
イラスト小島ちな
電車通学に悩む女子大生・龍野小百合。目立たないようにといつも俯いて地味な格好の彼女に救いの手を差し伸べたのは、小百合が通う大学の准教授・四葉夏樹だった。小百合を守るために行き帰りのボディガードを引き受ける夏樹。彼のおかげで小百合の表情は明るく変化し始めるものの、相変わらず自分に自信を持てないまま。そこで夏樹が思いついたのは学園祭のミスコン! 小百合の『プリンセス化計画』だった。ドレスを纏う小百合、カメラマンの前でポーズをとる小百合……見守るうちに、確実に近づいていく二人の距離――。果たして地味子はプリンセスになれるのか!? 『ナイショ』を積み上げる二人が紡ぐ、キャンパスラブストーリー。
プロローグ
ぎゅうぎゅう詰めの電車というのは何度乗っても慣れない。
足の踏み場も怪しければ、つり革も手すりも掴まれない。そんな中でも立っていられるのは、他の乗客に挟まれているから。
混雑緩和を目的として『地下鉄新中央線』が新しく出来ようが駅と駅を結ぶバスが増便されようが、JRが国鉄と呼ばれていた時代から走っていた路線のユーザーはちっとも減っていない。
──ように、龍野小百合(たつのさゆり)には思える。
がたん、と電車がカーブを曲がった。このカーブが曲者(くせもの)だ。車内の揺れに合わせて、痴漢が体を寄せてくる。
もっとも痴漢以外の人たちも揺れに合わせて動くので、痴漢が押し流されて結果的に助かることもあるし、大きく揺れれば、さすがの痴漢たちもつり革や棒に掴まろうと咄嗟(とつさ)に動く。
(き、きたっ……)
小百合の体に、思わず力が入る。背後から、武骨な男の手が伸びてきたのだ。
その手は、小百合の胸のあたりを遠慮がちにまさぐった後、ぎゅっと掴(つか)んできた。
「っ……!」
力加減が下手なのか、痛い。
小百合の胸は、いわゆる巨乳と言われるサイズだ。小百合自身は小柄で華奢(きやしや)な体なのだが、どうしたわけか胸だけがどんどん大きくなっていく。
そのせいで、子供のころから嫌になるほど痴漢に遭遇してきたし、中学・高校でも男子に散々からかわれてきた。
大学も共学だが、ただし私服なのでの年中ボディラインの出ないゆったりした服、厚手の生地の服を着ることが出来た。これまでの教訓をフル活用して、出来る限り隙を見せないようにガードしている。
派手な格好はもちろんのこと年齢相応のお洒落(しやれ)もしない。出来る限り目立たないよう、地味にダサく見えるよう、努力をしている。
髪の毛も、黒髪を二つにわけて縛り、三つ編みにしている。
メイクも控えめ、黒縁メガネもかけているため、ついたあだ名が「委員長」。
そのおかげだろうか。前よりは痴漢被害が減ったものの、まだまだ件数は多い。
しかし今年は、時間割が悲惨だった。
よりによって電車が一番混む月曜日、その1限が必修の講義だった。
しかも「体育実技」なのだ。
大学二年生にもなって、まさか体育の実技があるとは思いもよらなかったが、週に一度の運動、これはこれで悪くない。
しかし着替える時間が限られているため、スカートとTシャツという比較的ラフな格好だ。
季節はこれからどんどん暑くなる。つまり、だんだん薄着になってくる。
そのため、月曜日はほぼ100パーセントの確率で痴漢に遭う。
しかも今日の痴漢は、一人ではなかった。
胸を揉(も)んでいる手の他に、スカートをするりと捲(めく)り上げ太ももを撫(な)でてくる手がある。
気持ちが悪いし、怖い。見知らぬ男に体を好き勝手に撫でまわされて、気持ちがいいはずはないのだ。
ご意見・ご感想
編集部
毎日の電車通学でほぼ100%痴漢に遭ってしまう小百合ちゃん、
地味子に徹して自分なりに防衛しているつもりだけど……
ってそれ逆効果ですよ~~~!!
と思わず声をあげそうになりつつ読み始めました(笑)
事情を知った熱血・夏樹センセは毎日小百合ちゃんの
ボディガードを買って出て……。
それだけで終わらないのが、いまどき珍しい熱血先生の夏樹さん!
小百合ちゃんを何とか前向きにしようと色々考えます。
本当にいい先生m(;∇;)m
そんなときに学際中開催されるミスコン。
これだ!とばかりに飛びつく夏樹センセは小百合ちゃんを
キャンパスクイーンにすべくナイショのプリンセス化計画を始動!
ナイショが増えるたびに縮まるふたりの距離にドッキドキです
ヘ(≧▽≦ヘ)
先生×生徒の恋の行方は?
キャンパスクイーンは誰の手に?
是非是非、お楽しみください~~
***
去年のキャンパスクイーンは実は……
知る人ぞ知る彼女でございますっ★
2016年7月12日 3:23 PM