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情熱に満ちた魔法使いは失恋令嬢を輝かせる

  • 作家猫屋ちゃき
  • イラスト乃里やな
  • 販売日2018/09/25
  • 販売価格500円

婚約破棄された伯爵令嬢・オーレリアはある夜会で魔法使いの青年実業家・ギディオンと出会う。彼も自分を失恋令嬢だと笑いにきたのかと警戒するものの、ギディオンから「あなたが魅力のある、輝く女性なんだと喧伝したいんだ」と口説かれ、オーレリアは彼の会社で取り扱う魔法の美髪剤の広告モデルを引き受けることに。『痛みを輝きに』──その謳い文句とオーレリアの広告写真で商品は大好評となり、失恋令嬢から話題の人として人々の関心を集めるようになる。ふたりは自然と親しくなり想いを深めあっていくなか、オーレリアの父は、貴族ではないギディオンとの付き合いにはいい顔をしなかったのだが……。

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1、失恋令嬢オーレリアと魔法使いギディオン
「このままではあなたは、恋に破れた負け犬だ」
 目の前の青年にそんな失礼なことを言われ、オーレリアは思わず歯ぎしりしたくなった。
 オーレリアが良家の子女ではなく、なおかつここが夜会の会場でなければ、歯ぎしりといわず舌打ちと共に悪態のひとつやふたつ吐くことができただろう。
 けれども、オーレリアは伯爵令嬢であるし、今はとある侯爵夫人主催の晩餐会の真っ只中だ。
 だから仕方なく、悔しく腹立たしい気持ちを上品な笑みの下に押し隠した。
 そして、この不愉快な青年とのやりとりからどう逃れたものかと思案した。
 オーレリアはその日はもともと、夜会になど出たくなかったのだ。
 その日だけでなく、しばらくの間は人が多く集まる場所からは遠ざかり、静かにしていたいと思っていた。
 そうはいっても立場がそれを許さないから、無難な微笑みを浮かべて晩餐をしのぎ、応接室に移動してからは親しい人と言葉を交わして過ごしていた。
 とあることが原因で、オーレリアは今、本調子ではない。精神的にも、立場的にも。
 だからオーレリアを遠巻きに好奇の目で見る人たちもいれば、ヒソヒソと話題にする者もいる。
 それでもオーレリアは令嬢として堂々としていたし、顔見知りの親切な人たちは皆、オーレリアを気遣って声をかけてくれた。
 お茶会や狩りへのお誘い、観劇の感想、近々開催される人気デザイナーの新作発表会への期待など、当たり障りのない話題だ。でも、今はそういった中身のない、誰も傷つかない会話がオーレリアには望ましかった。
 社交の場に出ていくのは憂鬱だけれど、そういった会話を交わすことで少しずつ気持ちを立て直すことができていたのだ。
 それなのに、ある人物が声をかけてきたことで気分は台無しになってしまった。
「はじめまして、レディ・オーレリア」
「あなたは……ウィンスレットさんとおっしゃったかしら。はじめまして」
 顔見知りとの会話が途切れ、オーレリアがひとりになったところを見計らって、その人物は声をかけてきた。
 魔法学校を卒業し、魔法絡みの様々な商品を扱う商社を営む青年実業家──それが、晩餐の席で聞かされたこのギディオン・ウィンスレットという青年の肩書きだった。
 時代は変わり、こういった貴族の集まりに新興の富裕層が参加することも増えてきている。それ自体には、オーレリアは何も思っていない。しかし、その場に相応しい慣習や作法を身に着けていない人を相手にすると、戸惑ってしまう。
「あなたとお話がしてみたかったんです」
「まあ。そうなのですか」
 爽やかな笑みを浮かべるギディオンに愛想よく答えながら、オーレリアは内心では戸惑い、怒りに似た感情すら抱いていた。
(話をしたいのなら、普通はどなたか私の知り合いを伴ってくるべきよ。どうして初対面なのに、いきなり声をかけられなければならないの。この人も、私のことを軽んじているのかしら)
 初対面でも女性同士ならともかく、男性が女性に声をかけるのなら、その女性の知り合いを介して話しかけるきっかけを掴むのが一般的だ。
 だから、こうして話しかけられて戸惑うと同時に、ギディオンが近づいてきたのはオーレリアの抱える事情を面白がってのことなのではないかと警戒した。
「そういえば、アッカーソン卿の結婚式には招待されているんですか?」
「ええ」
 笑顔で尋ねてくるギディオンに、オーレリアの疑念は確信に変わった。
「出席するんですか?」
「ええ。……あなた、ロメオのお知り合いかしら?」
 にこやかな笑みを浮かべながらも、オーレリアはギディオンに最大限の警戒心を向けた。
 初対面で不躾に話しかけてきた上にロメオの話題を持ち出してくるなんて、オーレリアに対して良い感情を持っていないと判断したのだ。
(どうせこの方も、私を“失恋令嬢”だと笑いに来たのね)
 不愉快な気持ちを押し隠して、真意を探ろうとギディオンをじっと見つめた。

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