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腹黒王子の歪な独占愛~悔しいけど、後輩に主導権を握られてます~

  • 作家南ひかり
  • イラスト炎かりよ
  • 販売日2019/10/16
  • 販売価格700円

営業成績一位を毎月キープする須藤マキ。キツめの見た目とクールで近寄りがたい印象で高嶺の花と言われているが、実は可愛いものが大好きで、連日お姫様カフェへ通っていた。外見に反するこの趣味をずっと隠し通してきたのだが――。「あれ? 須藤さん?」突如、店に現れたのは、王子様のような容姿で女性人気ナンバーワンの後輩、滝嶋千里。以前から猛アピールされ、冷たく接しても子犬のように懐いてくる彼との鉢合わせに焦るマキ。「このことは絶対誰にも言わないで」とお願いするが、なんと滝嶋の態度が急変。バラされたくなければ付き合ってと脅してきて……!? 狼な本性を表した滝嶋の、歪で一途な愛をぶつけられたマキは――?

第一章
 拍手と喝采。
 そんな光景とは反対に、月に一度の成績発表は重苦しい空気が漂う。
 普段はしかめっ面の部長がとびっきりの笑顔を浮かべて、同僚が惜しみもない拍手を送る。
「今月も一位は須藤さんだ。他の皆も見習うように」
 壁に張り出された営業成績表には、須藤(すどう)マキと自分の名がでかでかと掲げられている。長い黒髪を揺らして一歩前に出ると、部長から金一封をいただき、何度目か分からない定型文のような挨拶を語る。これほどまでに無駄な時間はないだろう。
「須藤さん! 今月も一位おめでとうございます!」
「……ありがとう」
「俺も早く須藤さんみたいになれるよう頑張りますね!」
 張り付いた笑みを浮かべる同僚たちの中で、ただひとりだけ目を輝かせて子犬のように尻尾を振る部下がいる。
 それがこの男──滝嶋(たきしま)だ。幼い頃はイギリスで育ち、一年前、総合商社である石切(いしきり)商事に入社した期待の新人。
 滝嶋が配属されてきた当時は、それこそ大事件でも起きたように女性社員がざわめいた。
 中性的な顔立ちをしており、色白で鼻筋も高い。外国の血が入っているようで瞳は少し色素が薄く、さらさらと揺れる茶色い髪は染めているわけではなく天然らしい。すらりと長い手足が伸びて、きっちりとスーツを着こなしている。
 まだ二十三歳。新人特有のフレッシュさだけでなく、人懐っこくて皆から可愛がられ、すっかり社内の王子様だ。女性社員の半数が彼を狙っているという噂まである。
 その滝嶋が、ことあるごとに私に絡んでくるのだ。普通、こんな素っ気なく返されたら一回で近寄らなくなるだろう。
 自分で言うのもなんだが、ただでさえ女性にしては高身長で威圧感があり、化粧も今どき流行りのナチュラルメイクとは言えない。部長からは目力だけで人を殺せるんじゃないかとまで言われ、飲み会が凍りついたこともあった。
 最近は滝嶋絡みで、他の女性社員からも嫉妬の目を向けられるようになり、須藤派と反対派で派閥までできているらしい。女性というのはつくづくトラブルと噂話が好きなものだ。深入りはしないように沈黙を貫いてはいるが、理不尽な毎日に小さくため息を漏らす。
 ──よし、今日も会いに行こう。
 月曜日の朝から自己嫌悪に陥っている場合ではない。私にはお金を稼がなければいけない理由があるのだ。
 そう、それは──。
「お帰りなさいませ、マキ姫様」
「夢実(ゆみ)ちゃんただいまあ……!」
 惜しみもなくあしらわれたフリルのメイド服に輝くほど眩しい笑顔。仕事のストレスなんて一気に吹き飛んで、きらきらと輝く夢実ちゃんに目を奪われる。
 新感覚のお姫様カフェ『レムナント』は、洋館を丸ごと改装した本格派のコンセプトカフェだ。どちらかというとカフェを通り越してレストランに近いかもしれない。
 そして私の推し、夢原(ゆめはら)夢実ちゃんは専属指名料がプラス二千円かかり、もはやキャバクラにも匹敵する金額なのだが、私の唯一の癒しでもあった。

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