夢中文庫

獅子王は意地っ張り鋼鉄姫をまるごと愛したい

  • 作家仙崎ひとみ
  • イラスト緋月アイナ
  • 販売日2019/11/19
  • 販売価格700円

一個中隊の隊長として敵陣へ向かう公爵令嬢のセレスティア。母を殺した獣化人を心から憎んでいた。だが、凄腕の剣士に斬られてしまう。捕虜になるくらいなら死んだ方がまし――そう思い河に身を投じるが、気がつけば森の中の小屋で手当てを受け横たわっていた。世話をしてくれるのはライアスという名の美丈夫で、その鍛え上げれた体躯に見とれてしまう。獣化人というだけで憎まれ口をたたくセレスティアをライアスは笑ってまるで相手にしない。彼の優しさと寛容な心にいつしか憎しみは溶かされ、愛を自覚し求めるようになる。「もっと愛してほしいとお願いしたら……あなたは私を軽蔑するか?」素直に本心を述べるセレスティアにライアスは――

 セレスティアは、母が亡くなったときのことを、今でも夢に見る──
 §§§
 幼い頃。セレスティアは、母ライラと屋敷の庭園で過ごす時間が大好きだった。
 手入れの行き届いた色鮮やかな薔薇園、女神像の噴水からは絶え間なく水が流れている。
 そんな緑豊かな中庭のガゼボで、焼き菓子をつまみながらのティータイムは至上の幸福。
 セレスティアとライラは、毎日のようにまったりとした午後のひと時を楽しんでいた。
「セレスティアの髪は、きれいな赤毛ねえ」
 ライラはいつも、セレスティアの髪をそう褒めたたえてくれた。
 クルミを練り込んで焼いたクッキーを食べながら、セレスティアは美しいライラを見上げる。
「私は、お母さまのように艶やかな金髪のほうがよかったわ。ナルバニアには珍しい髪の色だって本当?」
 セレスティアの問いに、ライラは優雅に笑う。
「そうよ。金色の髪と青い目は、ナルバニア王家にのみ受け継がれている希少な色なの」
 残念だがセレスティアの髪の色は、母に似ず赤い薔薇のような色をしていた。
 瞳もアッシュグレーで寒々しい印象だ。髪も目の色も、ナルバニア国軍総元帥である厳つい父から譲り受けている。
「お母さまの御髪、太陽の光をちりばめたみたいで、とてもきれい。目だって絵本に出てくるお姫さまと同じ色だもん。そっちがよかったなあ」
 母はふふっと笑うと、サクランボみたいな口を尖らすセレスティアに、優しくこう告げる。
「お父さま譲りの情熱的な赤い髪に、透明感のあるアッシュグレーの瞳。あなたが成長したら絶世の美姫になるでしょうね。きっとたくさんの紳士から結婚を申し込まれるわ。デートのスケジュール調整が大変よ」
 セレスティアはクスクスと笑う。
「デートには、お母さまがつき添いをしてくださる?」
「あらあら。親同伴のデートなんて興ざめよ。そのときは素敵な男性にエスコートしてもらわないとね」
 デートとは、どのようなことをするものだろう? 素敵な男性と言われても、想像できるのは父だけである。
「お父さまみたいに強くて優しいひとが、申し込んでくれるかなあ?」
 セレスティアは、父以上に格好いい男性を見たことがない。
 屈強で頼もしくて、ちょっと強面だが整った顔立ちの偉丈夫。口数も少なく親しみやすいタイプではないが、母の前では笑顔を絶やさない。
 セレスティアは、そんな無骨な父が大好きだ。
 だがライラが話してくれる、父との馴れ初めやプロポーズの話は、もっと好きだった。
 セレスティアが生まれる三年前。
 母はとあるパーティで父と出会い、なりゆきでダンスを踊ることになった。
 ライラは、ダンスが下手な父を上手にリードした。何度足を踏まれても痛みに耐え、笑顔を絶やさなかったという。
 大きな身体で恐縮する父が、ライラには可愛く見えたらしい。
 そんなライラに一目惚れし、どうしても結婚したかった父は、戦地に赴くと鬼神のごとく戦い、数々の功績と武勲を立てた。

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