
イラスト七月モトミ
旧華族の名家に生まれた雪村静菜(ゆきむらしずな)には幼馴染みがいた。生意気で可愛らしい、四つ年下の秋月凜斗(あきづきりんと)。七年ぶりに出会った凜斗は美しい青年に成長し、しかも世界を股に掛ける貿易商社の若き御曹司になっていた。凜斗は父親の死で境地に陥った雪村家のため、尽力を。ふたりは惹かれ合っていたはずだった。しかし、あるときから凜斗の態度が急変。「僕専用のメイドになれ」と手錠で拘束され、大人の玩具を入れられて……次々と淫らな命令を。「アイツのところに行くんだろ?僕が静菜の身体を開発しといてやるよ」仕組まれた婚約なのに……口外できない静菜。嫉妬に駆られた凜斗は、ついに静菜の純潔を奪うのだが……。
プロローグ
「やっぱり可愛いな、静菜(しずな)って。これだけでこんなに感じちゃうんだ」
凜斗(りんと)は愉快そうに笑い、また薄いガウン越しに、胸のふくらみを背後から強く揉みあげてきた。
「キャッ! ちょっと……凜」
「言ったよね。静菜は僕のメイドだろ? これからは僕に奉仕するんだ」
「そんな、だって……」
冷たく、鈍い光を見せるアッシュグレーの瞳。幼い頃からずっと変わらない、透き通るような視線で見つめられると、心臓の鼓動は速まり、目の奥が熱くなる。
(怒ってる……凜が)
静菜より三つ年下の凜斗はまだ十九歳。静菜の幼馴染みである。昔は弱虫で、いつもいじめられていたのを静菜は助けてあげていたというのに。
戸惑い、目頭を熱くする静菜を背後から凜斗が抱きしめる。
「いやっ」
抵抗しようとするが、後ろ手に拘束された金属の手錠が、カチャカチャと音を立てるだけだ。
(やだ。これ……全然外れないじゃない……)
おもちゃみたいなものと言われたけれど、静菜がどんなに力を入れても、手錠はびくともしなかった。凜斗が後ろから首筋に唇を添えて、ぬめった舌を這(は)わしてくる。
「あっ……」
ぞくりとした感触が湧いて、薄いガウンの下で内腿(うちもも)が震える。ガウンの下はショーツ一枚しか穿(は)いていなかった。
(ど、どうして……)
無理矢理にされているというのに、先ほどから太もものつけ根が熱くなっていく。凜斗の舌が耳を擽(くすぐ)り、胸にあてがわれた両手が激しく動いて、ガウン越しに静菜のバストをいやらしく揉んでいく。
「は……んんっ」
自然と甘い声が漏れそうになり、静菜は唇を噛みしめてやり過ごす。肩越しに覗き込んできた凜斗は、静菜のそんな変化を見て、クスクスと笑いを漏らした。
「ねえ、そろそろ教えてくれないかな。どこが気持ちいいのか」
「き、気持ちいいわけなんか……んくっ」
凜斗の指先が服の上からだというのに的確に胸の頂に触れた。乳首から電流が流れたように感じて、静菜は腰をピクンと震わせる。
「ガウンの上からでも、こんな反応なんだ。直接触ったらどんなになるのかな」
(え……)
言っているそばから、凜斗は静菜のガウンの前を裂いた。
「だっ、だめっ……」
静菜は顔を赤らめながら振り向いて、肩越しに凜斗を非難する。しかし、凜斗は意に介さず、静菜のガウンの前をすべて開いてしまう。
胸を露(あら)わにされて、慌てて手で隠そうとするも後ろ手に拘束されていては、それもかなわない。
「ねえ、なんでここって、いつも尖(とが)っちゃうのかな?」
「し、知らないわ。そんなこと」
強がってみても、意味のないことだった。乳房の頂は確かに張っている。凜斗は人差し指でふくらんだ赤い突起を軽く撫でた。
「あんっ」
身体全体が、ビクビクッと震える。泣いてしまいたいほど恥ずかしい反応だ。だけど、がまんしようと思っても、全身はまるで神経が剥き出しになったように、感じてしまう。
(いやなの……こんなのいやなのに……)
逃げたくても逃げられない。小さかったはずの彼は成長し、静菜よりも大きくなっている。さらに両手の自由を奪われていては……なすすべもなく幼馴染みに悪戯されるしかない。
「いい反応。さすが旧華族の令嬢だな。もしかして男を喜ばせるために、もう誰かに仕込まれてるんじゃないの、本当は」
