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不器用な旦那様の可愛い秘密

  • 作家皐月もも
  • イラスト霧夢ラテ
  • 販売日2018/09/21
  • 販売価格300円

アメリーとエルヴィンが夫婦になって今日で100日。100本からなる薔薇の花束を抱えて帰ってきたエルヴィンに歓喜するアメリー。結婚100日という大切な日、今夜こそ秘密を打ち明けてくれるのでは、と期待に胸を膨らませていた。ところがエルヴィンは、いつも熱い情事の後、優しく体を拭って寝衣を着せてくれるものの、慌てた様子で書斎へ行ってしまう。朝まで一緒にいてくれない彼の秘密をアメリーはすでに知っている。それでもエルヴィン自ら教えてほしいとずっと我慢してきたのに、やはり今夜も教えてくれそうな雰囲気はなくて――純粋で愛らしい新妻アメリーと兎族の血を受け継ぐエルヴィンのほんわかもふもふラブストーリー

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カタン、と玄関の扉の開閉音が聞こえ、アメリーは弾かれたようにリビングを出た。
「エルヴィン様、おかえりなさ──」
 しかし、出迎えの挨拶は途切れ、彼女は夫が抱えている大きな花束の赤色に釘付けになる。
「……ただいま戻った」
 低い声が花の向こう側から響き、アメリーはハッと我に返った。
「おかえりなさい。エルヴィン様、この薔薇はどうなさったのですか?」
「これは、アメリーに……買った」
「私に? エルヴィン様、もしかして……」
 アメリーがそこまで言うと、薔薇の花たちが軽く上下する。エルヴィンが頷いたのだろう。
「覚えていてくださったのですね」
「当たり前だ」
 今朝、エルヴィンはいつも通り屋敷を出て行ったから、気が付いていないのだと思っていた。
 彼は毎日仕事で忙しいため、忘れてしまっていても仕方がないと思っていたが、覚えてくれていたなんて驚きと喜びで胸がいっぱいだ。
 ──今日は、アメリーがエルヴィンの妻となって一〇〇日目。
 彼との縁談は、父親の知り合いから持ちかけられた。
 エルヴィン・キースリング、二十八歳。ラビアルグ王国騎士団の精鋭部隊に所属するエリート騎士である。剣と魔法の両方に長け、若い頃から功績を挙げてきた。
 長身で筋肉質の大柄な体格と変化の乏しい表情のせいで、見た目は威圧感がある。真面目で寡黙な性格も相まって、女性との噂など皆無だったエルヴィン。そんな彼を心配したのが、彼の上司だった。
 アメリーの父と懇意にしていたエルヴィンの上司は、ちょうど十八歳になるアメリーにエルヴィンを紹介してくれたのだ。
 歳の差はあるが、彼の経歴やとても信頼のできる男だという友人の話に、父は縁談を進める気になったようだった。
 そして、顔合わせの日。
 アメリーは最初、彼の外見に驚いた。小柄な彼女からすると、エルヴィンは巨人のように思えたからだ。
 短く刈り上げられた灰色の髪、精悍な顔つき。黒い瞳に宿る光は鋭い──騎士という職業を知らずとも、その雰囲気はとても厳しく周囲を慄かせる。
 しかし、そんな外見の印象とは対照的に、彼の気遣いはとても細やかだった。歩幅を合わせてくれたり、アメリーの話を真剣に聞いてくれたり……十八歳の小娘の話など大して面白くもないだろうに、彼は言葉少なくも真剣に相槌を打ち、アメリーのお喋りを聞いてくれた。
 しっかりと目を見てくれるのも、彼女が彼に惹かれた理由の一つである。
 エルヴィンは無口なほうだが、大切なことは言葉にするし、行動で示してくれる。
「……一〇〇本ある。飾りきれない花は、風呂に浮かべるといい」
「ありがとうございます」
 アメリーは礼を言いつつ花束を受け取ったが、思ったより重量があって少しよろめいてしまった。
「すまない。重かったな」
 傾いた妻の身体を支え、エルヴィンは素早く彼女を抱き上げて花束ごとリビングへ運ぶ。
「わ、私と一緒のほうが重いです!」
「アメリーは軽い。心配になるくらいだ」
 ソファに彼女を下ろし、エルヴィンは身体を屈めてアメリーの額に口付けた。
 一緒に暮らし始めて、エルヴィンの口数は増えた。「ああ」とか「そうか」とか、一言だけで返事をすることのほうが多かった以前に比べたら、かなりの進歩だと思う。
 それだけ彼との距離が縮まったのだと、アメリーは密かに喜んでいた。
 それに、アメリーは最近、彼の表情の変化がわかるようになったような気がしている。
 わずかに目を細めたり、頬を緩めたり、自分を見つめる彼の慈愛に満ちた表情にはドキドキさせられっぱなしだ。
 アメリーにキスをしてくれるときの瞳はとても優しくて、照れてしまう。
「今日、先日の遠征関係の仕事を終わらせてきた。一日遅くなってすまないが、明日……二人で出掛けよう」
「は、はい……!」

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