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クールな優等生王子様は落ちこぼれ令嬢を特別扱いしすぎです

  • 作家宮永レン
  • イラスト文月マロ
  • 販売日2019/6/7
  • 販売価格300円

アンセルム王子への憧れと家族の生活のために魔法騎士団に入団することを願っているミシェル。なんとか王立ラグトゥルス魔法学校に入学するも、いつもドンビリで落ちこぼれ扱い。周囲は落第しないことに驚くほど。そんな時、ミシェルの憧れの王子がしばらく魔法学校に在籍することになった。彼の魔法技術は天才的で、魔法騎士団など不要と言い放つほどの実力の持ち主。落ちこぼれのミシェルなどは見下すような言動だったが、一生懸命学び、魔法騎士団に入団しようと頑張っている姿に胸打たれたのか、ミシェルの練習に付き合ってくれるようになる。夜の教室で、二人だけの秘密のレッスンを受けるミシェルの心臓はドキドキしっぱなしで――!

序章
 風が吹き、緩やかに波打つ草原は、まるで緑の大海原のようだった。その中を泳ぐように、カナリア色の長い髪を揺らしながら、一人の少女が全力で駆けていく。彼女の瞳には、空から地面に向かって瑠璃色の羽を広げて落ちてくる小鳥が映っていた。
 その小鳥が地面にぶつかる瞬間に、少女は右手を伸ばしていた。届く距離ではない。
(止まって!)
 彼女が念じた途端に、小鳥がわずかの間、宙に浮いた。まるで、見えない何かに包まれたようにふわりと下から体が持ち上がった。
「小鳥さん!」
 少女が両掌をすぼめて椀のような形にすると、瑠璃色の小鳥は彼女の手の中にぽとりと落ちた。
「しっかりして!」
 掌に収まった小鳥は、まだ温かかったが、力なく羽を動かすだけで飛び立つことも首をもたげることもできない様子だった。体のあちこちに抉られた無数の傷がつき、血を流している。
 少女は空を見上げて、獲物を狙うように旋回している黒い影──おそらくカラスの群れ──を睨みつけた。
「ひどいわ、こんなことするなんて……」
 カラスたちは小鳥の行方を見失ったのか、鋭い鳴き声を上げながら北の空へと飛んでいった。
 一方、小鳥は、手の中で動きを弱めていく。小さな丸い胸で呼吸をするのがやっとのようだ。
「だめ……。死んじゃだめ!!」
 目に涙をいっぱいに溜めて、少女は叫んだ。すると、体の内側から火が点いたように熱くなり、無我夢中でその熱を外へ放出した。熱は光になり、掌に乗った小鳥を包み込んだ。その閃光の眩しさに少女はきつく目を閉じる。
 次の瞬間、ぱさぱさっと小さな羽ばたく音と、くすぐったい感触が少女に伝わって、おそるおそる目を開いてみた。
「小鳥さん……」
 チチチ、と軽やかにさえずった小鳥は、瑠璃色の翼を広げて空に舞い上がる。それから、ゆっくりと少女の方へ降りてきて、くちばしを頬に擦りつけてきた。
「ありがとうって言ってるの?」
 くすっと笑った少女が涙を浮かべたまま立ち上がろうとすると、途端にぐらりと地面が揺れた。はじめ、何が起きたのかわからなかった。それから、何度も起き上がろうとしたが、ぐらぐらと景色が歪んでしまって、まともに体を起こすことができない。そのうち、指先が冷たくなってきて、体が震え始めた。冷や汗がどっと噴き出してきて、目の前がちかちかと暗くなり、青い鳥もどこかに行ってしまったのか、姿が見えなくなった。
「ミシェル!」
 母の声で名前を呼ばれ、返事をしようとした時には、すでにミシェルの意識はなくなっていた。
「過度な魔力の放出による副作用……」
 ベッドの傍らで、ミシェルの両親は口をそろえて医者の言葉を繰り返した。
「そう。どんな魔法を使用したのかまではわかりませんが、能力の限界を超えた力を一度に放つと、こんな風に全身に力が入らなくなり、高熱がしばらく続くのです」
 カナリア色の長い髪を枕に広げて、額の上には固く絞った手拭いが乗せられている。ミシェルは真っ赤な顔をして浅く速い呼吸を繰り返し、目を開ける様子はない。

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