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天才研究者の婚活事情~プロポーズから始まる恋~

  • 作家寒竹泉美
  • イラストかずいち
  • 販売日2019/9/26
  • 販売価格400円

藤間薫。世界トップレベルの研究者で容姿端麗、しかも藤間グループの御曹司と非の打ちどころのないハイスペック。そんな彼が結婚相談所という何とも不似合いな場所を訪れる。真剣に婚活を考えている藤間が相手に求める条件は「話が合う」こと。しかしこれが難題だ。マリッジアドバイザーは妹であり博士研究員をしている草薙穂花に白羽の矢をたてるのだが、肝心の穂花には結婚願望がないという致命的な問題が──「俺と結婚したい気持ちにさせればいいんだな」と乗り気になる藤間。一方の穂花は「藤間薫がパートナーを探している」と姉から聞かされたのを『共同研究者の募集』と勘違いして…… 研究一筋なふたりらしい恋がはじまる!?

プロローグ 結婚相談所の難案件
 草薙(くさなぎ)春花(はるか)は、目の前のソファーに深々と腰かけている男性を横目で見ながら、頭をフル回転させていた。
 藤間(ふじま)薫(かおる)。
 申し込みがあったときは誰かのいたずらかと思った。が、このオーラと容姿は間違いなく本物だ。同姓同名の別人ではない。
 雑誌やテレビで見たときは、整った顔と表情があまり変わらないせいで非人間的な冷たさがあった。が、春花の目の前に座っているのは、二十九歳のひとりの男性である。普段とは違う環境に居心地悪そうにしている様子は、春花の目には好ましく映った。鋭い目の奥には、女性の心をとろかしそうな甘さも潜んでいる。
 日本を代表する藤間グループの御曹司であり、世界でもトップレベルの研究者であり、有名人。ハイスペック、容姿端麗、非の打ち所がない。
 なんでそんな男が結婚相談所に来ているのだろうか。
「なぜ、黙っているんだ?」
 藤間が不機嫌そうな様子で言った。
「やる気がないのなら、ほかの相談所へ行く」
 横柄な言い方だったが、春花の耳にはまるで子どもがすねているように聞こえた。わざわざほかのところへ行くのは面倒だから、ここで何とかしてほしいと暗に訴えている。
 春花はまっすぐに藤間を見据えた。春花は現在三十四歳。大学院生のときからバイトでやっていた経歴も加えると、この道十一年のベテランだ。数々の男女の結婚を成立させてきた。その中には驚くような金持ちもいたし、変わった奇人もいた。藤間のようなタイプの対処法もわかっている。それは、ひるまないことだ。
「藤間さん。あなたは難しいミッションを与えられたときに、わかりましたと言ってすぐに作業を始める人間と、与えられた条件をじっくりと吟味し熟考してから動き出す人間の、どちらを信用しますか」
「なるほど」
 春花を見る藤間の目の色が変わった。
「当然、後者だ」
 藤間はソファーに浅く座り直すと、不満そうな顔つきで春花をにらんだ。
「つまり、俺の結婚相手を探すのは、難しいミッションということか」
「そういうことです」
 ほかの相談員なら、お客様みたいな素敵な方ならすぐにお相手が見つかりますよ、などと言うかもしれない。実際、藤間のスペックと容姿に惹かれる女性は山ほどいるだろう。だが、それでは意味がない。
「なぜだ」
「藤間さんと結婚したい女性は、たくさんいらっしゃると思います。ですが、藤間さんが結婚したいと思える相手を探すのが難しいのです」
「そんなことはないだろう。俺の求めている条件は非常にシンプルだ。話が合う女性。それだけだ」
 春花はこっそりため息をついた。
「一応聞いていいですか? 結婚相手とどんな話をする予定ですか?」
「研究の話だが……」
「……ですよね」
 春花の思考は再び忙しく働き始める。

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