夢中文庫

死神くんと病弱ちゃんの終活同棲31日生活

  • 作家八朔きうい
  • イラストねじがなめた
  • 販売日2019/11/1
  • 販売価格500円

「……私、とうとう死ぬんですね」生まれつき体が弱く、病気を長く患って自分の死期を覚悟していた美上燕。いつからか夢を描くこともなくなっていた。しかしギリギリになって生きることを諦めきれず、魂を迎えにきたエリート死神・雪風を撃退してしまう。再度魂を回収されるまでに残された時間は「一ヶ月」。その間、燕は憧れていた『普通のこと』を雪風と共に暮らし叶えていくのだが、だんだんとふたりの距離は近づいて──「私の人生は多分、最初からこの一ヶ月のためにあったのかも」 仕事をしくじってしまったエリート死神と好奇心旺盛な病弱女子。不思議な組み合わせのふたり、31日間の記録!

一、「失敗、した?」
「今日で現場業務ともおさらばだな」
 この日の雪風(ゆきかぜ)は、大層機嫌がよかった。いつもは眉を顰めるような軽口にも、今日は珍しく笑みが零れるほど。
「ああ、名残惜しいよ」
 わざと肩を落としてみせると、同僚の蓮元(はすもと)はニヤニヤ笑って距離を詰めてくる。
「心にもないことを言っちゃって」
「……まあね」
「ハハ、正直でいいじゃん。マジで嬉しいんだな」
 雪風が今日をもって現部署を離れることは周知の事実だった。
「誰だって喜ぶに決まっているだろ」
「まあな~、お前ずっと希望出してたし」
 蓮元は訓練校からの同期だ。寮も同室だったし、配属部隊も同じだったので、雪風の事情の大抵を察している。
「その年で管理職の仲間入りか~。絵に描いたようなエリートコース」
「お陰様で」
「そんなこと思ってないだろ」
「……ま、現場の死神はワンマンプレイが基本だからね」
「ハハ、言えてる」
 冥府(めいふ)直属魂魄(こんぱく)管理機関、回収部一課。
 もうすぐ人間の元に出向き、死を宣告した上で、魂の回収をおこなう業務を担う。
 彼らの仕事は、俗に《死神》と呼ばれるそれだった。

(心残りはないが、感慨深いのは本当だぞ)
 現世に向かう定期船に乗り込み、窓の外に視線をやった。
 冥界と現世の間には、不確定な液体の層がある。四次元的な海や湖のようなものだ。波はないが、時折液体全体が大きく揺らめくため、その反動を利用して現世に移動する。
 定期船には頑丈なシートベルトが取り付けられているほか、セルフサービスの酔い止めや柑橘ジュースが充実していた。
(……これを飲むのも最後か)
 雪風は生来三半規管が強いらしく、船酔いの経験がない。どんな新人でも、大抵は個室トイレにこもってげえげえやるという通過儀礼があるのだが、雪風は初任務からけろりとしていた。
 体質的に恵まれている自覚はあるが、それを嫌味の材料にされた経験もある。「酒ならどうだ」と羽交い締めにされ、ウィスキー瓶を口につっこまれた思い出が蘇った。
(…………あの時の先輩連中は、今や全員俺の部下だが)
 苦い経験ではあるものの、それを振り切るための努力はしてきたつもりだ。
 有給のほとんどを下界の研究に使った。厳しい現場こそ進んで出向いたし、残業だって計上しきれないほどこなしたのだ。
(努力が実を結ぶなんて夢見がちなことは言わないけど、達成感はあるんだよ)
 事実、地道な努力に意味はあった。
 今や雪風は同期で一番の出世頭であり、歴代トップクラスの出世スピードだ。今回の回収を持って現場業務を引退し、今後は冥府本部の研修を経て関連機関に出向。そのまま幹部へのキャリアを歩むことになっていた。
『間もなく20XX年代、アジア圏に到着します。渡航申請済みの回収員の方は、三番出口にご準備お願い致します。繰り返します──』

オススメ書籍

コンビニプリンスは秘蜜の御曹司!?

著者如月一花
イラスト期田

桜子はコンビニで接客をし、品出しをして──普通のアルバイトに日々勤しんでいる。そして同じ店で働く品川壮真を「コンビニプリンス」とひそかに憧れていた。彼は柔らかい物腰でお客様対応は完璧、芸能人顔負けレベルのルックスを持ち、いつも桜子が困っているとさりげなくフォロー。それは桜子が憧れる王子様のよう。いつか一緒にカフェでデートが出来たらと願っていた。休日、桜子がふと目にした高級そうな黒塗りの車から、壮真が降りてくる。見間違い?桜子が彼にその疑問をぶつけると、見たことは忘れて欲しいと言う。その代わり桜子の希望通りカフェデートが実現。──壮真の正体は…?身近な場所にいた王子様との夢見た甘い恋がはじまる!

この作品の詳細はこちら