夢中文庫

隠れイケメンの曲者御曹司に恋をしました

  • 作家如月一花
  • イラスト志波ひより
  • 販売日2019/8/28
  • 販売価格300円

「恋愛をしてから結婚して欲しいんです」――出版社に勤める愛子には親同士の決めた許嫁がいる。相手が誰かも知らないまま厳しく育てられ、恋愛経験ゼロのまま大人になってしまった。ようやく明かされた許嫁は上原財閥の御曹司の新。しかも、三十歳にして大手ゼネコンの専務を任されているという超エリート! 誰もが羨む相手なはずだけど、どうやら一筋縄ではいかない曲者みたい……お見合いの日、ひと目で恋に落ちたものの、恋愛初心者すぎてなかなか進展しない二人。とにかく新と恋愛したい愛子は思わずホテルに誘ってしまい……三時の紅茶が欠かせない曲者御曹司×「年齢=恋愛未経験」な箱入り令嬢の超絶不器用なラブストーリー!!

 上原(うえはら)新(しん)は書斎に呼ばれて、軽くドアをノックした。
 入れ、という厳しい口調を聞いて背筋を伸ばす。父の上原(うえはら)信玄(しんげん)は上原財閥の頭取になる。自然と、新も三十歳ながら会社を任されて、大手ゼネコンの専務をしている。
 仕事は順調、駅前開発に問題なし、ビルの計画に不手際なし、と頭を巡らせながら書斎に入った。信玄はにこりともせずに、新の目を見つめてきた。
 和服を好んで着ていて、髪の毛は白髪だが、綺麗に整えられていてまるで銀髪のようだ。
 七三にわけて、鋭い目つきで自分を見つめてくる。
「どうだ? 仕事は」
「はい、問題はありません」
「プライベートは?」
「問題はないです」
「じゃあ、そろそろ結婚にはいい頃合いだろう。許嫁がいることは知っていたな?」
 信玄の眉がひくんと動いた。
 新は微動だにせず、じっと様子を窺う。
 許嫁がいることは知っていたし、いずれ結婚することは分かっていた。
 三十歳、仕事も順調、そう考えてもタイミングを見計らっての提案だと言える。
「美墨(みすみ)愛子(あいこ)さん、でしたっけ?」
「そう、覚えていたか。彼女も大学を卒業して丁度良い年頃のお嬢さんになったからね」
「分かりました。いつ会えばいいでしょう」
「二週間後だ。もう一度訊くが、問題はないな?」
 信玄の言葉に、首を傾げた。不手際はないと報告したばかりだ。
 それに許嫁がいるのであれば、その人と結婚するのは当たり前だ。
 自分にとっても、家にとっても申し分ない人なのだろう。
 ただ、問題があるとすれば、新は結婚よりもまずは恋愛がしてみたいことにある。
 早急に結婚をと考えている信玄だ。恋がしたいなど、子供染みていることを考えていると笑われるだろう。
 でも、これまで本気の恋愛らしい経験もなく、それっぽく付き合っているように見せていた。その為に、身体の関係はあっても真剣に付き合ったことはなかった。
 身体を重ねることはあっても、恋や愛ということになると、自分には謎だった。
 結婚してしまったら、他の女性に現を抜かすことはできない。
 きちんと見極める為にも、恋がしたい。
「問題ないな?」
 信玄の苛立ちの言葉にはっとして答えた。
「問題ありません」
「しかし……。新。最近忙しいと聞いているが、身なりは園村(そのむら)くんにアドバイスを頼んだほうがいいな」
「はい。分かりました」
 園村という男は秘書課の室長で新の秘書だ。
 とても優秀で信玄の耳にもその仕事ぶりは届いている。
 そして新は、ばさあっと伸びた髪の毛を掻き上げる。
 前髪は目を覆い、父の前に出るからと梳かしたものの、伸びた髪の毛をひとつに束ねただけだった。
「しっかり園村くんのアドバイスを受けて、身綺麗にするように。頼むぞ」
「分かりました」
 新は深く頷いた。
 前髪の隙間から見える信玄の不安そうな眼差しは気になるが、園村がアドバイスをくれるのなら問題ない。
 最近仕事が忙しく、傍で働く女性もいないことから身なりを怠っていた。

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