夢中文庫

摩天楼の夜は熱く激しく燃えて

  • 作家桐舞子
  • イラスト桜之こまこ
  • 販売日2019/04/12
  • 販売価格700円

父を亡くし、後見人となってくれた初恋の人ブライアンと三年前に結婚式を挙げた亜理紗。だがそれはブライアンの母を欺くためのもの。それでも亜理紗はブライアンを愛しているし、今の生活にも満足していた。ある日ブライアンから腹違いの弟がいるかもしれないと打ち明けられる。ブライアンのためならとその人物――ダグラスに会いにいくが、なんとダグラスは亜理紗に、DNA鑑定の結果が出るまで愛人契約を結び、ここに住むように告げる。なんという高慢! 憤る亜理紗だが、愛人として彼の腕の中で生活するうちに、次第にダグラスの人柄や才能に惹かれていくことを自覚する。ブライアンの妻なのに――揺れる亜理紗にダグラスがプロポーズを!

第一章 愛人契約
 亜理紗(ありさ)は大人になった今でも、怖い夢を見ることがある。
 なにもない暗闇の空間の中で、父の姿がロウソクの灯のように、薄らと現れるのだ。まだ子どもの姿の亜理紗が必死で「パパ、パパ」と呼びかけ、姿を追うのだが、なかなか父まで手が届かない。
 懸命に叫んでいるのに、父は無言のまま、どんどん遠ざかっていくだけだった。
「パパ……待って」
 力を振り絞って、父を呼び止めようとしたとき、両目がぱっと大きく開いた。
「ここは……どこ?」
 亜理紗は自分がどこにいるのか、夢から目覚め、現実を認識するまでの数秒間、真っ白な天井を眺め、そのまま惚けていた。
「現在(いま)のわたしの部屋ね」
 亜理紗の両親はもういない。それなのに何度も夢に見てしまう。特に病死の母と比べ、父が他界したときは衝撃的だったことから、未だに悪夢から逃れられないでいた。
「奥さま、お目覚めですか? 朝食の用意が調いましたが」
 ドアの向こうからノック音がした。亜理紗の起床を確認しにきた執事のハワードだ。彼は先代のときから、亜理紗が暮らしているこのケイフォード家に勤めている。最近は前髪が薄くなり、白髪が目立ち始めたが、家のことはすべて取り仕切ってくれていた。
「ええ、ちょうど目覚めたところよ。すぐに支度するわ、ハワード」
 亜理紗はベッドから降り、ベージュ色をした無地のカーテンを素早く開けた。明るい陽射しが窓を通して目に入り、眩しさを感じて目を細める。
「今日もいい朝ね」
 亜理紗は窓を開け、空気の入れ替えをする。
「おはよう、パパ、ママ。今日の天国の天気はどうかしら?」
 雲ひとつない青空を見上げ、両親にも朝の挨拶をする。これは亜理紗の日課だった。そして白のスーツに着替え、一階のダイニングルームへと下りていく。
 テーブルの真ん中に置いてある細長い花瓶には、バラの花が生けてあり、その横には数紙の朝刊が並べてあった。夫のブライアンが朝食を摂りながら、経済欄のチェックをするためだ。だが現在、この家の当主でもあるブライアンは入院中だ。毎日亜理紗がこれらの新聞を病院まで持っていっている。
「奥さま、どうぞ」
 ハワードが朝食を載せたワゴンを運んできてくれた。
 スープにパン、ベーコンエッグ、フルーツサラダ、ミネラルウォータをテーブルに並べてくれると、亜理紗は手に取ったばかりの新聞をいったん置く。
「ありがとう、ハワード」
「今日も病院へ行かれるのですか?」
「もちろん」
 すでに両親が他界している亜理紗にとって、ブライアンはかけがえのない人だ。ほんの短い時間であっても、ともに過ごしたい。
「旦那さまのご容体は?」
 ハワードも少年のころからブライアンの面倒を見てきただけあって、亜理紗同様に心配をしてくれている。
「最近、調子がいいみたいよ。薬が効いているようなの。もうしばらく様子を見てからになると思うけれど、自宅療養の許可が下りそうよ」
「そうですか。安心しました。あとは一日も早く、臓器提供者が見つかってくれるといいのですが」
「そうね」
 半年ほど前だった。ブライアンは疲労感が続いていたようで、当初は仕事のしすぎだろうと気に留めることはなかった。しかしその後も体調が優れなかったため、ホームドクターに相談し、念のため検査をしたら心臓に疾患があることが判明した。
 薬のお蔭で安定しているとはいえ、医師からあくまで一時的な効果だとも告げられた。このまま薬に頼るより、補助人工心臓を装着するか、移植手術を受けたほうがいいと勧められている。
「さて、と」
 亜理紗は最後に残っていたフルーツサラダをすべて口に入れると、さっと立ち上がった。
「ブライアンのところに行くわ。ハワード、運転手に車を出すように、伝えてちょうだい」
「畏まりました」
 ハワードは先にダイニングルームから下がり、亜理紗は身支度のため、一度部屋へと戻った。

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