とき
 時計は夕刻を指している。二人は時間など気にすることもなく、カーテンの閉じられた暗い部屋で互いの体温を感じつつ欲望を満たしていた。
 激しい高揚の末の弛緩と虚脱。
 しばし身を寄せて呼吸を整える。やがてどちらともなく身を起こすと、男はタバコを咥え、女はバスルームへ向かった。
 男の名は田神たがみ涼りょう。三十二歳の警視庁の刑事だ。一方、姿を消した女の名は相田あいだ透子とうこ。彼と同い年で、医者だった。
 涼はタバコをふかしながら、二人の関係をぼんやりと考えた。
 惚れているのは自分のほうだ。それは間違いない。情けないが、愛されているという実感が掴めない。同棲しているこの家は透子のもので、住まわせてくれているのだからある程度は想ってくれているのだろうと思う。それに求めれば受け入れる。一度ベッドに入ると激しく求めてくる。それなのにベッドから降りると、男など不要と言いたげな冷たい眼差しのクールな女に戻るのだ。
 透子がなにを考えているのかよくわからなかった。ただ、最後の最後は許していない──そう思う。それだけはわかる。付き合い始めて二年。何度も結婚の話をしようとしたが、その都度笑いながら否定された。
──私ねぇ、結婚する気はないから。それを求めるなら、出ていって。
 冗談めかしに言うが、目が笑っていなかった。刑事という職業柄、相手の表情や口調、目に浮かぶ感情を読むのが仕事だからよくわかる。
 本気で結婚する気がないのだ。
 追い出されるのは勘弁被る。今更、警察の寮に入る気もないし、なによりも透子を想っている。一緒に過ごせるなら籍などにこだわることもないだろう。
 それに──。
 立ち昇る煙を目で追う。
 それに彼女の秘密を知っているのは自分だけだし、自分以外、透子を受け入れられる男などいないだろう。涼にはそう言い切れる自信があった。それは透子にもわかっているはずだ。透子は女としての幸せを追求しようとしていない。その姿に、どうしても惹かれてしまうのだ。
 透子と初めて会ったのは中学二年生の時だった。京都から東京に引っ越ししてきた涼は、透子と同じクラスになった。なかなかの男前で、明るく、スポーツマンだった彼はすぐにクラスの人気者になった。対して透子は長い黒髪を三つ編にし、地味でダサい黒縁メガネをかけている。体が弱いということで頻々と体育の授業を見学している暗い感じの女の子だった。
 当然ながら男子生徒には人気がなく、陰で「柳女」と呼ばれてバカにされていた。「柳の下にいる幽霊」という意味だとクラスメートは笑って教えてくれたが、涼にはなぜかそんな透子が気になって仕方がなかった。
 メガネの奥の瞳はいつもクールだ。ただ冷たいだけではない。澄んだ刃物のような鋭さがあり、目が合うと心の中を見透かされているようで緊張してしまう。それでいて見入ってしまうのだ。その冷たく澄んだ輝きに──。

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