
イラストルシヴィオ
助けに来てくれたとばかり思っていた双子の美形兄弟、鷺宮来栖と、弟の有珠…高校の体育館に設えられた放送室で、卒業間近の男子生徒たちに監禁され、乱暴される直前に飛び込んできてくれた生徒と教師の美緒子は、再び密室と化した冷たい部屋で一晩を明かすことに―寒さが三人を次第に近づけ、触れ合い、若い二匹の獣欲が同時に伸びる。そしてついに羞恥の壁を越えて!
「いやぁっ……!」
抑え付けられる手足。
伸びてくる腕。
放送室の冷たい床に押し付けられて、私の身体を何本もの少年たちの手が這い回る。
(信じられない、こんなこと―誰か助けて!)
「やめてぇっ!」
泣いても叫んでも私の願いは空しく、誰にも届かない―。
校庭には小雪がちらついている。
私は男子校の英語教師になって二年めの冬を迎えていた。
まだクラス担任は受け持っていなかったけれど学校にも慣れて、最近はなかなかうまくやれていると自信も付いてきたところだ。
「なぁに? 相談って」
運動部の練習を横目に、活気ある掛け声にかき消されないよう少し大きな声で私はそう聞いた。
バスケ部にバレー部、放課後の体育館は部活動の生徒で溢れている。私は副顧問を務める放送部の部長、多嶋君から体育館放送室へと呼び出されていた。
校舎内にある放送室とは別に、体育館には放送室が設えられている。ステージと館内全体を見渡せる、二階の一室だ。すぐ隣は廃材置き場になっていて、一般の生徒は滅多なことで近付かない場所だった。
放送室のドアを閉めると、急に生徒たちの声が遠のく。さすが防音が効いている。
室内には放送部員の生徒たちが数人集まっていた。みんな、卒業を控えた三年生の男の子たちだ。
「? どうしたの、一体―」
私のあとに続けて入ってきた多嶋くんが、カチャリと部屋の鍵を閉めた。
それを合図にしたように―。
「きゃっ……!」
男の子たちが一斉に私へ襲い掛かってきて、私は彼らに羽交い絞めにされてしまった。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。多数の手に床に引き倒されて初めて、私は自分がどういう状況に陥っているかに気付く。
―もしかしてこの子たち、私を襲おうとしているの?
信じられなかった。
どの生徒もみんな素直でいい子で、仲良く今までやってきたのに。
「う、嘘……嘘でしょ? 何の冗談?」
私は手足を掴まれ、床に抑え付けられながらみんなの顔を見渡した。
私の上に馬乗りになった多嶋君が、上擦った声で言う。
「せ、先生っ……! 俺たち、ずっと先生のことが好きだったんだ。もうすぐ卒業だから、だからっ……」
にきびの浮いた頬を興奮で真っ赤に上気させて、彼は私の首元へ顔を埋めた。
「い、いやぁっ……やめてぇ!」
厚い唇でむちゅっと首筋に吸い付かれて、ぞっと寒気が走る。
(うそ……ほ、本気なの……?)
イラストyos
幼い頃に父を亡くし、継母に虐げられる生活を送ってきた伯爵令嬢フィオーナ。つらい日々を過ごすうち、感情が表に出なくなり、生来の美貌も相まって『氷姫』とあだ名されるようになった。そんな彼女に、継母が結婚相手を見つけてくる。だが、その相手は六十代の好色な老人……。絶望を抱きながら嫁ぐことになったフィオーナだが、実際に結婚することになったのは、優しげな風貌の青年侯爵ウォルトだった! ウォルトや使用人たちの優しさにふれ、これまでと違う穏やかな日々を過ごすフィオーナ。徐々に感情を取り戻してきた彼女に、ウォルトは「君を絶対に妻にしたかった」と熱烈な告白をしてきて……!?