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王太子殿下とむぎゅっともふもふ生活!

  • 作家皐月もも
  • イラスト霧夢ラテ
  • 販売日2018/5/1
  • 販売価格300円

アストレー王国の王女エマは父王によって魔法で羊にされ、宗主国へ「暖かな贈り物」として送り込まれた。ジョシュア王子が魔女による「凍える魔法」で震える毎日を送っていると聞きつけた父王が復権を謀ったのだ。王子の「温め係」として傍に侍り、宗主国の弱みを掴めと無茶なことを言われてしまう。嫌々出向くと、王子は羊のエマを厚くもてなし、食事を与え、共にお風呂まで!ええっ、いくら羊の姿でも殿方と一緒にお風呂なんて!焦るエマを王子は褥に連れて行く。温かいと言われて触れられているうちになんだかゾクゾクと。するといきなり人間に戻ってしまった!――もふもふ大好き皐月ももが贈るほんわかラブファンタジー。

(こ、こんなこと、絶対に無理だわ……!)
 エマは、もこもこの白い毛玉に埋もれて震えていた。
 周りの毛玉──もとい、羊たちはそんな彼女の心境など露知らず、各々くつろいだ様子でいる。その場に座り込んでじっと玉座を見つめていたり、のそのそと歩き回ったり、もごもごと口を動かしている羊もいる。メェメェという鳴き声には、緊張感も何もない。
 彼らが今の状況を把握できないのは仕方のないことだが、エマは違う。彼女は、自分の居る場所やこの場にいる人々のことや交わされる会話、すべてを理解できてしまうのだから。
「ジョシュア様。こちらが我がアストレー王国からの暖かな贈り物──羊百匹でございます」
 エマたちを連れてきた使者が恭しく玉座の王子に頭を下げる。彼の隣には、牧羊犬がお行儀良く座っていた。
 ジョシュアは眉を顰めて彼を見つめ、不機嫌そうだ。
 それもそのはず。いきなり羊を百匹も連れてこられたら、いくらそれが自分への献上品とはいえ、迷惑だろう。
 エマは王子の気持ちを察するのと同時に、父王の無謀な計らいに再び身体を震わせた。
 早く帰りたい──エマの頭の中はそれだけだ。王子にはこのバカげた献上品を突っぱねていただき、一刻も早くここから立ち去ろう。それが、一番平和な道だ。
(お願い。早く、羊たちを連れて帰るように言ってください)
 そう願いつつ、エマは王子へ視線を向けた。すると、ちょうどジョシュアもエマの方を見ていたらしく、ばっちり目が合ってしまった。しかも、彼は合った視線をなかなか逸らそうとせず、じっとエマを見つめている。
(ど、どうしよう!)
 まさか、バレてしまったのだろうか。
 エマの不自然な態度に気づかれた? いや、まさか……でも。
 目を見開いたまま動けないでいると、王子がようやく視線を逸らしてくれる。
 彼女は落胆と安堵が入り混じった変な気持ちになったが、次の瞬間、それは一気に落胆へ傾くこととなった。
「……臭い」
「は……?」
 しかめ面の王子がついに発した言葉に、使者が呆けた反応をする。
「こんなに羊がいたら臭くて温まるどころではない。連れて帰ってくれ」
 謁見の間にはメェメェと暢気な羊の鳴き声が響いている。
 王子の拒絶の言葉は、羊たちに対してのものだ。しかし、エマは頭をガツンと殴られたかのようなショックを受けている。
(く、臭い……臭い……)
 頭の中には、ジョシュアの声が何度もリフレインし、エマは瞳をうるうるさせた。
 そして……
「メェ~!」
 彼女は羊になって初めて大きな泣(鳴)き声を上げたのだった。

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