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悪徳(?)御曹司の極上プロポーズ~100日限定の密約生活~

  • 作家櫻日ゆら
  • イラスト里雪
  • 販売日2019/5/24
  • 販売価格600円

大手ホテルチェーンの跡取り御曹司の藤堂律と勘違いから100日限定の婚約者になった松永ひより。優しくも強引な藤堂にどんどん惹かれていくが、二人の前にはある障害が立ちはだかって!? ――愛だけじゃない、物語の結末は……?

第一章 着物と代償の重さ
 一歩足を踏み入れただけでまるで別世界と謳(うた)われている、都内の一等地にその店を構える老舗高級旅館。
 財界の大物や芸能人も足しげく通うその店は、間違っても一般的な社会人四年目の私が簡単に敷居をまたげるような場所ではなかった。
 しかし、今私は、着慣れない着物の裾を軽くたくし上げながら、店の入口から続く長い廊下を荒々しい足取りで走っている。
 やっぱり、少し無茶だったかな。
 そう思うが、間もなく実行しようとしている作戦をおさらいするよりも、頭の中はもうすぐそばまで近づく“敵”への怒りに満ち溢れていた。
 深く息を吸い込むと、気合を入れるように大きく吐き出す。
「お待ち下さいませ、お客様!」
 すぐ後ろからは、こんな緊急事態にも表情だけは平静を保っている和服姿の仲居さんが、鍛えられた摺り足でこちらに迫っていた。
 ごめんなさい、と心の中で謝罪しつつも、私の足は【躑躅(つつじ)】という札を見つけてさらに速度を早める。
 わかってはいたけど、心の準備をする暇なんてないみたい。一気に行こう!
 仲居さんの手に捕らえられる前に、目の前の障子を勢い良く開けた。
 中は落ち着いた佇(たたず)まいの小和室。そこにいた四人全員が、目を剥いてこちらに視線を注ぐ。
 手前には着物姿の若い女性と年配の男性が並んで座っていて、その向かいには同じく年配の男性と──。
 ……藤堂(とうどう)律(りつ)。
 その隣の端整な顔立ちをしたスーツ姿の男性を見つけ、私の心臓が大きく一度波打った。それを悟られないように、その場に正座をしながらにっこりと最大限の作り笑いを浮かべる。
「失礼致します。私は、……律さんとお付き合いをさせていただいております、松永(まつなが)ひよりと申します」
 そう告げて、深く一礼した。静寂の中、全部屋から眺めることができるこの料亭自慢の日本庭園にある鹿威(ししおど)しが、頭を下げる音だけが鮮明に流れた。
 ぎゅっと目を瞑ると、あの日見た彼女の涙を思い返し、再び胸には険悪な感情が沸き起こる。
 人を弄(もてあそ)んどいて自分だけ幸せになろうなんて、そんなこと絶対に許さない。今から私が、あなたが自分でやったことを後悔させてやるわ。お見合いなんてさせてたまるもんですか。
 床についた指に力を込め、ゆっくりと顔を上げた。眉根を寄せた藤堂律と視線が絡み合う。私は真っ直ぐにその目を見つめた。
「律! これは、いったいどういうことじゃ!」
 彼の隣にいた年配の男性が、怒気を込めた声を上げる。肩にかかるほどの長めの白い髪が、怒りで今にも逆立ってしまいそうだ。
 少し前までは、まさか自分がこんな大それたことをしでかすなんて思ってもみなかった。でも、この男だけはどうしても許せない。非常識なのは承知の上だ。それでも私は、この方法を選んだ。
 約一ヶ月前。この男を知ることになったあの夜のことが頭の中を駆け巡る。

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