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年下の求婚者は無垢な淑女を淫らに愛したい

  • 作家宮小路やえ
  • イラスト森原八鹿
  • 販売日2020/12/4
  • 販売価格300円

伯爵家の長女であるフィオナは十年前に両親を亡くして以来、六人の弟妹をひとりで養い、家のためだけに生きてきた。そんなフィオナにある日、公爵家の三男・ジェラルドとの結婚の話が舞い込む。しかしフィオナは二十六歳。対するジェラルドは二十三歳で、三歳も年下だ。それに身分だって違いすぎている。フィオナはこの縁談を断ろうとするのだが、ジェラルドから直接プロポーズをされ思わず頷いてしまう。結婚が決まってからも、フィオナはジェラルドの妻になることに引け目を感じるのだが、一方でジェラルドもフィオナに相応しい男になりたいと願っていた。そして迎えた初夜。ジェラルドの熱い想いが溢れ……もう、我慢が、できません──

プロローグ レディと呼ばれて
 煌びやかなシャンデリアの灯り、緩やかなワルツの調べ、並べられた見事な料理。
 今夜のアーデン侯爵主宰のパーティーに招かれた参列者達は、その輝かしさに見とれている。
 だが亡き伯爵の長女フィオナ・コネリーは、それらに何一つ目もくれなかった。
 父の友人という縁で末妹とともに招待されたフィオナには、役目があったのだ。
 若々しいピンク色のドレスをまとった十六歳の末妹は、今、アーデン侯爵の甥である同年代の青年とダンスを楽しんでいる。
 アーデン侯爵の一族は、王族や公爵家にも娘を嫁がせて縁を持っている。正式に婚約がまとまれば、この上ない良縁だ。
 フィオナはそれを、壁際で満足げに見守っていた。身にまとっているのは、オフホワイトを基調にした、マーメイドを思わせるラインで詰め襟のドレスだ。決して粗悪な品ではないが、もう五年以上着続けたため、流行遅れだ。
(よかった。これで安心した)
 侯爵の甥はいたく末妹を気に入った様子だった。ダンスを踊る前に、アーデン侯爵からも宜しくと言われた。
 引っ込み思案の末妹も、相手にダンスでリードしてもらうことで打ち解けた様子だった。
 二人の婚約は成立する。すでに四人の妹を無事嫁がせたフィオナは、経験則から確信していた。
 ほうっと、フィオナは胸を撫で下ろした。
(お父様、お母様。あとはギルバートの成人を待つだけです)
 手を組んで、故人である両親に心の中で告げる。
 二人が王都で事故死して十年。
 フィオナは今年で、二十六歳になった。
 五人の妹と、跡継ぎとして養子に迎えた義弟のギルバートを抱えて、唯一成人だった十六歳のフィオナは、家のために生きる決意をした。
 領地経営に、資産の売却。使用人の雇用調整。特技を活かして、代筆や裁縫で収入を得ることも忘れない。
 そしてまだ五歳のギルバートを十六歳まで育て、妹達を全員良家に嫁がせる。
 これらを、たった一人で担ってきた。
「ほら、あの方がそうよ」
「流行遅れどころか、もはやレトロ趣味ね」
「今夜も妹の付き人なのでしょう」
 自分よりも若い令嬢達が、くすくすと笑っている。囁き声だが、明らかにこちらの耳に入るように言っている。
 だが、フィオナはもう慣れてしまった。涼しい顔で、無視をする。
 若い彼女達には化石でも、一定の年齢以上、例えば主宰のアーデン侯爵夫妻のような人達には好評なのだ。
 末妹はダンスを踊り終えると、フィオナのいる壁際と反対側へ、侯爵の甥に導かれていった。
 人が集まって熱気がこもった室内が息苦しくて、フィオナは夜風に当たろうと思った。二人の近くには侯爵夫妻もいる。少しだけ、離れても問題ないだろう。
 ゆっくりと身体の向きを変えて、バルコニーへ行こうとした時だった。
「きゃっ!」
 小さな悲鳴があがった。フィオナではない。
 同時にパシャッと水が跳ねる音がした。
 フィオナは、胸元に冷たさを感じた。

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