夢中文庫

偽装彼氏とチョコレート

  • 作家坂井志緒
  • イラスト駒宮十
  • 販売日2018/8/31
  • 販売価格400円

コンビニ店員だった真斗に突然告白されたエミリ。あまりのことに驚きつつも、よく知らない人とは付き合えないと断ってしまう。それから半年、フィットネスクラブでナンパに困っていたエミリをさり気なく助けてくれたのはあの真斗だった。ナンパ避けにしばらく偽装カップルを装ってはどうかという真斗の提案に同意するエミリ。だが、次第に優しく気遣いのできる真斗に惹かれていることを自覚する。自分が年上だということやどうやって気持ちを伝えたらいいのかを悩んでいると、元ミスキャンパスだという真斗の後輩が現れて――ナガオエレクトロニクスを舞台に贈るピュアラブストーリー
YAHOO!JAPANブックストアで購入
BookLiveで購入

一 髪型ひとつで
 ある秋の日の昼休み。勤め先、ナガオエレクトロニクス株式会社、通称ナガエレの食堂にて。
 私、折川(おりがわ)エミリは、いつも仲よくしてもらっている先輩ふたりに、久しぶりにこんなことを尋ねられた。
「エミリ、彼氏は?」
「たまにはエミリちゃんの恋バナも聞きたいんだけど」
 女子社員同士の何気ない恋愛トークなのだが、私はこの手の質問をされるのが苦手だ。
「残念ながら、相変わらず彼氏はいません」
 私の答えに、ふたりはつまらなさそうに頬を膨らせた。
「男の人にとっては、高嶺の花なのかなぁ」
「エミリ、綺麗だもんね」
 大変ありがたいことに、私は社会人になって以来、綺麗だと言ってもらえるようになった。週に二日ジムに通って体型を整えているのと、もともとの身長の高さもあって、モデル体型だと褒めてもらえるのは嬉しい。化粧映えのする顔のおかげで平凡なすっぴんをそれなりに仕立て上げられるのも幸運だ。加えてウェーブをかけた長い髪が、イイ女感を演出してくれている。
 だけど、私は決して高嶺の花と言ってもらえるほどの女ではない。なぜなら生まれてこのかた二十五年、一度もまともな恋愛などしたことがないのだ。派手な見た目のせいで恋愛経験豊富に見られるが、実際の恋愛偏差値は昨今の小学生よりも低いのではないかと思う。
 私の恋愛に興味津々な様子のふたり、篠田(しのだ)瑠衣(るい)さんと金森(かなもり)ほのかさんは、どちらも少し前に彼氏ができてとても幸せそうだ。ふたりを見ていると恋愛への憧れが高まるのだけど、私はなにをどうすれば恋人を得られるのかわからない。
 好きになった人が自分を好きになるなんて奇跡が、私にも起きる日が来るのだろうか。私にはもう何年も、好きな人すらいないのだけど。
「そういえばエミリちゃん、前に告白された人とはそれっきりなの?」
 金森さんの質問に、私は啜っていたうどんを吹き出しそうになってしまった。話の流れから、私もちょうど彼のことを思い出していたのだ。
「ごほっ……! 金森さん、覚えてたんですね」
 瑠衣さんがテーブルに身を乗り出すように前のめりになり目を輝かせる。
「私その話知らない。詳しく聞かせてよ」
 たまには私の恋バナを、というリクエストに応え、私はその件について話すことにした。
 あれは約半年前のこと。
 会社帰りに行きつけのコンビニで会計を済ませると、レジを打っていた男の子が釣銭を差し出しながら声をかけてきた。
「突然すみません。ちょっとお話、いいですか?」
 彼のことは、このコンビニでよく見かけていた。とても感じのいい店員だったと記憶している。茶髪のふわふわしたマッシュヘアで、ヒールを履いた私よりも背が高く、青年というよりはむしろ少年という感じの、爽やかでかわいらしい男の子だ。おそらくバイトの大学生だろう。
 彼はレジカウンターを出てもうひとりの店員に声をかけ、私を店外に連れ出した。
「俺、上田(うえだ)真斗(まさと)っていいます。この店でバイトしてる学生です。この店であなたのことをよくお見かけしてて、ずっと素敵な人だなって思ってました。俺の方は完全に恋愛感情アリアリですけど、もしよかったらお友達になってもらえませんか?」
 恋愛感情アリアリ? これってまさか、告白?
 そう認識した途端、私の鼓動が全身に轟き始めた。
 暗かったけれど、店の看板の光と街灯だけでも彼の整った顔が赤くなっているのが十分にわかった。きっと勇気を出して声をかけてくれたのだ。
 だけど、私は彼をよく知らないし、特に彼を意識したこともない。
「ごめんなさい」
 こう答えるのが正しいと思った。彼を悪い人だと思ったわけではないけれど、それが自己防衛に繋がると思ったのだ。
「そっか、そうですよね。本当に、突然すみませんでした」
「いえいえ! びっくりしたけど、嬉しかったです」
 彼が無理に笑顔を作っているのがわかって胸が痛んだ。だけどよく知らない人とむやみに繋がって、また傷つけられるのが怖かった。

オススメ書籍

イケメン社長のいけない実験~花嫁をテレビショッピング~

著者アドウマドカ
イラスト九重千花

「私の身体……こ、こうなりました」私は実験体、逆らってはいけない。やだ……恥ずかしい……男性に裸を見せるのは初めてなのに。二階堂さんがじっと私の身体を見てる……巨乳の癒し系美人、りり子はショッピングチャンネルの人気ナビゲーター。ある日、自ら企画した栄養ドリンク“ツヤツヤピカーン”を大量誤発注してしまったりり子は凄腕の企業コンサルタント二階堂に「実験結果が良ければ全部売れる」と唆されて、いけない実験に乗り出すのだが……豪華ホテルでの激しくもエロチックな実験内容にとろけ、二階堂へ恋心を抱くりり子。“ツヤツヤピカーン”は本当に売れるのか? そして二階堂の真の目的とは? テレビの世界が舞台のお仕事ロマンス。

この作品の詳細はこちら