夢中文庫

捕らわれた巫女は冷酷軍人に執愛される

  • 作家水守真子
  • イラスト蝶野飛沫
  • 販売日2019/8/21
  • 販売価格800円

元公爵令嬢で巫女となったタビナは神託による予知の力で人々を支えていたのだが、突然、精悍な面持ちの将官・ディクソンが『国を欺く神託をした』という罪でタビナを捕らえに現れる。身に覚えはないが、どこか敵意が感じられないディクソンに抗わず、神殿を守るため王城へと向かうタビナ。そこに王の姿はなく、待ち構えていたのはディクソンの父である宰相だった。「巫女の力が無くなるまで穢し続けろ」とタビナの目の前で宰相はディクソンに命じるのだが、けして無理強いせず、優しく熱い視線を向けてくるディクソンに胸は高鳴り、彼を求めてしまうタビナ。しかし巫女の力で観えてしまったディクソンの関わる過去の光景に衝撃を受けて──

◇1
 レガスピィ神殿は女神を祀(まつ)るヨルムレル王国で最も古く格式ある神殿だ。
 王国建立よりも古いという説もあり、国内のみならず国外からも信仰の対象になっている。そのため、朝早くから開く礼拝堂に祈りを捧げに来る人も多い。
 故に、この神殿唯一の神託による『予知』ができる巫女、タビナ・ディヴィ・ロジャースの朝はとても早かった。
 早朝礼拝の鐘の音がごぉん……と辺りに響き渡り、その音でタビナはまだ薄暗い部屋で硬い寝台から身を起こす。
 髪を梳き、黄桃色の長い髪を器用に縄編みし束ねまとめながら、レガスピィ神殿の巫女へと気持ちを切り替えていくのだ。
 輝くように美しいと賞賛された髪を背に波打たせることはもう無い。既婚女性のように髪をきっちりと結う理由は、神との婚姻を意味している。
 質素な白い衣装を纏うと部屋を静かに出て、神殿の奥にある湧き水の泉で身を清めた。水に肌を刺すような冷たさは無いが、出れば外気で冷やされた肌は粟立つ。
 濡れたまま最奥にある、こぢんまりとした礼拝場で祈りを捧るのが、天気も気温も関係なく毎日続く日課だ。
 濡れた布が肌に貼り付くことを気持ち悪いと感じたのはいつだっただろう。今は祈りに集中することで気にならなくなった。
 ……今日で三年目。
 タビナは祈りの為に閉じていた目を開く。
 神託が下ったと神殿から突然の迎えがきたのは社交界デビューの前日。
 巫女の地位は王家にも匹敵しながら王権と全く別の所にあった。そのせいで、ヨルムレル王国の五大公爵家の一つ、ロジャース家の当主の父親の抗議も無視される。
 公爵家の娘であるタビナはデビューも果たせぬままに、あの日から巫女としての生活を送る事となった。
 再び目を閉じて祈りを続けようとするが、いろいろな思いが交錯して集中ができない。
 もうすぐ神託や慈悲を貰いにくる者を受け付ける接遇係がタビナを呼びに来る。その前に祈りを終わらせて濡れた服を着替えなければならない。
 タビナは溜息を吐くと組合わせていた両手を解いた。
 集中できない時は『何か』が起こる前触れであることが多い。今日もつつがなく一日が終わるように願いながら、微笑みを湛えるレガスピィの銅像を見上げた時、礼拝堂の扉が荒々しく開いた。
「タビナ・ディヴィ・ロジャース」
 鼓膜を震わす魅惑的な低い声色に親しみの感情は無かった。それなのに、久しぶりに呼ばれた名前が懐かしくて、タビナは『巫女』ではなく『タビナ』として、その方向を向いてしまう。
 黒曜石のように黒い目を冷たく光らせた男が射る視線をこちらに向けていた。均整の取れた長身は筋肉質で、近衛隊の群青の軍服に赤いマントが眩しいほどに似合っている。肩にあるエポレットを見れば将官であることがわかった。
「……」
 王直属であり王家を守るという役目を負った近衛将校がなぜここにいるのか、というタビナの混乱を無視して、男は丁寧な口調で問いかけてくる。

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