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恋する弁護士秘書~私、ツンデレ先生の仔猫になりたいんです!~

  • 作家江原里奈
  • イラスト夢志乃
  • 販売日2018/11/27
  • 販売価格300円

司法試験予備試験に5回連続で落ちた朝倉美紀。すっかりアラサーになり親からお見合いを勧められる生活にうんざりした彼女は、大手法律事務所のパラリーガルとして就職し、一人暮らしを始めることに。美紀の上司は、彼女より年下の超エリート弁護士・本田雅樹だった。予備試験に落ちた彼女を初対面から「バカ」呼ばわりする傲慢な本田先生に、美紀は反感を抱き続けている。ある日、日頃からのストレスを癒そうと、自分が元々ボランティアをしていた捨て猫カフェを訪れた美紀。だが、なんとそこには猫デレしている本田先生の姿が!その偶然の出会いによって、彼の意外な一面を知った彼女の心には少しずつ変化が現れて……。

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プロローグ
 ──オフィスに響きわたる拍手、続いて人々の賞賛の声。
「おめでとうございます、先生!」
「逆転勝訴、おめでとうございます!」
「さすが、先生! 今回もお疲れさまでした!」
 彼らの視線は、いまドアを開けて入ってきた一人の人物に注がれている。
 仕立てのいいチャコールグレーのスーツに身を包む、すらりとした長身。まだ二十代後半ではないかと思われる若い男性だ。知性を感じさせる涼やかな美貌には、何の表情も見受けられない。
(また、ポーカーフェイスなわけ? ホント、かわいげがないなぁ!)
 私は、思わず眉をひそめた。
 ひとつの勝訴……それは、彼にとって何でもない日常。他の多くの弁護士たちにとってうらやましくて堪らない勝利も、彼にはごく当たり前のこと。彼はどんなに困難な案件だろうが、法廷に立てば相手をねじ伏せる……つまり、この事務所で一番「勝てる弁護士」というわけだ。
 それが、彼──本田(ほんだ)雅樹(まさき)弁護士。
 拍手がなりやまぬ中、彼は事務所の奥へとまっすぐに向かっていく。変わらず無表情のまま、私のほうにチラリと視線を投げつけた。
 私のデスクがあるのは、彼専用のオフィスの手前にあるささやかな空間だ。
 彼がドアを開けて入ってくると、私は立ち上がって頭を下げた。
「お帰りなさい、先生。勝訴、おめでとうございます!」
 皆と同じ……とまではいかないが、かなりの演技力で私は彼に賞賛の視線を送った。
 だが、そんな私を見て、本田弁護士は唇を歪めた。
「……おめでとう、か。本気でそう思ってないの、バレバレだぜ?」
(ひぇー! なんで、バレるわけ??)
 慌てる私に、彼は指示を出す。
「そんなことは、どーでもいい。昨日頼んだ資料、さっさとオフィスに持ってこい」
「松田(まつだ)製薬の薬害訴訟の件ですね?」
「そうだ。ドキュメントは完璧だろうな? 誤字脱字が一個でもあったら、その場でお前はクビだから」
 クビ、と言われて内心ビクッとする。私の立場は、彼のご機嫌次第ですぐに危うくなる脆弱なもの。
 この傲慢なヤツの直属のパラリーガル、という今のポジションをクビならいつでも大歓迎! 他の穏和な先生の下に移れば、しあわせな日々を過ごせる気がする。
(でも、今はこの事務所を辞めるわけにはいかないしなぁ……)
 そう思った私は、用意してあった資料に間違えがないか本日三度目のチェックをする羽目になった。

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