夢中文庫

略奪カレシの過激な溺愛執着宣言~一生お前は俺の物だから~

  • 作家榎木ユウ
  • イラスト墨咲てん
  • 販売日2019/03/13
  • 販売価格300円

彼氏の浮気の現場に遭遇した若葉は、ひどい言葉で罵られ、元カノ宣言をされてしまう。昨夜も一緒にいたのに、いつから私は元カノになったの? 一言も言い返せないでいると、いきなり後ろから抱きしめられた。そしてその人は言う。「いらないなら俺が貰うけど?」そして彼は続けて「君は俺の物だから」と。彼の名は草薙大介。その瞬間、若葉は大介の彼女になった。会うほどに大事にされ、今までどれだけひどい目に遭ってきたのかを自覚する若葉。同時に、なぜ大介がこんなにも大切にしてくれるのかが不思議で仕方がない。大介に問えども答えは「だからお前は俺の物だから」。その言葉に隠された真実を聞かされた時、若葉は――

プロローグ どしゃぶりの金曜日
 雨の日は嫌い。
 明日は休みだというのに、何の予定も入らない金曜日。これから電車に乗って薄ら寒い家に帰るのかと思うと、気が重い。
 ヒールの低いブーツを履いたところで歩き方の下手な私には、泥はねでスカートの裾が汚れてしまう。
 少しの不満は自業自得だと呑み込んで、雨のしずくを振り払って傘をたたむ。
 ため息をつきながら、明るい改札へと向かう。人の流れに揉まれるように下を向いて歩いていれば良かったのに、どうして私は、この日に限って前を見ていたのだろうか。
 これは自業自得でも雨のせいでもないはずだ──
「昴(すばる)くん……?」
 思わず名前を呼んでしまったことは、すぐに後悔した。
 いくら自分の彼氏を駅で見かけたとしても、こんな時に声をかけるべきではなかったのだ。
「誰……?」
 そう問いかけてきたのは彼ではなく、彼の隣にいる女性だった。
 ストンとした黒髪にやぼったいロングスカートの私とは対照的な、明るい茶髪をシニョンに纏めた品の良い通勤スタイルの女性。
 その女性は、私の彼氏である昴くんの腕に自分の手を絡ませている。
 上品なピンクベージュのマニキュアが目に入り、私は何の色ものせてない自分の爪を隠すように拳を握りしめた。
「ああ、この前話した俺の元カノ」
 サラリと……本当にサラリと昴くんはそう言った。
 改札口へ向かう人混みの中、立ち尽くす三人は非常に邪魔だとわかっていても、私の足はその場に縫い付けられたかのように動けない。
 いつから……いつから、私は昴くんの『元カノ』扱いなのか、理解できなかった。
 昨日だって我が物顔で我が家に来て泊まっていった男にとって、私が『元カノ』になった瞬間はいつなのだろう。
 昴くんの隣の女性は、「ああ」と納得したような顔になる。
「別れようって言っているのに、ストーキングしてる子ね……ふぅん、それっぽい」
 下から舐めるように見られ、容姿でそれっぽいと判断された私は、顔を強ばらせた。
 確かにあなたよりずっと私は劣っている女に見えるかもしれない。だけど、そんな風にバカにされたような目で見られる筋合いなんてどこにもないはずだ。
 でも、私の心をさらに昴くんが挫いていく。容赦なく。
「お前もいい加減に気がつけよ、自分が俺には不似合いだって」
「不似合い……」
「その辛気くさい顔で迫られると萎えるんだよ」
 だから最近、Hするときはバックで、しかも性欲処理みたいに、自分がイったらすぐ終わりみたいな感じだったんだ──と変なことに納得してしまう。
 それでも昴くんは、昨日も私とSEXしたんですけど……と言えたら良かったのか。
 いや、そんなことを今言ったところで、昴くんの隣の女性は冷ややかに私を見るだけに違いなかった。
「みっともないのね」
 バッサリ言い切られた言葉に、今度こそ、私は何かを言わなければならなかった。
 何がみっともないのか。何故(なにゆえ)、私が付き合っていると思っていた男が別の女と腕を組んでいて、私が元カノ扱いなのか。
 元カノじゃない……
 その一言だけでも言えればよかったのに、私はまるで彼女に魔法をかけられたみたいに、本当にみっともなく、その場に立ち尽くしていた。
「なに恨めしそうに見てんだよ」
 呆然とする私を、昴くんはそう評した。
「私……」
 言葉が口から出てこない。
 すると、背後でクスクスと笑う声が聞こえてくる。知らない誰かの声だろう。
「うわあ、修羅場?」
「え? あのくそダサい女が勝手にストーキングしてるだけじゃなくて?」
「どうだろう? だけど、どう見てもあの陰気くさそうなのが彼女っていう感じは……」
 通り過ぎていく声に、この場で場違いなのは私の方だと思い知る。
 目の前の二人は、悔しいくらいにお似合いで、違和感もまったくなかった。
 対する私は、昨日夜更けまで昴くんにSEXを強要されて、肌もボロボロで、仕事も残業続きで疲れ切った状態で、どう見てもキラキラしたイケメンの昴くんの隣に立てるような女ではなかった。
 ああ、私、みっともないのか──
 どんな風に今、自分が周囲から見られているのか、ようやく理解した。
 みっともなくて、陰気くさくて、じとっとしてて──昴くんの彼女が本当は私だって、誰も信じてくれない現状がそこにはあった。
「まあ、そういうことだから、とっとと消えてくれよ。お前にこれ以上、言い寄られるの迷惑だから」
 自分勝手な物言いに、返す言葉もなく立ち尽くしていた。
 何か言わなきゃならないのに、何一つ言葉が出てこない。
「じゃあな」
 綺麗な女の子の肩を抱いて、私を捨てていく男に対し、何も言えずにその背中を見送るはずだったその瞬間──
 ぐんっと後ろに引き倒された。
「きゃっ……」
 ようやく出た声は短い悲鳴で、倒されたと思った次の瞬間には、トスンと何かに身体を受け止められた。
 自分の視界には異性のそれだとわかる腕が見える。
「いらないなら俺が貰うけど?」

オススメ書籍

花束は恋の予感

著者高崎氷子
イラスト九重千花

「もうお兄ちゃんじゃない」幼い頃から小野寺龍を兄のように慕ってきた花屋の百合。けれど、両親の死を境に小野寺は百合にお兄ちゃんと呼ぶ事を禁止する。次第に疎遠になっていく二人の距離を感じながらも、彼のサポートを受けながら大人になり、両親の残した花屋を守りながら健気に働く百合。そんなある日、花屋の建つ土地を狙う魔の手が百合へと迫る。絶体絶命のピンチを救ったのは、かつてと変わらない勇敢な彼だった。ピンチを救われた百合は、小野寺からの予想外の花の注文を受けて――? 「――てやる。だから泣くな」長い間秘められていた両者の想いが、記憶のピースを埋めていく。花言葉に秘めた恋の予感が膨らむ、甘く優しい初恋ストーリー。

この作品の詳細はこちら