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プロポーズから始めよう~俺様御曹司の一途な初恋~

  • 作家桃城猫緒
  • イラスト逆月酒乱
  • 販売日2019/05/15
  • 販売価格500円

エステティシャンとして働いている陽菜は、仕事も不調なうえ恋人に四度も浮気されるという冴えない日々を送っていた。そんなある日、恋人と修羅場を迎えているとスーツ姿の高身長イケメンが突然割って入ってきて、なんと陽菜にいきなりのプロポーズ!謎のイケメンの正体は十五年前に行方不明になった、仲のいい幼なじみの螢だった。再会した螢は超一流ホテルを経営する社長になっており、子供の頃に交わした結婚の約束を果たすためずっと陽菜を探し求めていたのだという。十五年ぶりの再会にも関わらず熱烈に溺愛され陽菜は戸惑うものの、螢の一途な想いにやがて心惹かれだす。けれど陽菜が幸せになることを許せない元カレがある企みをして…。

プロローグ
 東京、丸(まる)の内(うち)。
 大企業のビルが連なるオフィス街は、春にしては珍しいほどの嵐に見舞われていた。
 そんな中、国内トップクラスのホテル経営会社、インペリアル鏑木(かぶらぎ)ホテル株式会社の最上階では、若き社長が尋常ではない喜びの声をあげていた。
「本当か、三山(みやま)!? ほんっとうに間違いないんだな!?」
 壁一面を瞬間調光ガラスで覆われた百平米は有ろうかという広い社長室にいるのは、社長である鏑木螢(けい)とその秘書の三山、そしてふたりの様子を眺めるように巨大な水槽で泳ぐアロワナだけだった。
「はい、私も直接この目で確認してまいりました。──志田(しだ)陽菜(はるな)、二十五歳に間違いありません」
 三山の言葉に、螢はしばらく奇跡を目の当たりにしたように硬直し、そのあと両手でこぶしを握り込んで感激に打ち震えた。
「……った……、やったあ! ついに見つけたぞ、陽菜!! やったあ!」
 そのあまりの喜びように、螢の第一秘書である三山は、驚きで密かに後ずさる。
 大学卒業と同時に経営陣の椅子に座った螢に仕えてもう五年になるが、いつもどことなく冷めている彼が、こんなに感情を露わにし子供のように破顔をしているのを初めて見た。
「よくやった! よくやったぞ、三山! 調査会社には約束の二倍の報酬を払ってやれ」
 まるで親友のようにフレンドリーに肩を叩いてくる螢に内心慄きながら、三山はコホンと小さく咳払いをし調査書の入った封筒を差し出す。
「こちらが志田様の現在の写真と住居、それから勤めている会社になります」
 それをひったくるように奪い取って、螢は逸る気持ちのまま中の書類を出した。
 隠し撮りと思われる写真には、ひとりの女性が写っている。年齢は二十代半ばぐらい、ストレートのショートボブに柔らかな顔立ちの女性だ。肌は白く、ほんのりと桜色をした頬が愛らしいけれど、目鼻立ちは普通で、スタイルやファッションも含め平凡としかいいようがない。
 けれど螢はその写真を感激に満ちた瞳で眺め、「……陽菜だ……」と感嘆を籠めて呟いた。
 そして写真をしばしうっとりと眺めてから、他の書類に目を通し始めた。
「──東京都、文京(ぶんきょう)区……ん? この会社って……」
「はい。灯台下暗しとはよく言ったものです。私も驚きましたが、おかげで以降の調査がスムーズにいきました」
「マジか……。それで三年も手掛かりが掴めなかったなんて、今までの調査会社はどんだけ無能だったんだ。まあ、いい。とにかく見つかったんだ。今は陽菜に会うことが先決だ」
 そう言って確認した書類を封筒に押し戻した螢に、三山は少し口ごもりながら眉根を寄せる。
「……社長。大変申し上げにくいのですが、調査会社の報告によると……その、志田様には半年前より交際中の男性がいるとのことです。なので……」
「だからどうした?」
 言いにくそうに伝えた三山の言葉を、螢はあっさりと一刀両断した。
 そして鍵のかかったデスクの引き出しを開けると、中からベルベットのリングケースを取り出し口角を上げる。
「何も問題ない。居場所が見つかったなら陽菜はもう俺のものだ。返してもらうだけさ」
 開いたリングケースの中には、眩い輝きのダイヤがついた、まごうことなきエンゲージリング。内側に刻まれた『DEAR H』の刻印を見て、螢は満足そうにひとり頷いた。
「三山。今夜だ。仕事が終わり次第、陽菜を迎えに行く」
 リングケースを手に収め自信たっぷりに微笑む螢の後ろで、窓ガラス越しに雷が光った。
 丸の内の空は大粒の雨をまき散らし、強風に乗せて水滴を窓に叩きつけている。
 不穏さ漂う光景をバックにエンゲージリングを持つ螢の姿は妖しい雰囲気に溢れていて、三山は彼の手にしているリングケースにずっしりと重い愛が詰まっているように見えた。

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