夢中文庫

諦め上手も恋を知れば揺るがない

  • 作家春井菜緒
  • イラスト炎かりよ
  • 販売日2019/05/07
  • 販売価格700円

職場の飲み会で同僚を庇って深酔いした宮島を夏芽は自宅に送る羽目に。寝落ちした彼をなんとか部屋まで運び、美麗な寝顔を観察して帰ろうとすると、目を覚ました宮島から突然のキス。すぐに正気を取り戻した彼から謝罪され、動揺しつつ夏芽はその場をあとにする。その日以降、様子がおかしい宮島。改めて謝罪されるとともに、なんと『結婚を前提に』交際を申し込まれてしまう。だが自分には結婚には前向きになれない理由もあり、宮島の女性社員からの絶大な人気を考慮すると、平穏に過ごしたい夏芽はなんとか宮島に自分を諦めてもらおうと考えをめぐらす。しかし、彼の一途さにどんどん心を揺さぶられてしまい──


「宮島(みやじま)さんっ。着きましたよ、起きて下さい!」
 織田(おだ)夏芽(なつめ)は叫んだ。
 タクシーの運転手から送られる気遣わしげな視線を感じながら、彼女は目尻の下がった丸い瞳を大きく見開き、薄茶色の長い髪を揺らして叫んだ。
「宮島さん!」
 にも拘わらず、夏芽の目の前で眠りこけている男性はぴくりとも動かない。
 タクシーの後部座席で窓に頭を預け、大変気持ちよさそうに寝息を立て続けている。
 整った顔立ちの彼は寝顔までもが大層綺麗であるが今はそれどころではない。
 時刻は深夜一時十五分。職場の飲み会で深酔いしてしまった二つ上の先輩──宮島を、タクシーで自宅マンションまで送り届ける役目を仰せつかり、同乗したものの。まさか彼がタクシーの中で熟睡してしまうとは思わなかった。その上、大声で呼んでも乱暴に肩を揺らしても全く目を覚ましてくれないとは、一体どうすればいいのだろう。
──ついさっきまで起きてたのに……!
 今から三十分ほど前、居酒屋を出たとき、宮島は夏芽に謝罪を繰り返していたし、夏芽もそれを笑って受け止めていた。そしてそれはタクシーに乗ってからも、だ。彼が寝落ちしてしまったのはほんの二、三分前のことである。急に静かになったと思ったら寝息を立てていたのだ。
「ど、どうしよう……どうやって運べばいいの……」
 夏芽はがっくりと項垂れた。
 夏芽より二十センチも長身の宮島を一人で抱えて運ぶなんて無理だろう。そんなことをしたら彼とは違う意味で、しかし文字通りつぶれてしまう。
 そもそも夏芽は彼の部屋番号すら知らない。そのことに気づいてすぐ、彼女は慌てて宮島の同期である別の先輩に電話をかけた。
 すると、なぜか弾んだ声で「悪いんだけど、そいつをベッドの上まで送り届けてやってくれるー?」と頼まれてしまう。その先輩こそが、夏芽を宮島の送り届け係に任命した人なのだが。
 無責任すぎやしないか、と夏芽は更に項垂れつつ、さてどうやって彼を部屋まで運ぼうかと考える。
「あの、大変申し訳ないのですが……」
 悩んだあげく、夏芽は運転席の年嵩の男性に頭を下げた。結局、タクシーの運転手に手伝ってもらって、宮島を部屋の前まで運んだのである。
 無理なお願いをしたというのにタクシーの運転手は快く引き受けてくれた。有り難くて有り難くてたまらなかった。
 せめてもの礼に多めの代金を支払って、夏芽はタクシーの運転手を見送る。
 それから宮島のビジネスバッグを勝手に漁り、鍵を取り出し、開錠してから引きずるように彼を移動させた。そうしてやっとやっと部屋の中──玄関へと辿り着いた。
 そこからもう一頑張りして、玄関のすぐ先の廊下へと宮島を引っ張り上げる。
「ベッドまでとか絶対無理だって……っ」
 肩で息をしながら、夏芽は玄関ドアを閉める。
 それにしてもなんて広い玄関だろう。宮島が眠りこけている廊下も夏芽の住んでいるアパートとは比べものにならないほど長い。ファミリータイプのマンションなのだろうか。
 宮島は一人暮らしだと聞いているが、こんなにも広い部屋に住んでいるとは驚きだ。
 夏芽は、体を丸めて眠っている彼の横に腰を下ろした。そしてなんとなく、宮島に視線を向ける。
 すっきりとした真っ黒な短髪。いつもは立ち上げるように整えられている前髪が今は崩れている。ちょっと新鮮だ。高い鼻梁、閉じていてもわかる濃い二重の線、薄く開いた唇。
 無事に彼を部屋の中へと送り届けることができて多少余裕が出たのだろうか。先程はそれどころではなかったが、夏芽は今更ながら美麗な寝顔をこっそりと観察する。綺麗なのに男らしさを感じるとはこれ如何に。
 入社して五年。営業事務として働いている夏芽は、仕事上で宮島と深い関わりがある。

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