夢中文庫

マッチョ嫌いの令嬢は引きこもりたいのに幼なじみの騎士が許してくれません!

  • 作家長野雪
  • イラスト堀田ろも
  • 販売日2020/1/24
  • 販売価格700円

「手ぇ離したら、お前逃げるだろ?」「当たり前じゃない!」――エルサは『呪符づくり』を趣味兼仕事として、とある事情により必要最低限の外出しかしない引きこもり令嬢。そんな彼女に密かに思いを寄せ、なにかと外へ連れ出そうとする幼馴染の騎士ルディ。ところが、エルサは……ルディの〝体型〟が苦手だった。苦手視されている自覚から思いを伝えられないルディだったが、ある日、細身の同僚騎士がエルサをデートに誘ったと聞き焦る……! しかしライバルには別の思惑があって……?

 酒精の匂いの立ち込める部屋の隅で、少女は身体をこれ以上は無理なほど小さく縮めて震えていた。
 部屋の中央では、鍛え上げられた身体を持つ男たち五、六人が大きな声で笑いながら酒の入った瓶を煽り、口々に今回の仕事の成功を祝っている。
「随分と簡単にいきやしたね」
「自分が狙われるなんて露ほども思ってないお貴族様なんて、こんなもんだろ」
「違ぇねぇ」
 がはは、と大声を上げて笑う男たちとは対照的に、少女は自分自身の気配を消すように、呼吸すら密やかだ。だが粗野な男たちの中にあって異色な少女はどうあっても目立つ。今も男たちの一人が下卑た視線を少女に向けていた。
「せっかくだから、味見してぇな」
「阿呆。あれをどう使うか知らされてねぇんだ。下手なことすると、こっちの首が絞まるぞ」
「だってよぉ、ここんとこ女っ気がなかったし」
「たんまり金が入ったら、娼館でも何でも行けるだろうよ。焦るな焦るな」
 そんな会話を聞いて青ざめ震える少女に一人が気付き、指差してゲラゲラと笑い始めた。酒が回っているせいもあるのだろう。その笑いは男たち全員に伝播し、余計に脅えた少女は今にも気絶してしまいそうなほどに顔色を悪くさせていく。
「悪いな、お嬢ちゃん。恨むなら貴族の家に生まれた自分の運命を恨みな」
 少女はもう何も聞きたくないとばかりに、両耳を押さえて俯いた。
「それにしてもよぉ、なんで『攫え』なんて仕事が来たんだ?」
「下位貴族風情がお偉いさんの目に留まったのが許せねぇんだとよ。オレらにすりゃ貴族に下位も上位もねぇと思うけどな」
「まぁ、何にしろ、お貴族様のよく分からねぇ縄張り争いのおかげで、こんな楽な仕事にたんまりと金が入るんだ。御の字だろうが」
 大口を開けて笑って、酒と肴を食い散らかす男たちは、自分たちがいかに危うい橋を渡っているのか気付いていない。既に破滅の足音はすぐ傍まで来ていた。
 王都の中でも第五区と呼ばれるこの区画は、食い詰めて夜逃げした者も少なくはなく、その空き家にゴロツキが勝手に居着くなどして治安は悪くなる一方だった。ここいら一帯をスラムと呼ぶ者さえいる。彼らのように汚れ仕事に手を出す者たちは、一時しのぎだったはずのこの場所に根を下ろし、仲間を増やしていく。さすがに見過ごせない規模になったこの場所に、王都の治安を守る騎士団が対策に乗り出しているという情報も、残念ながら彼らは知りえない。
 現に、今、とある貴族の令嬢を誘拐した彼らの拠点の周囲は、騎士たちによって包囲されつつあった。第五区に住む者の中には、騎士団にパイプを持ち、情報を売っている者もいる。今回も、明らかに場違いな少女を担いで移動するところを、ばっちり見られていたのだ。

オススメ書籍

専属オトメは年下御曹司に溺愛されて~オシゴト中の誘惑は禁止です!?~

著者黒羽緋翠
イラストヤミ香

「恋をしたことがないなら、俺に恋をすればいいだろう」 まじめな性格ゆえに29歳になっても恋愛をしたことがないホテルコンシェルジュの羽菜は、叔母からしきりに薦められているお見合い話を断れずにいた。そんなある日、政財界の大物を父に持つロイヤルスイートに宿泊するお客様の藤堂達央から気に入られて彼の専属コンシェルジュにされてしまう!? 4歳も年下で経験豊富な達央に翻弄されながらも羽菜を甘やかしてくる彼に惹かれていく。だが、お客様に恋愛感情を持つことなど許されない……。そんな中、叔母が見合い相手を職場まで連れてきて、強引に羽菜の勤めているホテルでのお見合いを決めてしまい……?

この作品の詳細はこちら