「なっ……そんなわけ」
身体を揺すると、手錠の音がカチャカチャと響いた。
彼の手がガウンに潜り、太腿(ふともも)の付け根までをゆっくりと這いあがっていく。
「あっ……だめ」
激しく抵抗するも凜斗の腕の中では暴れることなんかできない。
「なんか股のところ、すごく熱くなってる。湿っている感じがするけど。もう濡れちゃったのかな」
「バ、バカっ。そんなこと……」
(やだ。私、もう……)
子宮の奥が疼(うず)き、ショーツの中に垂れこぼれていくような感触がする。頭までカァと灼(や)けるように熱くなる。静菜は太ももをギュッと締めつけて、彼の手の侵入を拒もうとしたが遅かった。
「い、いやっ! 本気で嫌なんだってば」
「僕だって本気だよ」
凜斗が低い声で囁(ささや)いた。ゾッとするような冷たい声。
(今までの……凜斗じゃない……本気で怒って……私を犯そうと……)
ちらりと背後を振り向けば、凜斗の切れ長の目が細くなって、軽く口角(こうかく)を上げて笑っている。
「子供の頃の約束、ちゃんと果たしてもらうから」
「そ、それは……だから何度も言うように、子供同士の他愛ない遊びで」
「静菜はそうかもしれないけど、僕は違うから」
凜斗はそう言いながら、静菜の身体をベッドの上に投げ出した。
「キャッ」
キングサイズのベッドは沈み込むような柔らかさだ。凜斗の匂いが鼻先をくすぐる。
起き上がろうとすると、凜斗の大きな身体が覆い被さってきた。静菜は後ろ手に手錠を嵌(は)められたまま、身を捩(よじ)るが、その虚しい抵抗は逆に凜斗を楽しませてしまう。
「信じてたのにな、静菜のこと……でもしょうがないことだよね。六年間も離れていたんだし。僕がバカだったんだから。……今までは優しくしようと思ってたけど、だめだな。せいぜい、アイツを喜ばせるように僕が仕込んであげるから」
いよいよ凜斗の手が下りてきて、ショーツの股布(またぬの)の部分を指で触れる。
「んっ!」
いきなりの刺激に身体が反応する。敏感な部分を布越しとはいえ、凜斗に触れられてしまったという衝撃が、静菜の心身をより熱くさせた。
「とりあえず、気持ちよくしてあげるか。どう男に奉仕するかは、あとでじっくり教え込んでやる」
「な、何を言って……」
静菜の反抗する声が止んだ。馬乗りの体勢で静菜の身体を跨いでいた凜斗が、自分のスーツの下のファスナーを下げて、男性器を取り出したのだ。
静菜は慌てて目を逸らした。
「ほ、本気なの? 凜。やめてっ、お願い、もう……」
哀願することしかできなかった。
「……もう無理だよ。静菜」
(う、嘘……。そんな……こんな風に誤解されたまま、凜に凌辱(りょうじょく)されるなんて……)
六年ぶりに出会った凜斗は、まるで漫画の世界から抜け出したような、大きな瞳の美少年。
財閥の御曹司で、頭も良くて、女の子だったら誰もが惹かれるだろう、パーフェクトな人間だけれど……このまま、愛されもしないまま、無理矢理抱かれるなんて……。
「い、いやっ」
静菜が叫ぶ。そのとき、ふいに。凜斗の動きがピタリと止んだ。彼は顔をくしゃくしゃにして、静菜を見つめた。
「くそっ……どうしてっ。どうして僕じゃだめなんだ」
違う。
違うわ。そうじゃない。これは誤解なの……。
ずっと、ずっと子供の頃から、あなたのことは大好きなの……に。
イラスト白峰早菜
「怖くなどない。拒絶の言葉も聞かない。あなたは俺のものだ」幼いころ、自分になついてきた愛らしい子供は、十年の時を経て美しい青年へと成長していた。預言者の力を持ち王を導くヨシュアと、その預言の力により処女王として君臨したルクレチア。国のために力を合わせていこうと思ったさなか、ヨシュアに突然押し倒され……!? 処女を奪われ、一歩間違えれば王座を追われるところまで追い詰められたルクレチア。彼の考えがわからずに戸惑いながらも、一人の女として初めて求められたルクレチアはいつの間にか身も心も蕩かされてしまう。信じられないほど強引なのに触れてくる手は優しいヨシュア。彼の狙いと、秘密とは……?