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箱庭に咲く花~凶相の姫と永遠の恋人~

  • 作家こいなだ陽日
  • イラストЯui
  • 販売日2018/7/31
  • 販売価格500円

傾国の相を持つ姫として、辺境の古城に幽閉されているシビル。年配の使用人に囲まれて静かに暮らしていたが、ある日、若い騎士が派遣されてくることに。女性問題を起こしたという噂が気になるものの、シビルは彼に惹かれていく。そんな中、シビルの秘密が彼にばれてしまい……。

荒い海に面した断崖に、小さな古城がそびえ立つ。
 鉄製のものはすぐに錆びつき、冬になると凍えるような寒さに襲われるその城は、決して住みやすい環境ではない。
 そこは何代かに一度、必ず王家に生まれる傾国の相を持つ姫に与えられる城であった。
 シビル・イヤードは、イヤード王家の第三姫だ。
 傾国の相が見られたシビルは、物心がつく頃には辺境の古城にその身を移され、王城で過ごした記憶はほとんどない。
 シビルは十九歳で、王族ならばもう嫁いでもおかしくはない年だ。腰の下まで伸ばした金の髪はさらさらで、紫色の瞳は宝石のように美しい。
 しかし、凶相を持つシビルは、この古城で誰とも結婚することなく、一人で生涯を終える運命だ。
 辺鄙な古城に幽閉されている状態であるものの、王族としての高水準な生活は保障されており、シビルは己の境遇をそこまで悲観的には思っていない。
 毎日綺麗なドレスを着て、美味しいものが食べられる。城からは出られないけれど、シビルは己が十分恵まれている立場だと自覚していた。
 そんなシビルのこだわりは、花だ。
 毎日必ず香りのいい生花を耳の上に飾る。彼女の小さな耳はいつも花と髪で隠され、古城で働く者の中では、シビル付きのメイドしか彼女の耳を見たことがなかった。
 シビルがいつもと代わり映えのない朝を迎えたある日のこと、シビル付きのメイドであるニニが用意したのは、いつもより豪華なドレスだった。
 城の外に出られないシビルにとっては、着飾ることも楽しみの一つなので、綺麗なドレスを沢山持っているものの、今日のものは一段と豪華に見える。
「あら? 今日はどうしてこれなの?」
 シビルは小首を傾げてニニに訊ねた。
「今日は新しい騎士が派遣されてきますからね。本当は来週の予定だったのですが、早めに到着したようなので、今日顔合わせをすることになりました。何事も、早いほうがいいですからね」
「まあ、随分と早く着かれたのね」
 新しい騎士がこの古城に来るというのは知っていたが、まさか予定が一週間もずれるとは。
 しかし、シビルは忙しくないので、簡単に予定を合わせることができた。これが王城だったら、予定がぎっしり詰まっているので、そうはいかないだろう。
 ニニはドレスをいつもよりしっかりと着付けながら、シビルに言う。
「王都にはいられないとはいえ、シビル様は立派な王族であり、この古城の主なのです。舐められないように、今日は一番豪華な装いにしましょう」
「分かったわ」
 王都にいた頃の記憶がほとんどないので、王族がどれほどの威光を放っているのか、シビルは知らない。
 しかし、王族としての誇りがあるので、恥じない姿であるべきという気持ちは持っていた。
 ニニはシビルにドレスを着せた後、いつもより大人っぽく化粧をする。髪も綺麗に整えられ、香りの強い生花を耳元に添えられた。
 立派な姫ができあがったのを見て、ニニは満足そうに頷く。
「さあ、できました。新入りの騎士とは、三時に顔合わせがありますので」
「確か、若い人なのよね?」
「そうですね。私より若い人がこの城に来るのは初めてですね」
 そう言ったニニは四十二歳で、二人の子供がいる立派な母親でもある。そして、彼女の言葉通り、城で働く者の中で一番若いのもニニだった。
 城勤めにはある程度の身分が必要になるが、やはり人気があるのは王城だ。若いうちからこの辺境の古城に勤めたいという者はおらず、凶相の姫がいるという不吉さもあり、一線を退いた者が勤めることが多い。
 そして国境からもそう遠くないこの古城は、万が一でも落とされては困る。だから、かなりの数の騎士を配置していた。
 老いて体の動きが鈍ってきた騎士は、古城の警備を希望することが多いので、ここに駐在する騎士はみな年配の者である。若い騎士が来るなど、今回が初めてだ。

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