夢中文庫

完璧一途な彼の溺愛にとかされまして

  • 作家北野ふゆ
  • イラストささおかえり
  • 販売日2020/06/30
  • 販売価格600円

千穂は、元カレに騙されてしまったことが原因で恋に臆病。ある日、千穂が店長を務めるアパレルショップに新任のMDがやってくる。美形なわりに気取らず、人懐っこくしかも有能と一見完璧な宮葉は、何故か最初から千穂に好意的。甘い言葉と視線に警戒心を抱いた千穂は、公私をきっちり分けて彼と接しようとするが、宮葉の方が一枚上手で気づけばプライベートでも連絡先を交換することに。『千穂さんも、僕を好きになって下さい』――無邪気にぶつけられる彼の熱い気持ちに、頑なだった千穂の心は次第にとかされはじめる。そんな宮葉の猛アタックには、実は理由があって……。

第一章 出会い
 柊(ひいらぎ)千穂(ちほ)は店のバックヤードに運び込まれた箱(パッキン)の山を前に、瞳を輝かせた。
 服や小物がぎっしり詰められている箱の数は、ざっと数えて五十を超えている。
 すでにショップに並べてある商品の補充分なら、手の空いているスタッフに検品と店出しを頼むのだが、今日入ってきたのは春物の新作だ。目前の箱の中には、千穂自ら展示会でピックアップした新商品が入っている。自然と緩む頬を引き締め、千穂はシャツの袖を肘まで捲った。
 送り状に記載されている店舗名と箱の数が合っているか確認した後、千穂は薄手の白手袋を嵌めた。ビニールに入った商品を素手で検品しようものなら、あっという間に手が荒れる。見た目が悪くなるだけでなく、出来たささくれが繊細な生地を傷めたりもする。アパレルショップで働く店員が指先までしっかりケアしているのは、商品を守る為でもあるのだ。
 まずは一番近くにあった箱を開け、納品伝票と中身の商品を照らし合わせる。バックヤードに持ち込んだ業務用のハンガーラックは、みるみるうちにビニールに包まれた商品で埋まっていった。
 中には展示会の時とは微妙に色味や丈の長さが変わっている服もある。それらをチェックしながら、千穂はボディに着せるコーディネイトや店内のディスプレイをイメージする。
 千穂が店長を務めるセレクトショップ『Choupinet(シュビネ)』は、大通りに面した路面店だ。道行く人の足を止め、店内へと誘導する鍵は、ショーウィンドウのディスプレイにある。
 来春のキーカラーで統一するのもいいし、雑貨と組み合わせてターゲット層が好みそうなライフスタイルを提案するのもいい。どのディスプレイが、千穂が仕入れた商品を一番輝かせるだろう。あれこれ考えながら、静まり返った薄暗いバックヤードの中で一人、黙々と作業をこなすこの時間を、千穂はとても大切にしていた。
 店内に流れる洒落たBGMも、さざめく客達の声も、バックヤードまでは届かない。明るい光に満ちた活気ある空間は千穂が目指すものでもあるが、たまにはこうして一人になりたくもなる。
「──店長、ちょっといいですか?」
 八つ目の箱に取り掛かったところで、スタッフの一人がスイングドアから顔を覗かせた。
「いいよ、どうしたの?」
 千穂は手を止め、屈めていた身を起こした。ずっと同じ姿勢を取っていたせいで、腰がすっかり強張っている。鈍い痛みに顔を顰めた千穂は、次の瞬間あ、と唇を開いた。
 スタッフの後ろから現れた青年を見て、数日前に届いたメールの内容を思い出したのだ。
「お仕事中、すみません。この度、こちらの担当になったMD(マーチャンダイザー)の宮葉(みやば)です」
 細身のスーツを隙なく着こなした長身の青年が、爽やかに微笑んで軽く会釈する。
「はじめまして!」
 千穂は慌てて背筋を伸ばし、ぺこりと頭を下げた。

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