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麗しき腹黒狡猾公爵様は初心な黒薔薇姫に策略をめぐらせる

  • 作家群田景
  • イラストまりきち
  • 販売日2019/7/23
  • 販売価格400円

持ちあがる縁談がことごとくうまくいかず、いつしか魔性の女を意味する「黒薔薇姫」と称されるようになったブリギット。すっかり引き籠もりになったブリギットは、公爵家の嫡男で六歳年下の幼なじみヴィルに女性の接し方を指南することに。ヴィルとは幼い頃「姉と弟」と親しみ合った仲だが、会うのは久しぶり。すっかり成長したヴィル。それなのに中身は幼い頃のまま。相変わらず甘えてきた挙句にお昼寝と称して一緒に寝ると言い出す始末。そして気がついたら着衣が乱れ、柔肌にヴィルの柔らかな唇の感触が。寝ぼけて? そう思って黙認していたら、ヴィルの寝ぼけ行動はエスカレートして……これ以上はダメ! 躰が反応しちゃう!

 今よりずっと昔、大人になったら素晴らしい王子様と結ばれて幸せなお姫様になれるのだと無邪気に信じていられていた頃、ブリギットの世界は輝いていた。
 花が咲き乱れる春の庭でのガーデンパーティー、秋になれば鮮やかに色づく森で散策、冬には長い夜を愉しむ暖炉に甘いお菓子と少し苦いココア。
 ことさら素晴らしいのは夏。湖の見える別荘地での毎日は、退屈なんて言葉を忘れてしまう。
 楽しかった記憶が子供の頃のものばかりなことにブリギットは重くため息をつき、馬車の窓から流れゆく初夏の風景を眺めていた。
 シューリヒト伯爵家の令嬢であるブリギット・ノイヴィートには、不名誉なあだ名がいくつかある。
 災厄の黒薔薇姫、男殺しの毒婦、バンパイアガール、サキュバス令嬢などなど。これほどに不吉で不名誉なあだ名を付けられるには訳がある。
 黒にも近いダークブラウンの艶やかな巻き毛と、透き通る白い肌。意志の強そうなきりりとした眉の下、冴え冴えとした青玉(サファイア)の瞳は猫の様に吊り上がり、たっぷりと長い睫毛に縁どられている。スッと通った鼻筋と、くちづけを誘うような紅くぽってりとした唇。それらが整然と配置された華やかな美貌。彼女の美しいたたずまいからは、由緒正しい家柄と知性に裏打ちされた高貴さが醸し出されていた。
 しかし派手派手しい外面とは反対に、ブリギットは根が小心で生真面目な性格である。小心者のため、美貌や家柄を鼻にかけ威張り散らすことなどできるわけもなく、茶会や夜会でも極力目立った行動や発言はせず、伯爵令嬢としての体裁が整う程度の貴族らしい振る舞いをすることだけに腐心してきた。感情が表情に出にくい性質も功を奏し、内心の焦りや不安などを悟られにくく、波風立てることなく埋没して過ごすことに当初は成功していた。
 だがブリギットの美貌が評判になってしまうと、その控えめな態度も歳に似合わぬ落ち着きと風格と見做され、彼女の意図とは真逆に社交界の輝かしい花として注目を集めるようになっていく。
 やがて事態は一変する。香り高く美しい花には蜜蜂が群がるように、ブリギットの周りには当然のように紳士が集い、彼女の望んだ平穏は遠のき騒々しく熱心な求愛がなされる。
 未婚の貴族の娘が夜会に出る目的は、より良い家柄の貴族の男性との婚姻を目指す人脈作りと言っても過言ではない。ブリギットが十六歳になる頃には侯爵家の長男から求婚され、玉の輿とも言ってよい婚約が成立した。ブリギットの狙いとは別の角度となっていたが、彼女の社交界での働きは見事成功を収め、家族皆が喜んだものだ。──この時までは。
 婚約披露のパーティーの招待状を送り、宴の支度に忙しない頃に事件が起きる。婚約者である侯爵家の長男に私生児がいる事が発覚したのだ。いずれ結婚してやると誑かされ、私生児を産んだ女性がブリギットとの婚約に異を唱えて訴えを起こした。しかも一人や二人ではないというから大騒ぎとなる。
 揉めに揉めた末、ほぼ公表した婚約を破棄。年若い娘にとって大変ショックな出来事ではあったが、だからと言って立ち止まれないのが伯爵家というタイトルを背負うブリギットである。婚約破棄後も毅然と頭を上げ夜会に参加し、同情半分野次馬半分の慰めの言葉にも笑顔で対応して、以前同様に振る舞いを続けた。

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