夢中文庫

強引な義兄に守られた花嫁は溺愛に揺蕩う

  • 作家皐月もも
  • イラスト霧夢ラテ
  • 販売日2020/06/05
  • 販売価格300円

フィリシアは義兄であり婚約者でもあるヴィルヘルムとの結婚を目前に控え、いささか憂鬱であった。本当だったら幸せの絶頂のはず。なぜならヴィルヘルムは栄えある守護騎士団の騎士で、誰もが認める美丈夫だからだ。とはいえヴィルヘルムはフィリシアに対して溺愛的である一方で、かなりの俺様。フィリシアのウエディングドレスを勝手に決めようとする。腹を立てたフィリシアは庭を駆け回るリスを見て、「リスになったら可愛いのに」なんて考えてしまう。二人が悦楽の夜を過ごした翌朝、目覚めればなんとそのヴィルヘルムがリスになっていた! リスの姿でプンスカ怒っているのを見ながら、フィリシアは思わず「可愛い」なんて思ってしまって――

 フェリシアは鏡の中の自分を見てため息をついた。
 窓から差し込む暖かな日差しとドレスやアクセサリーの煌びやかさのせいで、表情に滲む疲れが強調されている。
 普通ならば豪華なドレスを身に纏い、ウキウキと心が弾む場面だ。しかし、試着が七着目ともなるとさすがに疲労のほうが勝ってしまう。
「さぁさぁ、できましたよ」
 機嫌良く鼻歌を歌いながら扉へ向かう使用人とは対照的に、フェリシアはのろのろと立ち上がった。
 それと同時に開かれた扉から仕立屋の店主を伴って部屋へ入ってきたのは長身の青年だ。眉根を寄せ、フェリシアを頭から爪先までじっくり観察している。
 彼の名はヴィルヘルム・ノルディーン──彼女の婚約者である。
 今日は結婚式に向け、衣装合わせをしているのだが……これがなかなか決まらない。
「……ダメだ。原色は合わないな。やはり水色のプリンセスラインか? 母上のダイヤモンドのティアラとも合っていた……スカートのレースのデザインを変えれば、もっとかわ──」
 顎に手を当ててぶつぶつと呟くヴィルヘルムの言葉は、フェリシアの右耳から左耳へ抜けていく。
 そんな彼を横目に、彼女は最初に試着した桃色のドレスの前へ移動した。
「ねぇ、ヴィルヘルム。やっぱり私、この桃色のドレスが一番いいと──」
「ダメだ。俺は納得していない。結婚式は一生に一度なんだ。慎重に決める」
 先ほどから同じようなやりとりを繰り返した結果、今に至るわけだが……このやりとりはあと何度続くのだろうか。
 慎重すぎるのも困ったものだ。
 そもそも、なぜヴィルヘルムに決定権があるのだろう? 一生に一度の結婚式なのはフェリシアにとっても同じだ。
 それに、ドレスを着るのは彼女なのに……
 フェリシアはヴィルヘルムに恨めしげな視線を送ったが、彼は仕立屋と使用人とドレス談義に熱中していて気がつかない。
 長身に鍛えられた身体、顔立ちは吊り目でやや冷たい印象を与えるが、女性を魅了するには十分すぎるほど整っている。さらに職業が収入の安定した守護騎士となれば、結婚相手としてこれ以上ない好物件と言えるだろう。
 だが、幸せなはずのフェリシアには一つだけ不満があった。
 まさに今の状況──彼女の意思はそっちのけで、何でもヴィルヘルムが強引に決めてしまうことだ。
 伏し目がちに真剣に悩んでいる様子を見れば、本当にフェリシアのことを想っていることはわかる。それだけに、文句を言うことも憚られるのだが……
 彼女はため息をついて窓際に移動した。
 綺麗に手入れされた庭には、春らしく色とりどりの花が咲いている。小鳥のさえずりは長かった冬の終わりを告げ、春の訪れを喜んでいるかのようだ。
(私だって、嬉しいはずなのに……)
 目に映る景色と自分の気持ちが噛み合わない。本来ならば、フェリシアも小鳥たちのように喜びに満ちているはずなのに……
 そんなふうにもやもやしていると、ふと茂みから出てきたリスに意識が向いた。

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