夢中文庫

もふもふな幼なじみと素直になれない恋心

  • 作家皐月もも
  • イラスト霧夢ラテ
  • 販売日2020/04/24
  • 販売価格300円

幼いころのルーカスは弱虫でレイチェルの後ろで泣くことが多かった。しかも彼は人間と兎族とのハーフで、感情によってウサギになってしまったりする。レイチェルはそんなルーカスの世話をずっと焼いていた。ところがいつの間にかルーカスはレイチェルよりも大きく、強くなり、今では騎士団に所属する立派な騎士だ。しかも優しげな顔立ちで整っている上、ウサギの姿になって場を和ませるため女性たちの間では大人気だ。好きなのに、モテモテのルーカスを見ると素直になれない。優しくされてもつい意地を張ってしまう。そんなある日、レイチェルの態度にルーカスが珍しく声を荒げて怒り出し、そして強引にキスを!――もふもふウサギ物語第三弾!

プロローグ
 サク、サク、と静かな森の中に足音が響く。
 自分の腕にしがみつく幼なじみのルーカスと一緒に、レイチェルは目印となる場所を求めて歩いた。
 青々と茂る木の葉の間から差し込むわずかな光は、二人の幼い子供たちには心もとない。
「ねぇ、レイチェル。ここどこ? 早く帰ろうよ」
 ルーカスが怯えた様子でレイチェルの腕を引っ張る。
 彼女は自分が泣きたい気持ちをなんとか呑み込んで、彼の手にそっと触れた。
「わからないけど、あまり動かないほうがいいわ。ルーカスのお父様に教わったでしょう? 行き先もわからないまま歩いていても疲れてしまうだけよ。それに、きっと今頃、みんな私たちを捜しているもの。この大きな木の下で待ちましょう」
「でも、ここは暗くて怖いよ……帰りたいよ……」
 レイチェルが一生懸命慰めようとするが、ルーカスはとにかく怖がっている。
 その証拠に、彼のふわふわの髪の毛からぴょこっと長いうさぎの耳が生えた。ぷるぷると震えて大きな瞳いっぱいに涙を溜めている。
「ルーカス、大丈夫。大丈夫だから、泣かないで」
 レイチェルの幼なじみ、ルーカス・ラインマイヤーは特殊な体質の持ち主だ。
 彼は兎族の母親と人間の父親の間に生まれたハーフで、うさぎに変身することができる。彼の兄であるアベルも同じ体質だが、ルーカスは兄よりも頻繁にうさぎの姿になっていた。
 というのも、感情の浮き沈みがうさぎ姿に変身してしまうきっかけになるらしいのだ。
 この幼なじみは根っからの弟気質で甘えん坊。同い年のレイチェルが呆れてしまうほどに怖がりの臆病者で、感情の振り幅が大きい。
 ちょっとしたことでもすぐにうさぎに変身してしまって困る──そう、ルーカスの母が言うのを聞いたことがあった。
「……父上、母上……どこ……キュッ」
 ルーカスはぷるぷると小刻みに震え、とうとう泣き声を上げたかと思うと、ぽふっともこもこの毛玉に変身してしまった。
 茶色と白が混ざった毛色で、ハチワレの顔が特徴的な小さなうさぎ。レイチェルはしゃがみ込んで彼を抱き上げ、木の根に腰を下ろした。
「ルーカス、大丈夫だよ。私が一緒にいるからね」
 薄暗い森の中で不安なのはレイチェルも同じだ。しかし、人間の姿を保てないほど怯えているルーカスを見ていると、自分が守ってあげなくてはいけないと思えた。
 それに、可愛らしいうさぎ姿には癒やされる。彼が怯えているのに不謹慎かもしれないが……迷子になって不安な気持ちが少し和らぐ気がした。
「ごめんね、ルーカス。私が追いかけっこに夢中になっちゃったから……」
 レイチェルは自分の不注意を謝罪する。
 慣れない土地で走り回ってしまい、彼女を追っていたルーカスと一緒に森の中に迷い込んでしまった。
 レイチェルは昨夜から、ルーカスとともにラビアルグ王国の国境付近にある兎族の村に滞在している。彼の母方の実家に預けられているのだ。

オススメ書籍

あまえてほしいの

著者あゆざき悠
イラストまろ

頼られたい、甘えられたい、そんな彼が恋愛の対象。頼られることに歓びを感じる坂井美咲は「美咲さんといると、ダメになる」と同じ理由で振られてしばかり。今回もダメか……と落ち込んでいる美咲の元に、以前パートナーを組んでいた後輩の前田智紀が期間限定で支社からやってきた。なにかにつけてじゃれついてくる智紀に「この男は違う。甘えてくる振り、じゃれつく振り。何もかもがどこかしらウソ臭い。特に彼のあの笑顔がウソ臭い!」と苦手意識からストレスな日々。「からかわないで」と智紀を一蹴するも、ひょんなことから一夜を共にしてしまい、美咲の方がドキドキと意識してしまう。「タイプじゃない」と呪文のように唱える美咲だが――。

この作品の詳細はこちら