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永遠にあなただけを想い続ける~日陰の王女と愛を乞う騎士~

  • 作家朧月あき
  • イラストみずきひわ
  • 販売日2020/12/25
  • 販売価格800円

ラインハルク王国の第三王女リリアは「日陰の王女」と揶揄され王宮の誰からも蔑まれて生きてきた。リリアが15歳になり、その護衛に騎士見習いのアレックスが任命されると彼はリリアの心の支えとなり、二人は姉弟のように固い絆で結ばれる。しかし戦争が始まるとアレックスは戦地へと送り出され、命を落としてしまう。アレックスを亡くして7年、リリアは婚約者ブルーノのために生きることを決意するのだが、ある時、リリアの前に隣国デズウェルの辺境伯となったアレックスが姿を現す。「あなたにお会いすることだけを夢見て、生きてきました」──戦死したはずのアレックス。リリアは自身の気持ちが彼へと向いていることを自覚してしまい……?

プロローグ
 血と汗と熱気の中で、アレックスはがむしゃらに剣を振るっていた。
 いくらなぎ倒しても、敵はどこからともなく現れ、血気盛んに斬りかかってくる。
 立ち昇る砂ぼこりが、視界を遮る。地響きのような男達の怒号と、剣と剣の擦れ合う金属音だけが、しきりに辺りに響いていた。
 日頃の鍛錬(たんれん)など、たいして役立たないと思い知らされる。敵味方なく入り乱れる戦場において生き残れるか否かは、結局のところ、運命次第なのだ。
(死んでなるものか)
 無我夢中で剣を振るいながら、アレックスは心の中で繰り返した。
 こうして果敢に攻め入っている間も、敵味方関係なく、次々と男達が足もとに倒れ込んでいく。まさに、死と紙一重(かみひとえ)の状態。
 それでもアレックスは、絶対に死ぬつもりなどなかった。
 たとえ最後の一人になろうとも、必ず生き抜くと決めたからだ。
 この場で死ぬ運命なのなら、運命さえも変えてみせる。
 彼女に約束したからだ。生きて、再び会うことを。
(もう一度あの人に会うためなら、なんだってやってやる)
 敵の一太刀が、アレックスの頬を掠める。
 鋭い痛みとともに、血の香りが鼻先に漂った。頬が切れたのだろう。
 唇まで垂れてきたそれを舌先で舐めとると、アレックスは斬りかかってきた男を新緑の瞳で鋭く睨みつけ、素早く剣を振り下ろした。
 低い唸り声を上げた男が地面に倒れ込むと同時に、背後から、別の兵士が襲いかかってきた。アレックスは素早く振り返ると、血眼になって剣を振り上げる彼の腹部に斬りかかる。
「ば、化け物……!」
 ドサッと音をたてて、彼もまた地面に仰向けに倒れた。次なる敵に太刀打ちするために、アレックスは一度足を止めて息をつく。
 そのときだった。
 胸に鋭い衝撃が走り、急速に体が重くなる。
 足にみるみる力が入らなくなる中、どうにか視線を下ろすと、自分の胸を貫く一本の矢が目に入った。
「……!」
 途端に視界が霞(かす)み、暗転していく。
 薄れゆく意識の中、アレックスの脳裏に浮かんだのは、愛しい女(ひと)の面影だった。
 淡い金色の髪に、琥珀(こはく)色の瞳。
 ──『アレックス、あなたがいいわ。私の騎士さん』
 そう優しく紡いだ、薄桃色の唇。
 顔が見たい、声を聞きたい、触れたい、触れたい、触れたい……。
 死を目前にした今、彼女を想えば激しく心が掻き乱される。
 ──『必ず生きて、再び私の前に戻ってきて……』
「リリア様……」
 この世で唯一の、俺の生きる希望────。
一章 日陰の王女と少年騎士
「あら、リリア。今頃来たの?」
「遅かったじゃない、針子はもう帰ってよ?」
 リリアが約束の時間に大分遅れて応接室に行くと、ビロードのソファに腰かけ優雅に紅茶を飲んでいたカロリーナとエステラが、クスクスと笑いながら口々に言った。

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