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お嬢様は初恋の騎士を落としたい~既成事実をつくってみせますわ!~

  • 作家夏目みや
  • イラスト仁藤あかね
  • 販売日2020/12/15
  • 販売価格700円

「ルドルフ様と既成事実を狙うのよ!」──侯爵令嬢のフィーリアのもとに届く、嫌がらせめいた手紙の犯人を捕らえるため、騎士のルドルフはフィーリアと恋仲を演じるよう命じられる。ルドルフはあくまで任務としてフィーリアを守り犯人を突き止めようとするが、一方でフィーリアは密かに思いを寄せるルドルフが恋人役となったことに大喜び! 手紙のことなどそっちのけで、犯人が捕まるまでにどうにかルドルフを落とそうと、あの手この手で彼の心を射止めようとするのだが……「ルドルフ様のお部屋に今夜、しのびこむのよ!」──大好きなルドルフに振り向いてもらうため、斜め方向に奮闘するフィーリア。一心不乱に突き進む、その恋の結末は?

「ルドルフ。お前に一つ、頼みがある」
 豪華な調度品に囲まれた広い部屋で、強面で知られている王宮騎士団長オルスターは重い口を開いた。
「はい」
 オルスターの部下であるルドルフ・バートラムは頭を下げたあと、尊敬する騎士団長の言葉を聞き逃すまいと、顔を上げた。
「私の娘、フィーリアと恋仲の役を演じて欲しい」
「恋人役……ですか」
 いきなり予想もしなかった申し出を聞き、日頃は冷静なルドルフもさすがにこの時ばかりは狼狽し、表情を変えた。
 部下の反応を想定内だと言わんばかりに、オルスターは自身の立派な髭をひとなでするとうなずいた。そして部屋の隅に目で合図を送った。
 ルドルフはその時初めて、部屋に自分とオルスター以外の人物がいたと知る。
 本棚の陰から姿を現し、ゆっくりと近づいてきたのは一人の女性。
 長くウェーブのかかった金の髪に、ぱっちりとした青い瞳。シミ一つない白く透明感のある肌、赤く色づいた小さな唇。華奢だが女性らしい丸みを帯びた体つき。
 襟と袖口に繊細なレースがあしらわれた涼しげな印象を受ける淡い水色のドレスを着用し、立ち姿にも気品がある。
 ルドルフはその美しい女性を前にして、驚きで目を見開いた。
(彼女は──)
 フィーリア・オルダン。
 彼女の父オルスターは王宮騎士団長として、騎士達の統括をしている。すべての騎士の頂点に立つ存在であり、剣の腕前はもちろんのこと、豪快な性格と人を惹きつける魅力を持つオルスターは部下達から慕われていた。無論、ルドルフとて例外ではない。
 彼が大切にしている一人娘。それこそが、フィーリアだった。
 その美しい姿は多くの男性を魅了し、『オルダン家の秘宝』とまで言われていた。
 普段は屋敷の奥でひっそりと過ごしていると聞く。父親であるオルスターから、まるで宝物のように大切にしまわれているからか、いつしかそう呼ばれるようになった。
 ルドルフは若手の中でも出世頭。長身で長めの黒髪、キリリとした涼しげな目元を持つルドルフは、騎士の中でも美形だった。だが、性格は極めて真面目で寡黙であり、余計なことは口にしない。街を歩けばすれ違う女性が頬を染めるほどの容姿であっても、女性関係の浮いた話はない。
 普通、上司にあたるオルスターからこのような申し出があれば、並みの男なら舞い上がってしまうだろう。だが、ルドルフは努めて冷静だった。
 王宮騎士団長オルスターは娘を溺愛していると、騎士達の誰もが知っている事実だ。それがなぜ、このようなことを言い出すのか。よほどの事情があるのだろうと悟ったルドルフは身を引き締めた。
 ルドルフも貴族の端くれとはいえ、侯爵家にあたるオルダン家とは格が違う。
 オルダン家の秘宝、もといフィーリアはルドルフに近づくと、ドレスの裾を持ち、そっと頭を垂れた。
「フィーリア・オルダンですわ」
「ルドルフ・バートラムです」
 言葉を交わすと、彼女の可愛らしい声が若干硬く感じられた。だが、それも無理はない。

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