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氷姫を蕩かす熱愛~侯爵様の優しいキス~

  • 作家佐倉紫
  • イラストyos
  • 販売日2018/11/20
  • 販売価格600円

幼い頃に父を亡くし、継母に虐げられる生活を送ってきた伯爵令嬢フィオーナ。つらい日々を過ごすうち、感情が表に出なくなり、生来の美貌も相まって『氷姫』とあだ名されるようになった。そんな彼女に、継母が結婚相手を見つけてくる。だが、その相手は六十代の好色な老人……。絶望を抱きながら嫁ぐことになったフィオーナだが、実際に結婚することになったのは、優しげな風貌の青年侯爵ウォルトだった! ウォルトや使用人たちの優しさにふれ、これまでと違う穏やかな日々を過ごすフィオーナ。徐々に感情を取り戻してきた彼女に、ウォルトは「君を絶対に妻にしたかった」と熱烈な告白をしてきて……!?

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第一章 氷姫の結婚
「見ろよ、アレが噂の『氷姫』だ──」
 天井から吊り下げられたシャンデリアが煌々と照らす広間では、集まった紳士淑女が興奮気味に囁き合っていた。
 彼らの視線は一様に、広間の奥にしつらえられた、ひな壇に注がれている。
 その中央には豪華な作りの椅子が置かれ、そこには一人の令嬢が腰かけていた。
 令嬢……単にそう言い切るには、彼女の美貌はあまりに抜きん出ていた。
 だからこそ、集まった人々──特に、そろそろ結婚したいと考えている男性陣は、興味を隠そうともせず、盛んに意見を交換しているのだ。
「絶世の美女という噂は本当だったんだな……。彼女の社交界デビューとなった王宮舞踏会では、あまりの美貌に全員が釘付けになり、入場した瞬間はしんと静まりかえったというじゃないか。まさかそんなことはと思っていたが、確かにあの美しさを見せつけられると──」
「あの肌の白さ、真珠もかくやというまばゆさだ……! 滝のように流れる銀髪も、アイスブルーの瞳も……すべてが完璧だ」
「完璧すぎて、近づくのがちょっと怖いくらいだな。──ああ、だから『氷姫』とあだ名されているのか。確かに、さわったら痛みを感じる氷の彫像のようにも見える」
 興奮に満ちた囁きは、一つ一つはさざ波のような小さい声であっても、集まれば大きな波となって会場中を包み込む。
 だがそれも無理からぬこと。それほどまでに、豪華な椅子に腰かけた彼女は、誰もがハッと息を呑むほどの美しさを有していた。
 彼女こそ、今回の舞踏会の会場となった、このリディアム伯爵家の一人娘──将来はこの家の爵位と領地を継ぐことにもなる、フィオーナ・リディアムだ。
 彼女が公の場に姿を見せたのは今回が二度目。一度目は先週、王城にて行われた王宮舞踏会だ。今年で社交界にデビューするデビュタントたちに混ざって、趣向を凝らした真っ白なドレス姿で現れた彼女は、たちまち会場中の話題を攫った。
 雪のように透き通った白い肌に、ほっそりとした身体、滝のように流れるまっすぐな銀髪だけでも、話題を攫うには充分な美しさだったが、ほんの少しうつむきがちになったその面にこそ、注目の理由はあった。
 長い銀の睫毛が縁取る大きなアイスブルーの瞳に、すっと通った鼻筋、会場の熱気を浴びてほんの少しだけ上気した柔らかそうな頬。そして白い肌の中で鮮やかに花咲くように見える、ふっくらとした小さな唇──
 少女らしい清楚さと繊細さ、そしてこれから大人へ向かう年頃が持つ危うさや艶やかさが、すべて内包された顔立ち──多くの者が、その姿に一瞬で心を掴まれたのだ。
 神に愛されたとしか思えない美貌……それに加え、その所作も完璧であり、侵しがたい静謐さがあった。
 微笑みを見せず、凜とした面持ちながらわずかにうつむいている様子からは、名門の伯爵家に生まれついた高貴さと誇り高さがうかがえる。それが近寄りがたいオーラとなって放たれ、ともすれば見る者を気後れさせるほどだった。しかし、だからこそふれてみたいという欲望を抱く者も少なくなかったのである。
 彼女が主催者である国王夫妻に挨拶して、ともにやってきた母親と会場をすぐにあとにしたことで、より関心が高まったというのもある。
 おかげですっかり話題のひととなった彼女だけに、伯爵家主催の舞踏会が開かれるということを知って、是非とも参加したいという人間は軽く三桁に及んだ。

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