
イラスト緋月アイナ
「自信が持てないなら、俺が何度でも自信をつけさせてやる」──まじめで自分の身体に自信が持てない透子は人気絶頂のアーティスト、生田蓮のライブの最前列チケットがあたり、不安とドキドキの一夜を過ごす。翌日、派遣会社から蓮の所属事務所の事務員に指名されてしまって──。事務所の社長から恋愛禁止を宣言され、ファンであることを隠す決心をする。直後、蓮から「おまえ、どこかで俺と会ったことがあるか?」と聞かれ、とっさに嘘をついてしまう。だが、思いがけず蓮との距離が近づき、誰にも言えない秘密を持ってしまう。憧れの蓮に愛でられ、女性として花開いていく透子。しかし、臆病な透子は自分の気持ちを彼に伝えられなくて……
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待ち合わせ時間よりも少し早い時刻に、渋谷駅に到着した杉本透子(すぎもととおこ)は改札を出ると、すぐにお目当ての巨大広告が掲げられた場所に来ていた。
(蓮(れん)さんの広告があった! でも、写メを撮るのは奈津美(なつみ)ちゃんが来てからのほうがいいよね)
こんな人通りの多い場所で、上半身裸の挑発的な美貌の男性が映る広告を、スマートフォンのカメラで撮影するのは難しく、透子は待ち合わせをしている相手を待つことにする。
彼のファンの子が広告目当てで来ているだろうと思って、三十分早い電車に乗ったのに、期待は外れたらしい。
それでも透子にすれば、巨大広告に映る彼を見ることがなによりも幸せだった。
──REN IKUTA NEW ALBUM──
そう書かれている広告は、大人気カリスマロックアーティストの生田(いくた)蓮のニューアルバムとドームツアーを告知するポスターだった。
透子が中学生の頃に、テレビで歌っている蓮に一目で惹(ひ)きつけられて以来、憧れている人だ。
そんな透子も二十三歳となり、いまは派遣会社に勤めている。
そこで待ち合わせをしていた藤井(ふじい)奈津美が、透子に手を振っていることに気づく。
「透子、ごめん! って、蓮の広告を見るために早く来たな」
「奈津美ちゃん、広告の写メを撮ってもいい?」
「あんたはどこまで蓮が好きなのよ……。わかったから早く撮って行こう」
呆れたようにつぶやく奈津美は、透子の頬を両手でつまみ、にっこりと笑う。
高校に入って同じクラスになった奈津美とは、蓮を通じて親友になった。
「はぁ……、私も透子みたいに素直な性格だったら、かわいげもあるのに」
「私は奈津美ちゃんのような性格に憧れるけどな」
「蓮に恋してます! って、目を輝かせてる透子を見てると、素直になれない自分の性格がいやになってくる」
「そっ、そんな……恋してるなんて恐れ多いし、蓮さんに憧れてるだけだよ」
透子は男性との恋愛経験もないし、好きになった男性も蓮しかいない。
しかも、蓮に対しては憧れでしかないし、恋をしているとは言えるものではなかった。
「それより、チケットの見せ合いをしてから買い物へ行こうか?」
「うん!」
透子と奈津美はファンクラブに入会しているので、どちらかいい席のチケットで公演を見て、余ったチケットは奈津美のファン友達に譲ることになっている。
そのため、チケットが届くと恒例のように、二人でチケットの見せ合いをする。
──でも、もう少しだけここを離れたくない。
透子は蓮の広告を見上げながら、後ろ髪を引かれる思いで街中を歩きはじめた。
近くにあるカフェに着くと、ウエイトレスに注文してから、再び、窓から見える巨大広告を見る。
先ほどの場所からは少し離れてしまったが、それでも蓮が見えるだけで幸せだ。
「透子、そんな蓮ばかり見てないで、まずはチケット確認でしょ?」
「あっ、うん……」
からかうような奈津美の口調に、慌ててバッグから封筒を取り出し、奈津美にチケットを手渡す。
するとチケットの席を確認した奈津美は、驚愕(きようがく)した表情でチケットを見ていた。
「とっ、透子、自分で席を確認した?」
「しないでそのまま来たんだけど」
「透子のチケット、アリーナ席の最前列だよ!」
「ええっ! 嘘でしょう?」
驚いた顔をしている奈津美からチケットを受け取り、席を確認しただけで手が震えた。
最前列の、しかも本当に間近で蓮のライブを見られるらしい。
イラストnira.
カラダの関係から始まった二人。カラダを重ねる度に心が揺れて私は淳也さんを好きになってゆく。地味なOLの私が父親の借金返済のために会社に内緒で始めたアルバイトは交際クラブのコンパニオンだった。毎週決まって土曜日に現れる淳也さんは店の大切なお客様なのに気がつくと私は彼の事ばかりを考えている。ホテルの部屋のベッドで彼と肌を合わせている時だけは嫌な現実を忘れられる。気がつくとお金だけでは割り切れない感情を私は抱えていた。本気で好きになってはいけないと頭の中では理解しているつもりなのに心は乱れてカラダは彼を求めてしまう。彼は私のことをどう思っているのだろう。そんな事ばかりを考えてしまい……。
ご意見・ご感想
編集部
憧れの芸能人との密会ラブがここに!!
透子ちゃんの反応がいちいち可愛すぎですっ♪
高校時代からずっとファンだった蓮さんに見初められてしまった透子ちゃんの戸惑いがこちらにもビシビシ伝わってきます。
蓮さんのために一生懸命な彼女に萌え★
そしてそして、人気絶頂のアーティスト生田蓮様!!
もう男性の魅力全開でございますっ
オレ様かと思いきや、透子ちゃんへの優しい心遣いにキュン死確定ですo(≧▽≦)o
2016年4月19日 5:55 PM
黒羽緋翠
はじめまして! 作者の黒羽緋翠です。
夢中文庫様から4冊目となります作品となります。どうぞよろしくお願いいたします。
今回の作品は『憧れのアーティストとの秘密の恋』がテーマとなってます。
ずっと大好きだった憧れの蓮さんと思いがけず距離が近づいてしまう透子ちゃんのお話です。
とまどいながらも一生懸命恋をする透子ちゃんと一緒にドキドキしながら、蓮さんにたっぷり溺愛されていただけると幸いです!
よろしくお願いいたします。
2016年4月19日 9:22 PM