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あなたとの距離は30センチ以上ですから!

  • 作家如月一花
  • イラスト白峰早菜
  • 販売日2018/4/13
  • 販売価格400円

モデルみたいな体型とルックスの社長、茅ヶ崎大地の秘書になってしまった小柄な戸田美弥。身長差約30センチ。異例の抜擢で頑張ろうと意気込んでいるのに、茅ヶ崎は甘えん坊で美弥に甘い言葉をかける日々。なんとか社長と秘書としての距離を保とうと懸命に努力する美弥。ところが突然、茅ヶ崎から告白されキスを奪われてしまう。そして“社長命令”でデートに連れ出された帰り、茅ヶ崎は強引気味に美弥の部屋を訪問。無邪気なふるまいをしたかと思えば、いきなり美弥を抱きしめるのだった。戸惑いながらも、茅ヶ崎へのときめきを抑えられない美弥であったが、ある日「茅ヶ崎の彼女」と自称するモデル美女が突然現れて、心は大きく乱される…!!

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出社してすぐの秘書同士の打ち合わせで、戸田(とだ)美弥(みや)は自分を取り囲む女性秘書をまんべんなく見回す。
 美人長身は当たり前、美乳も当たり前、というより、モデル並みの体型を維持することも秘書の役目と言わんばかりの茅ヶ崎(ちがさき)食品(しょくひん)の秘書課のメンバー。
 輸入菓子を扱う小売店として有名で、業界では一代で築き上げた実績がある。
 そんな会社の秘書課で、美弥は身長が百五十五センチ、体重も標準で見た目に華やかな所もない。
 華やかさを出す為に辛うじてパーマをかけているが、黒髪を染めることはしていなかった。
 他の秘書は、染めていてふんわりしたパーマもかけている。
 でも、美弥は自分にモデル並みの事を要求されていないことくらいは自覚していた。
 同じことをしても無駄な努力だと影で笑われそうで、せめてこの周囲から浮かないようにという意味でパーマをかけている。
 が、毎回こうして秘書が集まり一日の仕事について報告し合うと、自分がなぜ、社長の茅ヶ崎大地(だいち)に付いているのかが分からなくなった。
 社長の隣を歩かせるのなら、男性としても社長としても、美人が良いに決まっているだろう。
 美弥はその辺のどこにでもいる女性であり、美人ではない。
 華やかさの代わりに真面目さ、というのは美弥の売りではあるが社長の秘書ともなれば、皆真面目に仕事はこなすだろう。
 それに、茅ヶ崎食品の秘書は評判も良いのだ。
 わざわざどこにでもいるような美弥を社長の秘書にするなど──。
「戸田さん? 次は茅ヶ崎社長のスケジュールの報告を」
「すみません。今日は午前十一時に社内会議。午後は社外の視察と会食が控えています」
「今日はのんびりできそうね」
 室長の水野(みずの)が微笑んでくれる。
 勿論、モデル並みの体型で美人だ。
 水野こそが茅ヶ崎の秘書に適任だと思うのだが、彼女は副社長の秘書をしている。しかも、美弥に強く当たることもない。
 美弥が社長秘書に着任した当時は秘書室がざわついたが、水野だけが冷静にそれを受け入れていたように見えた。
「今日は、社長に少しゆっくりしてもらうと良いわ」
「早く帰って頂いても良いでしょうか?」
「そうね。急ぎもないでしょうから。そう提案してみて」
「分かりました」
 美弥は小さく頷いた。
 水野の的確な指示は、美弥にとっても有難い。
 だからこそ、茅ヶ崎の担当は水野では? と思うのだが──。
「それでは、今日もよろしくお願いします」
 水野の挨拶の元、皆で一礼して部屋を出て行く。
 そして美弥も、茅ヶ崎の待つ社長室に向かうのだが足取りは重い。
 思わずため息を吐いてしまう程だ。
 慣れないわけではない。
 ただ、こんなにも体格差を感じると疲れてしまうのだ。
 それは秘書室の女性にもいえることだが、自分とかけ離れた存在に日常的にさらされると、自分がどれほど醜く、寂しい存在かと毎日毎日思い知らされている感じがするのだ。
 勿論、美弥は一般的な女性よりも小柄程度なのだろうが。
(モデル秘書の次はモデル社長かあ)
 後少しで到着する社長室を前にして、茅ヶ崎のことを思い浮かべて足を止めた。
 今日はあまり忙しくはない、どうぞ自由にしてください、そう伝えるのも憂鬱なことだった。
 思わず足を止めて、またため息を吐くと、長身の茅ヶ崎が脳裏によぎる。
 数日前は不意に頭を撫でられ、小柄な事を『バカにされた』。
 茅ヶ崎の身長は百八十二センチ。
 体型はモデル並みで、スーツをオーダーするときはウエストが細いこと、足が長いこと、お尻が小さいことなどが度々話題になる。
 顔もほっそりとしているし、高い鼻梁や切れ長の目は女性を魅了するだろう。
(普通なら。きっとイケメン要素満載なのよ。しっかりしなきゃ)
 気を取り直して社長室をノックすると中から声がした。
 そっとドアを開けると、さっき自分の中でイメージしていた茅ヶ崎がニコニコと笑って、美弥を迎えてくれた。
「おはようございます。社長」
「おはよう。美弥くん」
「社長、苗字でお呼びください」
「いいだろう? 別に。ここはパーソナルスペースだ」
(社長室がパーソナルスペースですって!?)
 この空間には毎日毎日入っているわけであり、まるで美弥を心から許すかのような錯覚を受ける。
 軽い咳払いをして気を取り直すと、美弥はスケジュール帳を開いた。

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