
イラストルシヴィオ
大手不動産会社で駆け出しの建築士として働く千秋は、次期社長と噂される超エリート上司・佑二の厳しい指導に食らいつく毎日。激しく意見をぶつけ合う二人は、犬猿の仲だと言われているが……「帰ったらお仕置きな」――実は佑二は秘密の旦那様!? 元カレに振られ落ち込んでいた千秋は、佑二に熱烈に口説かれ、お付き合いをすっ飛ばし電撃結婚していた! 仕事では相変わらず厳しいが、家では別人のように甘い佑二。元カレの言葉に自信をなくし、仕事でも結果を残せず悩んでいた千秋は、毎日くたくたになるほど愛されて……?
エリート上司がイジワルです
「もっと見せて。俺で感じてる千秋の顔がもっと見たい」
「佑二さん……」
「愛してる」
真摯な視線を向けられて囁かれた言葉に、胸がいっぱいになる。
「私も、愛してます」
声を振り絞ると、「あんまり煽るな」と困った顔をする彼は、もう一度唇を塞いだ。
私に“お仕置き”をする佑二さんは、二十六歳の私より七つ年上の三十三歳。この若さにして石山(いしやま)不動産の第二設計部で部長を務める有能な一級建築士。
大学院を卒業し、合格率が十パーセントほどの一級建築士試験を優秀な成績で一発合格してみせた、実に賢く、そしてセンスある人物だ。
石山不動産は国内では二番目の規模を誇る巨大な不動産会社。
そのうち第二設計部は、一級、二級の建築士合わせて十一名と三名の見習い建築士が所属する一般住宅を担当する部署になる。
創立者は公家出身らしく、由緒ある家柄の子孫が代々社長を務めてきたが先代で途切れ、今は叩き上げの社長が指揮をとっている。
佑二さんはその次の社長の候補として名前が上がるほどの人物で、数々の有名な商業ビルやタワーマンション、はたまた国立の施設などを手掛け、この業界の注目株。
特に、とある駅前の三つの大きなビルが印象的な通称“トリプルタワー”は有名な賞も受賞していて、建築に携わる人で彼のことを知らない者はいない。
その設計の素晴らしさを評価されて海外からも依頼が舞い込むほどの建築士だ。
しかも、百八十センチを超える身長と、黒目がちな切れ長の瞳を持ち、鼻筋もすらっと通っている彼はモデルと見間違うほどで、マスコミも放っておかない。
そのため、建築の特集が組まれる際は取材が彼に集中し、仕事に支障が出ると断らなければならないほどになっている。
そんな彼は、同じく第二設計部で建築士をしている私の旦那さま。
しかし、会社の仲間には私たちの関係は秘密にしてある。
夫婦だと知られると周りが余計な気を使いそうだとか、上司である彼が私に温情をかけていると間違った噂を立てられるのはよくないというのが隠している理由だ。
しかし彼とはいつもぶつかってばかりで、犬猿の仲だと思われている。
今日も──。
「中本(なかもと)さまご依頼の戸建て住宅です。小さなお子さまもいらっしゃいますので、リビングは広めに。それと、南向きの窓を大きくとり太陽の恩恵を感じられる家にしました」
午前中から中本邸の社内コンペ。
クライアントから特に建築士を指名しない依頼があると、こうして数人が案を出してコンペにかける。そして一番優秀な作品をクライアントに提示する。
このような方式を採用するようになったのは、佑二さんが部長に就任してかららしい。
ひとつ案を出してクライアントの意見を取り上げながら修正していくのが普通なので、こうしてまったく別の案をいくつも出させるのはここならでは。
時間と労力が余計にかかるが、佑二さんは方針を絶対に変えない。
イラスト小島ちな
大手アパレルメーカーの営業・鮎川雪は、引っ越し早々お隣『1101号室』から毎夜漏れ聞こえる甘ーい声に大迷惑!そんなある朝、隣の部屋から出てきたのは驚くほど顔立ちの整った男性だった。けれど第一印象は最悪!絶対に関わりたくない!と思っていた雪だったが……お気に入りのBARでバッタリ再会!?おまけに彼は〝因縁の相手〟だったようで?――「あんたには絶対負けないから!」「上等だ。かかってこいよ」俺様デザイナーと純な強気OLの隣人関係から始まる宿敵ラブ!ライバルなハズなのに仕事と恋に揺れる雪。なぜなら、俺様隣人の溺愛執着が強すぎる!話題のweb小説を電子書籍化。《書き下ろし番外編 ふたりのこれから》収録!