夢中文庫

素敵な獣医さんはとびきり甘い私の保護者~子猫と一緒に拾われて~

  • 作家柊あまる
  • イラストnira.
  • 販売日2019/6/28
  • 販売価格700円

都心の大手総合商社に勤める紗花は仕事もおしゃれも頑張るが、恋に縁がない。ある夜、友人との食事の帰り道にひったくりに遭い途方にくれる紗花は、弱った子猫を偶然拾ってしまう。夢中で飛び込んだ動物病院で獣医師の龍吾に子猫を助けてと懇願。処置をしてもらい冷静になると、財布も自宅の鍵も手元にないことを思い出し焦る紗花。状況を理解した龍吾から仮眠室で休めばと提案され甘えることに。龍吾の端整な顔立ちと男らしさ、そして獣医師としての夢を聞き、出逢って間もないのに紗花の胸はどんどん高鳴ってしまう。龍吾が親身に世話をするにつれ、ふたりの距離は急速に近づいていく。しかし紗花は龍吾の元カノの存在が気になってしまい……

金曜日、ふんだりけったり
 ──三連休前の金曜日。
 私は同期入社で友人の澪(みお)と一緒に、品川(しながわ)にある行きつけのイタリア料理店で、美味しいワインを飲んでいた。
 ここは魚介のメニューが豊富で雰囲気が良く、客層は女性同士かカップルが多い店だ。女二人で飲んでいても、男性のグループにジロジロ見られたり、一緒に飲もうなどと言って誘われることがなかったから、好んで利用している。
「婚約おめでとう、澪」
 向かい合わせに座った彼女とグラスを合わせ、お祝いの言葉を贈ると、澪はとても幸せそうに微笑んで「ありがとう」と返した。
 彼女の旦那さまになる人は、大学時代に付き合い始めた彼女の先輩だ。医学部を出て医師免許を取得し、現在は研修医二年目。いずれ実家の病院を継ぐため、彼のお父様と同じ整形外科医になるのだという。
「付き合って六年か……すごいね」
 そう言うと、澪はワインを口にして軽く頷いた。グラスを持つ彼女の手は爪の先まで磨き上げられていて、とても美しい。
「入って早々に結婚するのもどうかと思ったし、どっちにしろ子どもができるまでは共働きのつもりだったから」
 私は「そうだよね」と頷き返し、大皿で運ばれてきたサラダとチーズを適当に取り分けた。
「入社するまでが大変なのに、簡単に辞められないよね」
 私たちの勤め先は、丸(まる)の内(うち)に本社がある大手総合商社だ。二人とも一般職で入社四年目。
 近年、新卒は空前の売り手市場などと言われているが、金融や食品、商社などの人気はやはり高く、正社員の採用数もかなり絞られている。そして転勤のない一般職は、実は総合職よりも倍率が高い。
「仕事も大変だけどそれなりに面白いしね」
「なによりボーナスをフルで貰い始めたら、辞められないでしょ」
 私たちは目を見合わせて小さく笑った。
 昔と違い、今は総合職と一般職の垣根はだいぶ低くなっている。一般職にも高い語学力とスキルが要求されるし、希望すれば総合職への転換も可能だ。
 でも職務としての違いはやはり明確にあって、プロジェクトにおける一般職の役割はあくまでもサポート。
 私は最初から、自分が先頭きって物事を進めるより、周りを見てフォローしたり間接的なサポートをする方が性に合っていると思っていた。入社してからも同じで、総合職になりたいと思ったことは一度もない。朝も夜もなく、世界中を飛び回るような生活はごめんだ。
 私は時間に追われて日常のささやかな楽しみ──例えば、こうして友人と美味しいものをゆっくり味わったり、お花屋さん巡りをして、たまに新しい観葉植物をお迎えしたり、それらの世話をしながら部屋のインテリアをちょこちょこ変えて楽しんだりする余裕がなくなるのは嫌だった。
「紗花(すずか)は? 結婚したい相手いないの?」
 澪の質問に、私は首を横に振る。
「いない。もうこういう場所じゃ見つからない気がしてる」
「こういう場所って?」
「丸の内界隈」
 澪はなにやら考える素振りを見せ、長い髪をさらりと揺らしてこちらを見つめた。

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