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年下エリートの溺愛戦略~こじらせ女子は押し倒されても気づかない!?~

  • 作家伊月ジュイ
  • イラスト霧原すばこ
  • 販売日2020/09/18
  • 販売価格700円

「あなたが鈍感なのは、もうずっと前から知っていますが、いい加減気づいてください」――企画部で働く日和は、優しい男性たちにときめいては、思いを伝えることもなく失恋する恋愛初心者のこじらせOL。そんな日和の失恋を癒す役目を担っているのは、一つ年下のエリート後輩、沖永。容姿端麗で企画部次期課長と呼び声の高い彼と、恋愛関係になることはあり得ないと、この日も安心して話を聞いてもらっていたのだが……。度数の高いお酒を次々と勧められ、ほろ酔いの日和が運ばれたのはホテルのベッド!? 「初めてでしょうから、優しくします」……鈍感OLを振り向かせたいエリート後輩のとった戦略は?

一.こじらせ女子はファーストキスに夢を見る
 彼が連れてきてくれたのは、ホテルの最上階にある高級バー。
 ムードに呑まれて少しだけ緊張する。普段ふたりで飲みに行くときは、もう少しカジュアルな雰囲気のお店へ行くことが多いから。
 モデル並みのスタイルとクールな美貌を持つ彼は、歩いているだけで周囲の目を引く。
 案の定、店に足を踏み入れた途端、女性たちはうらやましげに彼を眺め、ほうっと息をついた。隣にいるのが私で、本当に申し訳ありませんと平謝りしたくなる。
 彼は私をカウンター席へエスコートし、その隣に腰を下ろした。
「リクエストはありますか?」
 彼が敬語を使うのは、私のほうがひとつ年上だからだろう。一応、入社時に面倒を見た先輩ということもあり、敬意を払ってくれている。
 ……とはいえ、役職も追い抜かれちゃったし、今では彼のほうが私の上司。微妙な間柄だ。
「お任せで」
「では、いつもの感じで注文しますね」
 そう私へ確認して、近くにいたバーテンダーを目線で呼び寄せると、注文を済ませた。
 彼がオーダーしたのは、ジントニックとグラスホッパーという名のカクテル。
 ジントニックは彼が飲むつもりなのだろう。もうひとつの名前には聞き覚えがなくて眉をひそめた。
「バッタ……?」
 グラスホッパー。直訳すると『バッタ』。
 カクテルに虫の名前をつけるなんて。そのネーミングセンスは……どうなんだろう?
「見ればわかりますよ」
 彼の言葉にぎょっと目を丸くする。見ればわかるって、バッタというネーミングに納得のいくカクテルなのだろうか。グラスに沈むチェリーのごとく、バッタが……なんてオチはさすがにないだろうけれど。
 バーテンダーがシェイカーをカシュカシュ振ってくれる。カクテルグラスに注ぎこまれたとろりとした液体は、鮮やかなエメラルドグリーン。
 なるほど、それで『バッタ』なのか、と腑に落ちる。
「もうちょっとロマンティックな名前にすればいいのにね……『若葉』とか『翡翠』とか」
 彼にチラリと目配せすれば、すかさず「どうぞ」と勧められたので、私はグラスを並々と満たすグリーンを上唇でひと口舐めとってみた。
 クリームの甘さが口の中に広がり、間をおかずシュッと立ち消える。後味にはスースーとした爽快感が残った。これってつまり──。
「チョコミント」
「そのネーミングが一番わかりやすくていいでしょうね」
 彼は運ばれてきたジントニックを口に運び、切れ長の目をふんわりと細める。
 グラスホッパー──もはやチョコミントでいいだろう──は、デザートのように甘くて飲みやすい。女子人気も間違いないだろう。
 けれど、アルコールの度数はそこそこありそうだ。
「これ、結構強いお酒だよね?」
 私が尋ねると、彼は表情ひとつ変えず「その程度じゃあ酔わないでしょう」と切り返してきた。
 昔は気を遣ってアルコール度数の低いカクテルを注文してくれていた彼。しかし、いくら飲んでも平然としている私を見て、手加減は不要だと感じとったらしい。

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