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有能秘書の逆転溺愛~甘く淫らなお仕置き~

  • 作家久保ちはろ
  • イラストマツモトミチ
  • 販売日2019/02/15
  • 販売価格400円

藤代コンツェルンの一族である朱美は、系列会社の社長として着任して以来、仕事に忙殺される日々。それでも順調に会社を成長させられたのは、有能な秘書、宮本のおかげだ。そんな彼に朱美はずっと密かな恋心と感謝の気持ちを抱いていた。なのに、取引先とのトラブルから朱美を守った彼は責任を取って会社を突然辞めてしまい……。ショックで深酒をした朱美は泥酔し、次に目をさますと見知らぬ部屋で手首を拘束されていた。混乱する朱美。すると宮本が現れ、今まで朱美に見せたことのない妖艶な笑みを浮かべて言った──「朱美さんには、どんなお仕置きがいいかな……」それから朱美は彼の甘い責め苦に身も心も蕩かされて……。


 都内のホテルのバンケットホールでは、立食パーティーに招待された客たちが、ブッフェ形式の料理を楽しんだり、ワイングラスを片手に歓談したりしていた。
 藤代(ふじしろ)朱美(あけみ)もしばらく歓談の輪にいたが、一人そっと外れると、ライトアップされた美しい中庭を眺めながらワインを一口飲んだ。フルーティで美味しい。あとでワインラベルを貰おうかと、思いつく。
 いつもなら気疲れの多い取引先のパーティーも、今夜はワインの味を楽しめるくらい、余裕のある自分に気づく。
 朱美は社長に就任してまだ二年だが、藤代コンツェルンの会長を父親にもつ彼女にとって、このような新興企業の祝賀パーティーなどは、幼い頃から家族で招待された経験もあり、今更珍しくもない。
 しかし、今夜のパーティーは特別だ。主催である株式会社「ラウム.Co」は家具のシェアリングサービスという全国でも新しいビジネスを打ち出し、そのインテリアの半分は朱美の会社で担う契約を交わしている。つまり、この新ビジネスの成功は、朱美の社長としての成功であると言っても過言ではない。
 しかも先ほど、このビジネスの事前登録開始以降、利用希望者は予想を大幅に上回っていると相手の秘書から聞かされ、気持ちはかなり高揚していた。
 朱美は大学卒業後、藤代コンツェルンの傘下であり兄の経営する輸入家具の会社に入社した。その六年後、兄が香港にある系列会社の取締役に就くタイミングで、社長の座を譲り受けた。
 学生時代からビジネススクールに通ったり、またアルバイトとして自社の売り場スタッフを経験したりと、頻繁に会社に出入りしていたこともあって、その実力を周囲に認められるようになっていた朱美は、役員会、株主総会でも異論なく、二十七歳の若さで社長着任となった。IT、金融業界などでは大学在学中に研究の延長で会社を興す学生もいる昨今、珍しいことではない。
 だがやはり、社長就任直後は「親の七光り」という言葉や、年上の役員たちからのプレッシャーに辛い思いをすることもあった。それを乗り越えてこの二年間順調に会社を運営してきたのだが、新プロジェクトの成功は会社のさらなる飛躍を約束するもので、自分も会社も着実に成長していると思うと感慨深い。
「藤代社長、楽しんでらっしゃいますか」
 振り向くと、今日のホスト役である「ラウム.Co」の代表、桜井(さくらい)慎二(しんじ)が隣に立っていた。すらりとした長身に、ライトグレーのスーツがよく似合っている。シャツは白ではなく紺色で、ノーネクタイ。そこに自分のスタイルを通す、実業家らしい遊び心が窺えた。
 桜井の生家はかなりの資産家らしいのだが、本人はそれを頼りにせず自分で資産や投資家を集め、今の会社を興したという。桜井からどことなく上品な雰囲気が漂うのは、成金ではなく本当のセレブ育ちであるからだろう。三十七歳、独身。趣味はヨットとワイン。朱美は最近、エコノミーサイトに載っていた彼のインタビューを読み流していた。
「ええ。初めてお会いする業界の方もいて、勉強になります。お料理もワインも美味しいですし。さすが桜井社長のパーティーですわ」
「そんな……。料理とワインは、ホテル側に少し助言しただけです。何しろこのパーティーは私たちの将来を祝うものですからね……」
 朱美が頷きながら得意のビジネススマイルを向けると、桜井は照れたように視線を泳がせた。
 朱美は、自分が誰もが振り向くほどの美人だと自惚れてはいない。しかし、父が大企業のトップということもあり、子供の頃から常に人前に出ることが多い環境にいて、自然と容姿や身だしなみには人一倍気をつけるようにしていた。そのせいか、社長就任直後に取材を受けた女性誌や新聞では朱美は常に「若き美人社長」と紹介されていた。
 もともと色素が薄く、手入れを怠らない肌は抜けるように白い。肩のあたりでゆるくウェーブを描く栗色の髪、母譲りのはっきりした二重の涼しげな目元、小さいが筋の通った鼻に、ぽってりした唇。学生の頃は、この唇を少し尖らせて上目遣いをしただけで、男女問わず同級生も教師でさえもすぐに心を許した。
「サービスのプロに助言ができるだけの知識をお持ちなんて、素晴らしいです。桜井社長はワインにお詳しいんですか?」
 朱美は話をつなげるために、インタビュー記事は読んでいないことにして、訊ねた。
「いや……。ワインは行きつけの店がありまして。僕の知識は全てそこのソムリエの受け売りですよ。そうだ、今夜のために用意したワインはもうお飲みになりましたか? 数少ないヴィンテージで、あちらのテーブルにあるのですが……」
 桜井の手が朱美の背中に回され、誘導されるままに一歩踏み出した時、「藤代社長」と後ろから声がかかった。

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