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身代わり花嫁の甘美な受難~寡黙な王の一途な寵愛~

  • 作家冬島六花
  • イラスト八美☆わん
  • 販売日2019/05/17
  • 販売価格500円

「残虐姫もドレスを脱げばただの可愛い女だな」──双子は不吉だという伝承により存在を伏せられ、修道院で育った第二王女アメリア。姉は残虐姫と呼ばれ、傲慢で奔放の限りを尽くしているという噂だ。十数年ぶりに王宮へ呼び戻されたアメリアに待っていた運命は、失踪した姉の身代わりとして、大国の若き国王クラウスへ嫁ぐこと。姉として振る舞いながら慣れない豪華な新婚生活に戸惑いつつも、寡黙で凜々しいクラウスに初夜から激しく求められる。アメリアはクラウスの優しさにも触れ急速に心を惹かれていく。そんなある日、姉から居場所を知らせる手紙が突然届いて――。身も心も蕩ける、ドラマティック濃密溺愛ロマンス!

第一章 陸の孤島に住む王女

 切り立った山を臨む断崖絶壁に、その修道院兼孤児院はある。敷地を一歩出れば、そこからは暗い地の底を見下ろせる。
 四方を険しい山で囲まれたライトリンゲン王国──。わずかな平地に人々は肩を寄せ合うように住み、農業や酪農で生計を立てている。
 また、東から北にかけての山脈には銀山があり、採掘と輸出によって収入を得ている。
 隣接する国々へ行くには必ずここを通らねばならない要所であるから、古くからこの国の領有権を巡り、大国が争っている。
 そんな血生臭い歴史に彩られたこの国のなかでも、ここは最果ての地と呼ばれている。
 身寄りのない者、後ろ暗い過去を持つ者たちが、この修道院に身を寄せるのだ。
 築数百年、煉瓦造りの重厚な建物は苔むして、蔦が絡まっている。
 ──けれどその物々しさとは裏腹に、アメリアは、今日も天真爛漫だった。
「みんな、今日のお昼はソーセージ入りの野菜スープよ」
 鍋から野菜スープを取り分け、列を作った子どもたちに渡すのは、十八歳の小柄な乙女、アメリアだ。ウェーブがかかった亜麻色のロングヘア。長いまつげに彩られた大きな瞳は、サファイアを思わせる深い青色をしている。手足は細いが、胸元は豊かで女性らしい体つきだ。
 アメリアは黒いワンピースタイプの修道服の上に白いエプロンを身に着け、いつも明るい顔で微笑んでいる。その透き通るような白い肌に内側から上気したような薔薇色の頬、紅を差したような唇は、周りの者みんなの気分を上向かせるのだった。
「本当に? 僕の分はソーセージたっぷりにして」
 一人の少年が茶目っ気たっぷりにそう言うと、周りの少年たちも色めき立つ。
「おいおい、欲張るなよ」
「そうだぞ、みんなソーセージは大好きなんだから」
「だって食べられるときに食べなきゃ」
「食いしん坊だなぁ」
 給仕を待つ少年少女たちが、賑やかに笑い合う。
「いいのよ。私の姉が、美味しいソーセージをたくさん送ってくれたの。あなたたちは成長期なのだから、たくさん食べて」
「やったー!」
「アメリア姉さんのお姉さんって、もしかして大金持ち? この孤児院に食べ物を恵んでくれるなんて、すごいね」
 痛いところを突かれて、アメリアは一瞬、黙り込む。
「……そうね、大金持ちなんかじゃないわ。ただ、みんなのことを愛しく思っているだけよ」
「そうなの? まぁ、ソーセージをくれる人なら、僕たちいつでも大歓迎だけどな!」
 お調子者の少年が言うと、周りの者みなも瞳を輝かせ始める。
「うんうん、僕も」
「私も」
 最果ての修道院での暮らしは、実際にはこんなにも穏やかに過ぎていくのであった。
 昼食を終えると自由時間だ。幸いなことに、この断崖の修道院にも春の麗らかな日差しが注いでいた。
 子どもたちは孤児院の中庭で遊び、大人たちは思い思いに趣味に打ち込む。
 アメリアは同室のエルゼとともに、編み物をしていた。真っ白なレース糸で花のモチーフを編み、つないでストールを作って、年に数回、麓(ふもと)の街へ売りに行くのだ。編み物はずっと続けているアメリアの趣味で、これだけは上手く出来るという自信もある。

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