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俺様主人の理不尽な要求~毒舌メイドは素直になれない~

  • 作家ちろりん
  • イラストタカ氏
  • 販売日2020/08/14
  • 販売価格600円

メイドのフローレンスが仕えるアルベインは、自信過剰で自己中心的、他人を思いやれない困ったご主人様。彼は自分に相応しい結婚相手を見つけるためデートを重ねているのだが、その俺様な性格と理想の高さゆえ振られてばかり。見かねたフローレンスは姉の助言を受け、疑似デートをしてみることに。的確なアドバイスをするためのデートだったはずが、なぜかアルベインは次のデートの約束とキスを迫ってきて──!? 「地位も学も金も俺が持っている。別に今さら必要ない。俺が欲しいのは、お前が持っていて、俺が持ちえないものだ」──アルベインは猛烈なアプローチを仕掛けるが、フローレンスにはその申し出を受けられない理由があって……?

第一章
「理解不能だ。何故だ」
 目の前の色男は真剣に悩んでいた。ひじ掛けに頬杖をついて真面目な顔をして。不機嫌そうに眉根を寄せ、悩ましい溜息を吐く。
 綺麗に整えられ、前髪を後ろに撫でつけたダークブラウンの髪の毛に、鋭い切れ長の目。翡翠を填(は)め込んだような瞳は、いつまでも眺めていられるほどに美しい。スッと通った鼻梁と厚めの唇は、美丈夫の条件だ。女性ならずとも男性でさえも彼の麗しさに魅入られる。
 そんな彼が悩んでいる姿を見れば、誰しもが手を差し伸べたくなるだろう。
 けれども、残念ながらこの心はまったくもって動かない。むしろうんざりしていた。
「またですか、アルベイン様。いい加減学習しましょう?」
 思わず顔を顰(しか)めて苦言を呈すると、アルベインは苦々しい顔をして机を爪で弾き苛立ちを表した。失敗続きでそろそろ我慢も限界なのだろう。
 だが、致し方ないと、フローレンスは気分を鎮める紅茶を淹れながら思う。
 何せこの人は自信過剰のナルシストで、他人を慮(おもんぱか)って優しい言葉や紳士な態度を取ることがない。だから、毎度デートのたびに相手の女性に振られてしまうのだ。
「俺が悪いのか? ただ、俺は彼女が待ち合わせ時間に遅れてきたから注意しただけだ。もしもこれが仕事だったらどうする? 相手を待たせて『ごめんなさい』の一言で済むか? 俺だったら時間も守れない相手と仕事などできない」
「第一に仕事ではありません。そこは切り離して考えましょう? 一生を共にする伴侶を探すために会っているんでしょう? 第二に、ちゃんとお相手に遅れた理由を聞きましたか? もしかすると、納得のいく理由があったかもしれません」
「聞いたさ! 前回もお前に同じことを言われたから、責め立てたいところを我慢してっ」
 どうやら彼も毎度同じ失敗を繰り返しているわけではなく、学習して気遣いというものを出してきているようだ。
 フローレンスは感心しながら、少し気持ちを落ち着かせてほしいという意味を込めて紅茶を目の前に差し出す。アルベインはそれに目を落として、ムッとした顔をカップの中の水面に映した。
「そうしたら、どうしても帽子が決まらなかったようだ。帽子だ、帽子! フローレンス、帽子! たかが帽子ひとつで俺の貴重な時間が無駄にされたんだ!」
 それがどうにも我慢できなかったようだ。彼はデート相手に『そんな似合いもしない派手な帽子を選ぶのであれば、日傘ひとつで済ませればよかっただろう』と言い放ち、ものの見事に振られたと話す。
「女性にとってデートの装いは大事なのです。たとえ帽子ひとつであっても、何時間も頭を悩ませるほどに重要なことです。理解ができなくともその努力を褒めるなどしてあげてもいいのでは?」
「成果が出せなければ意味のないことだ」
「だからアルベイン様は女性にモテないんですよ」
 呆れたように言い返すと、結局アルベインはむっつりとした顔をして黙り込んでしまった。

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