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貧乏令嬢の素敵な誤算~侯爵子息を誘惑するだけの計画でしたが!?~

  • 作家こいなだ陽日
  • イラスト稲垣のん
  • 販売日2019/02/26
  • 販売価格300円

男爵家の令嬢ベルと双子の弟は二人とも美形だが、とても貧乏。ある日、名門侯爵家の使者が男爵家にやってくる。使者いわく、侯爵家の子息エーヴェルトが、昔からの許嫁との婚約解消をほのめかして困っているとのこと。どうやら、貴族の間では恋愛結婚が流行しており、エーヴェルトとその許嫁は自由な恋愛をしたがっているらしい。そこで、ベルと双子の弟に、それぞれエーヴェルトと彼の許嫁にほどよく恋愛を経験させてから、姿を消して欲しいと依頼をしてきた。ベルたちはやむを得ず引き受けるが、ベルはエーヴェルトに必要以上に気に入られてしまったようで――!?

その男爵家の屋敷は大きく、遠くから見れば立派なものだった。
 しかし、いざ近づいてみると老朽化が酷く、塗装がはげている部分が目につく。正門は所々錆びていて、開けるたびにギィと醜い音が鳴った。
「ただいま」
 男爵家の令嬢であるベルが屋敷の中に入るが、誰の返事もなかった。
 無視されているわけではなく、お出迎えの使用人が誰も待機していないのだ。この屋敷には必要最低限しか使用人がおらず、この時間はそれぞれの持ち場で忙しく働いている。
 ベルが静まりかえった廊下を歩いて広間に向かうと、そこでは双子の弟であるステファンがくたびれたソファに座って新聞を読んでいた。
「おかえり、姉さん」
 ベルと同じ金髪碧眼の彼は、双子なだけあってよく似ている。睫も長く、二人とも美形の類いだった。
「ねえ、聞いてよ、すごいよ」
 ベルがソファに腰掛けるや否や、興奮した様子でステファンが話しかけてくる。
「どうしたの?」
「王太子が、村娘との婚約を正式に発表したんだって! しかも、彼女を正妻にするみたいだよ」
「ええっ? 庶民と?」
 驚いて、ベルは前のめりになる。
「そうだよ! 庶民を王太子の正妻に迎えるだなんて、よく大臣たちが許したよね。最近は貴族の純血主義も、古い考えだって流れになっているけど、まさか王族までそうなるなんて驚いたよ」
 ベルたちの国には、王族、貴族、庶民という身分の階級がある。ちなみに、ベルの家は男爵家なので、立派な貴族階級だ。
 貴族階級の者は、王族と貴族である自分たちの血を尊いとし、そこに庶民の血筋が混ざることをよく思わない。貴族は王族・貴族とのみ婚姻し、貴い血を繋いでいく『純血主義』という考えが深く根付いていた。
 だから、庶民との間の子供を跡取りにした貴族を『あそこは純血ではなくなった、庶民の血が混じった』として、厭う傾向がある。
 それでも、唯一産まれた跡取りが庶民である妾との子供だったり、庶民と恋に落ちる貴族というのも、長い歴史の中では出てくる。
 純血主義が根付いているといえ、貴族の血だけで紡がれている血筋の家は、今や貴族の中でも半分くらいだ。
 今後も、庶民の血が混じったいわば『純血ではない貴族』と婚姻を結ぶ家がでてくるだろうし、貴族だけの血統である純血の家は、少なくなっていくだろう。
 そんな中、古い考えだと思われていた王族が、純血ではない貴族どころか、庶民を妻に迎えるというのだ。これは驚くべきことである。
「すごいわ、まさに純愛よね」
「ちなみにその庶民の子、姉さんと同じ十八歳だって」
「あら、適齢期ね」
 ベルはため息をついた。
 この国の女性のほとんどは、十七から二十の間に結婚する。よって、ベルもそろそろ結婚を考える年だ。
 しかし、ベルは結婚を諦めている。
「まあ、私は結婚を諦めているけど」
 苦笑しながらも明るい声で言うと、ステファンが表情を曇らせた。
「姉さん……。僕のことは気にしないで、ちゃんと相手を探したほうがいいよ」
「駄目よ。とてもじゃないけど、今のうちの財政状況では持参金なんて用意できないもの」
 ベルは首を横に振る。
 実は、この男爵家はとても貧乏なのだ。だから建物の修繕ができずにボロボロのままだし、出迎えの使用人だっていない。
 それほど貧乏なのには、理由があった。
「無理してお金を作ろうとして、税金を上げるなんてできないわ……」
 ベルの家が管轄する男爵領は土地が痩せていて、作物が育ちづらい。領民から税金を徴収し、国に納めるのが領主である男爵家の役目であるが、国が指定してくる税率通りに徴収すると、たちまち領民たちは生活に困窮してしまうだろう。
 ベルの父親も、この土地では作物が育ちにくいと国に陳情しているが、そんなことを言うのは他の領主ではいないらしく、まともに取り合って貰えない。
 よって、ベルの家では領民から徴収する税金を法律よりも低く設定し、国に納める際にその差額を負担していた。
 それは、何代も前から続いている。

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